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三週目ノ六



「クリスティ、今日暇?」



 王女公認マカール王国立第一高等専門学校のとある生徒用の玄関では、二人の生徒が靴を履き替えながら話していた。



「暇だけど?バイトも無いし。何かあるの?」



 片や、孤児院育ちのために某ファミレス店でバイトをして学費を稼ぐ苦学生。片や、些細な親切心を持ち合わせたがために毎日、某先生の代わりに出欠確認をする運命を背負った超苦労人。本人がその運命に気付いていないあたり……さすが『超』苦労人である。



「実はね、ウチの担任が今の時間、授業やってるんだよ。」



「科目は?」



「複合魔法学」



「う〜ん、いってみようかな……。」



「なんかさ、その先生、ウチらと同じ歳みたいなんだよ。」



「へー私達と同じ歳で先生ってすごいね。ちょっと興味あるかも。」



「んじゃ、決定!場所はたしか第四魔法演習場だったかな?」





☆☆☆☆☆




「ねぇ、クリスティ。あれ何?」



「魔王城と巨大ゴーレム………。」



「良かった。クリスティにもそういうふうに見えるんだね………。ウチの幻覚じゃなかった。」



 第四魔法演習場を目にしたとたん、二人の視界に入ったのは魔王城と呼ばれても納得することができる程の城と、その周辺を彷徨うゴーレムだった。第四演習場のバリアが起動していることから、これも授業の一環なのだということが分かる。だが、二人は未だに現実を受け入れることができなかった。このフロアの何処かにいる校長でさえ、放心状態なのだ。一学生であるクリスティとマリザが……



「思ったよりも混んでるね。」



「そうだね。」



 などと現実逃避をするのは仕方が無いことなのである。


 第四魔法演習場は、とある場所を中心に混んでいた。例の校内変……以下略が建てた看板付近である。その場所は第四演習場の入口でもあるので、二人は看板の場所に向かう。


 当然、人が密集しているため、中々看板に辿り着けない。だが、マリザは五感が常人よりも優れている。そのため、看板に書いている内容をクリスティにも聞こえるように読み上げた。



「複合魔法学初回演習内容


 テーマ みんなで協力!


 ミッション 最上級の間を目指せ!


 場所 第四魔法演習場


 報酬 先着十名にドラゴンの剥製を贈呈ってえ!?」



「ドラゴンの剥製!?」



 クリスティも同じワードに反応する。


 『ドラゴンの剥製』


 苦学生と超苦労人の二人にとっても、それは甘美な響きだった。誰だってお金は欲しい。二人は瞬時に目を合わせる。


 マリザが腰に帯刀していた日本刀らしきものを肩に掛ける。そして、クリスティは魔法の詠唱を開始した。


 詠唱……それは、魔法を使用する際に行うことで魔法の威力をあげることができるものだ。もちろん、無詠唱でも魔法を使うことはできるが、その分威力は下がる。



「ejjdhgwokhvkbbnmmbzSweuiopvguojgrddswqdhgGo………」



 クリスティが聞き取れない言葉の羅列を囁く。詠唱は長ければ長い程、難易度が上がる。当たり前だが、クリスティが現在唱えているような、複雑な詠唱を成功させられる者は少数だ。



「GfygffstawsDhlnnfsDjtugdrwaxhkukokcfAjjggigeh……」



 マリザが詠唱の終わりを悟ったのか、クリスティの左腕に抱きつく。それから数秒後、永遠に続くかと思われた詠唱は遂に終わりを迎え、クリスティが発動する魔法の名を口にする。



「fHgfsufjssaycHhi上級風魔法、ゼアホペム」



 すると、二人の身体が空中に浮かび上がり、中央に聳え立つ城に向かって飛んでいく。


 彼女らの眼下をゴーレムや罠によって足止めをくらっている学生が通り過ぎていく。


 二人の身体は城の中腹辺りを目掛けて一直線に進んでいく。このまま順調に進めば、いずれ壁に激突する。だが、彼女らを心配する学生は一人もいなかった。二人は空を飛んでいるため、多くの学生に注目されている。それでも、心配する者はいない。極大回復魔法で治癒されるから……ではない。


 遂に彼女らは、壁に激突する、となったときに、マリザが抜刀して刀を数回振り、斬撃を生み出す。その斬撃は魔力を帯びているためか、一切ブレることなく壁を斬り刻んだ。



 複合魔法学初回演習開始から約一時間。入口から城への到達時間は全体で二番目に短い。


 一番?それはもちろん、強欲の化身、ロルーフ君である。




☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




 少し離れた場所で、そんな二人の様子を見守るおじさん達がいた。



「校長、あれは………。」



「ああ。間違い無く。我が校の誇る、最高学年の同列次席のクリスティ君とマリザ君だ。」



「どちらも一人だと首席であるロールフ君に及ばないものの、二人いればロールフ君を余裕で上回るほど……。」



「そこからついた二つ名は確か………」




 『シナジーバースト』


 校長先生の声がマリザの斬撃の音によって消えた。







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