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俺のスマホはこんにゃく  作者: ななほしとろろ
chapter4 試される大地で試される五人
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 月曜日。学校の昼休み。A組の教室。


 栗崎は持参していたコンビニのサンドイッチを取り出す。

 空と小清水、湊は購買へ向かった。

 竹田は彼女とポプラ通りへ。


 川谷は珍しく自分の机で昼食を取っている。


 栗崎は三次予選のことを考えていた。

 この川谷と組むことになるからだ。しかし、三次予選が行われるということは内密にと古嶋から言われている。

 栗崎はそれでも、せめて友達になるくらいはいいだろうと、その算段を練る。


 三つセットになっているサンドイッチのひとつを食べ終わり、ペットボトルのお茶を手に取って口に含む。


 そのときA組の教室に三人の生徒が入ってきた。

 陸と平野、小松の三人である。


 三人は川谷の机を囲むように座る。


 その三人を見た栗崎は華麗にお茶を吹き出した。『ブフゥー』とプロレスラーの毒霧のように。パフォーマーの火吹き芸のように。


 反応したのは陸。


「カッケー!!」


 陸は胸の前にグーを作って目をキラキラさせている。


 栗崎は陸と目が合うが、すかさず反らす。

 ハンカチを取り出し、口と机を拭く。


 お茶は小清水の席にも壮大にかかっているが、栗崎は面倒くさいと感じて放置した。

 自然乾燥に任せよう。と。


 陸は首をかしげながら栗崎を見ている。

 そして、視線はそのままで川谷に話しかけた。


「茶髪の後ろに席なんてあったっけ?」

「転校生だよ」


「あー、最近うちのクラスの男子が騒いでたやつか。A組だったんだね」

「うん。同じ班になったの。今日は大丈夫みたいだけど、転校してきた初日はすごかったんだよ! 皆寄って集ってハトみたいに」


 栗崎は脳みそをフル回転させている。

 ――なんでこいつらがここに!? 古嶋さんが選んだ四人全員がここの生徒だったの!? どういうこと!? たまたまが重なってこうなったの!?


 古嶋の選んだ四人。チェックシートが白紙ではなかった四人。

 それは、川谷花菜。海山陸。平野清香。小松沙耶の四人。

 歌もダンスも中の下で容姿だけが取り柄の四人。


「ハトて…………。そういえば花菜ちゃんにもきたんだよね? 合宿の連絡」

「うん。平野さんと小松さんにもきたんでしょ?」


 平野と小松は頷く。


「ってことは合格って意味じゃなくて、全員に連絡がいってるってことだよね」

「リクは違うと思う! きっとここの四人が受かったんだよ! きっとそう!」


 腕を組み自信気に答える陸。


 そのとき川谷がパンと手を叩いた。


「そういえば栗崎さんってアイドルやってるって言ってた!」


 三人は驚く。

 栗崎は焦る。


「アイドルの先輩に色々聞けば勉強になるかも!」


 陸が立ち上がる。そして栗崎を指さす。


「あんたアイドルって本当なの?」


 栗崎は迷っていた。

 正体をバラすべきか。それとも、シラをきって愛想を振りまいておくか。無視するか。ただ友達になるか。


「…………」

「なんか固まってるんだけど……この人……」


 栗崎はまだ迷っている。


「無視するとか、やっぱりアイドルってプライベートでは性格悪いのかな?」


 陸は眉間に皺を寄せる。


 栗崎は起動する。

 急に立ち上がり満面の笑み。

 片足で立ち、もう片方は靴底を上に向けて上げられている。

 左手は手の甲を腰に当て、右手はパーを顔の横、手のひらは陸たち四人の方に向けてある。

 

「ヤッホー! いつもはお腹ペコペコ! それでも元気にガンバル! キラキラマドカだょ!」


 そう営業用ボイスで言うと。あざとくペロっ舌を出し。右目はウィンク。


「…………」

「…………」


 教室に氷河期が訪れた瞬間であった。


「ヤッホー! いつもはお腹ペコペコ! それでも元気にガンバル! キラキラマドカだょ!」

「二回もやらんでいいわー!!」


 陸は関西人もビックリするほど華麗なツッコミを入れた。

 そのツッコミは手の甲を相手の胸に当てるという最も目にするもの。しかし、鋭さが違う。

 空気抵抗を計算に入れて伸ばされた腕と手の形。手は空気抵抗を減らすために真っすぐに指を揃えてある。

 その手はまるで空気を切り裂く鎌。

 しかし、肘の回転だけでは威力が出ない。

 陸は寝る間を惜しんで研究した。体力をつけるために空と一緒にランニングをしたこともあった。あまりの辛さに涙を流すこともあった。

 その努力が導いたのは、腰と左腕と左足を使った体重移動。

 右手を時計回りに回してツッコミを入れる際に、左腕は反時計回りに回すのだ。さらに左足はツッコミ対象とは逆に大きく蹴り出す。

 そうすることによって体重が乗り、より鋭さが増す。


 クラスのテニス部員がそれを見て言った。


「あれは!! ワンハンドジャックナイフ!!」


 そして平野と小松、川谷は思った。

 陸がツッコミを入れている。と。


「あんたのせいで教室が冷えたじゃない! どうするのさ!?」


 栗崎は雪の積もり始めた教室で四人に言う。


「屋上に行くわよ! あーしが色々教えてあげる!」

「どーゆーことさ!?」


「さっきの会話が聞こえていたの。アイドルオーディションかなんかの合宿にいくんでしょ?」

「そうだけど」


「だから先輩のあーしが色々教えてあげる。ただ踊って歌うのがアイドルじゃないわ! ついてきて!」


 栗崎は雪を踏みながら教室を出ていく。

 四人は顔を見合わせて首をかしげるが、ついていくことにした。



 空と小清水、湊は購買から教室に戻ってきた。


「う! なんか教室寒くね!? ってか雪!?」


 三人は不思議に思いながらも自分の席へ戻る。


 空は机に積もった雪を払う。

 湊も同じく払う。


 小清水も払う。しかし、机の上全体にポツポツと固まっているなにかに気づく。

 よく見ると茶色いポツポツ。


「なんだよこれ!? 気持ちわりーな」


 栗崎の飲んでいたお茶はウーロン茶であった。



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