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俺のスマホはこんにゃく  作者: ななほしとろろ
chapter4 試される大地で試される五人
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74

 空は帰宅した。

 着替えを済ませ夕飯の支度にとりかかる。


 家には空とクニツル。陸は平野たちと遊んでから帰ると連絡を入れていた。


 空は食材を切っていく。

 しかし、不快な音が耳に入る。その音は、なにかを小さく叩く固い音。


「クニツルうるさい」


 空はクニツルがなにかをしているのだと思い注意する。


「俺様はなにもしていないぞ。……しかし、なんだこの音は?」


 クニツルはゲームアプリを閉じて、テーブルの上に立ち上がる。


「お前じゃないのかよ?」


 二人は音の正体を探る。

 その音は掃き出し窓から聞こえていることが分かった。

 レースのカーテンの向こう。窓の外。


 空は目を細めた。

 

「猫??」


 窓の外には真っ白な猫がいた。子猫である。

 猫は窓ガラスをひっかくように何度も爪を立てている。

 まるで中に入れてくれと言わんばかりに。


 空は掃き出し窓を開けようとする。


「空坊!! 待て!!」


 クニツルが慌てたように空を止める。しかし、窓はすでに開けられていた。


「え!?」


 空はすかさず閉めようとしたが、猫は数センチの隙間をするりと抜けてリビングに入る。


 クニツルは震えながら空の体をよじ登る。


「クニツル?? どうした??」

「あばばばばばばば」


 クニツルは空の頭の上であばばば言って怯える。


 猫は空の足に顔をこすりつけている。

 

「可愛い猫じゃないか。迷子か?」

「かかかかかかか可愛い猫ですねぇぇ! 空坊さんー! だから早く外に蹴っ飛ばしてくれぇ!!」


 空はクニツルの狼狽具合に疑問を感じた。

 こんなに動揺しているクニツルを見たのは初めてであった。さん付けなど普段のクニツルはしない。


「お前猫嫌いだったの??」

「ねねねねねね猫は可愛いから好きだ。でででも、そこのは嫌いだ」


「はあ??」


 空は頭に乗っているクニツルを掴む。

 着信時など比にならないほどにバイブレーションしているクニツル。


「本当に姉さんはボクのこと嫌いだね」


 突如聞こえてきた第三者の声。子どものような幼い女の子のような声。


「誰だ!!」


 空は身構える。

 その声はあまりにも近い距離から聞こえた。


 空は朝登校する前を思い出す。

 ――どこから侵入された? 自分の部屋は窓をずっと開けていない。掃き出し窓は今鍵を開けた。家を出るときは鍵をしっかりかけた。陸の部屋からか?

 でも、声の感じからして子どもだ。帰ってきたときは鍵閉めたしな。

 

 クニツルが言う。


「そそそそ空坊――下だ下。ねねねねね猫だ」


 空は足元の猫を見る。


「まさかー。猫が喋ったっていうのか??」

「そそそそそそのまさかだだだ」


 金色の目をした猫。

 空は『にゃー』と鳴くのを期待して見つめる。


 しかし、その期待は裏切られた。

 猫は後ろ足で立ち上がり、お辞儀をした。


「そうそうボクです。初めまして海山空さん。いつも姉がお世話になっています」

「…………」


 空は思った。

 こんにゃくも喋るし猫も喋るよな。と。


「キェェェアァァァネコガシャァベッタァァァ!!」


 思考と発言が一致しない空。


「すみません。驚かせちゃいましたね。ボクも姉さんと同じで、今はこの猫の体を借りています」

「ちょっと待ってくれ。落ち着きたい」


「はい。どうぞ」


 空はクニツルを握ったまま自室へ走った。


「クニツル!! なんだあの猫は!? 喋ったしお前を姉と言っている!! なんだ!?」

「おおお驚いているのは俺様の方だ!!」


「説明しろ!! お前を姉って言っているってことは、あいつも悪魔だよな!? この前にサキュバスがきたばっかりだろうが!! また俺はなんかされるのか!? 勘弁してくれ!!」

「おおおおおおおおおおおおおちつつつつけぇぇぇ」


「お前が落ち着けぇ!」

「ししししんこきゅうをししししようではなななないかぁぁぁ」


「「スゥーーーはぁーーー」」


 二人は冷静を取り戻す。


「で?」

「あいつは俺様の妹だ。だが悪魔ではない。でも性格は悪魔だ。きっと俺様を殺しにきたんだ」


「妹??」

「そうだ。そしてこの前に言っていた俺様が最も嫌いなやつであり、記憶の再生をできるやつだ」


「なに!? いやまて。殺しにきた?」

「おそらくな。姉妹でありながら敵どうしなのだ。理由は言いたくない」


「……どうすればいい?? お前を差し出せばいいのか??」

「俺様はまだ死にたくないのだが。というか空坊は俺様をそんな簡単に見捨てるのか??」


「ああ。金がかかるからな」

「――ぐっ」


「嘘だよ。――とりあえず消された記憶をなんとかしてもらおう。クニツルから頼めないのか?」

「殺されるぞ??」


「お前も殺すくらい強い悪魔なんだろ?」

「俺様は強いぞ」


「でもこんにゃくだ。あいつは猫。殺されるか??」

「…………」


「よし。頼みに行こう!」


 空はドアノブに手をかける。


「まままままままってくれ!!」

「うるさい!」


 空は暴れるクニツルを握力でねじ伏せ、リビングへと向かう。



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