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俺のスマホはこんにゃく  作者: ななほしとろろ
chapter4 試される大地で試される五人
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 三階の会議室。

 大きめの長テーブルが真ん中にあり。ホワイトボード。観葉植物。入口横にはウォーターサーバー。カーペット状の床。


 今ここでは会議が行われている。

 先ほど行われたオーディションの審査会議。

 座っているのは、古嶋、奥村、辻、栗崎。

 ホワイトボードの前に立ち、書記をしているのが鈴木(すずき)智樹(ともき)

 入口のところには、参加者の案内などをしていたスタッフたち三名。


 古嶋は孤立していた。


「古嶋さん。正気ですか? 確かに古嶋さんには実績があります。選ばれた人たちは皆成功している。でも、今回のこれは認めるわけにはいきません」


 奥村はそう言った。

 古嶋に向かい合って、手を動かしながら諭すように。


 奥村英男。

 若手作曲家。たら3Pの兄さキッスの作曲者。それ以降名を広め、様々なアーティストの楽曲を手掛ける。

 太縁の白い伊達メガネをしている。レンズは抜いてある。髪型はソフトモヒカンで金髪。目は細い。


 辻も奥村に同意するように口を開く。


「丈さんの選んだこの四人。ダンスは中の下。ダンスだけの評価では下から数えた方が早いメンツたちよ?」


 辻詩織。

 ルナールプロジェクト専属の振付師。ダンス以外に演劇指導も務める。

 グラデーションに染められた髪。強めにパーマがかかったソバージュで肩上の長さ。

 黒いキャップをかぶっている。歳は違うが古嶋と同期。本人は年齢を明かしていない。


 古嶋はなにも言い返さない。

 腕を組んで目を瞑っている。


 栗崎は発言しない。立場をわきまえているのだ。


「私と奥村さんと円ちゃんが選らんだこっちの四人の方がいいんじゃないかしら? このプロジェクトは失敗できない。分かるわね?」


 古嶋は肩眉を下げながら目を開ける。そして、かすれた笑いを漏らす。


「はは……まいったねー。どうしたもんかねー。ってなわけで提案してもいいかい?」


 三人は首をひねる。


「本当はここで合格者決める予定だったけどさぁ。もうひとつ遊びを入れよう」


 辻が立ち上がる。


「丈さん! ふざけないで!」


 古嶋は動じない。

 テーブルの上で指を組んで前傾になりニカリと口角を上げる。


「まあまあ落ち着いて。怒ってるシオリンは可愛くないよ?」

「うるさいわね」


「でだ。遊びというのはそっちの選んだメンバーとこっちの選んだメンバーでユニットを組んでのバトルだ」


 三人は驚き口を開こうとするが、古嶋がそれをさせないように続ける。


「まあ今から会場は取れないだろうから場所はここのレッスン室でいいかな。内容は観客を動員しての投票バトル三次予選。曲は自由で一曲。どう? 面白いよね?

 来週の土日を使ってここで合宿。本番は日曜の夜」


 辻はため息をついて、諦めたかのように腰を下ろした。

 古嶋のこういった突発的な行動は今に始まったことではない。

 そして、こうなった古嶋はなにを言っても聞かない。辻はそれを理解していた。


「で、こっちの選んだ四人だとハンデが大きすぎるから、円ちゃんをこっちに入れる。それで五人。そっちも五人選出してもらう」


 古嶋はここまで言うと、背もたれに寄りかかった。


「あーしがそっちのメンバーに入るんですか!?」

「うん。今決まったからね。もし投票で負けたらもちろん円ちゃんも落選」


「……そんな」


 栗崎はうつむいてしまう。


 辻が栗崎をかばうように反論する。


「それはあんまりじゃないかしら? 円ちゃんはこのプロジェクトに参加するために東京から異動してきたのよ? わかっているの?」


 古嶋は平然と答える。


「知ってるよ。あっちのマネージャーさんからお願いを聞いたのはこの古嶋だからねぇ。でも。落ちた場合はそういうことだ。ここはそういう世界。

 それに円ちゃん。向こうではメンバーに嫌われていたんだろ? 協調性がないとかでさ。そんな人がのうのうと新プロジェクトに参加ってこと自体がおかしい話なんだ」

「丈さん! 言いすぎよ!」


 古嶋は自分が記入した四枚のチェックシートを持って立ち上がる。そして、入口のスタッフに話しかける。


「君。この子たちに連絡しておいて。来週の土日にここで合宿ってね。それと、三次予選バトルのことは内緒で」

「わ、分かりました」


 古嶋は振り返る。


「そういうことで、そっちもメンバー決めといてね」


 古嶋は出ていく。


 静かにしていた奥村が口を開く。


「話には聞いていましたが、古嶋さんってホント凄いですね。悪い意味で」

「奥村君は丈さんと組むのは初めてだったかしら?」


「ええ。そうです」

「こんなの序の口よ。ただ。あの人はああ見えて凄い深いところまで考えていることが多いから……。そして成功もしている。だから慕う人も多い」


「そうなんですか。――僕たちもメンバー決めましょうか」

「そうね」


「僕、なんだかんだいってこの勝負楽しみになってきましたよ」


 チェックシートに再度目を通し始める奥村。


 栗崎はうつむいたままである。

 辻が気を使って話しかける。


「円ちゃん。あなたはどうする? なんか勝手に向こう側になっちゃったけど……」

「あーしも選びます……。戦う相手になっちゃうけど、面接官任されましたから……」


「そう……。それじゃ気合入れて選びましょ! ほら顔上げて!」


 辻は栗崎の背中を軽く叩く。



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