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エルヴィラさんの小周天、お友達と再会

氣の感覚について教えてから三日が経った。エルヴィラさんこの感覚を知っていたのではないかとは思えるぐらい氣に関しては敏感だった。これなら次に進んでもいいなと考え僕はエルヴィラさんに小周天の行について教え始めた。

離れの外で地面に直に座りエルヴィラさんと対面しながら説明する。


「万物に満ちる生命の力、氣を下腹にある丹田に集中して集めて、それを体の正中線、つまり丹田からお尻、背中、頭上、胸、そして丹田に通して体を一周させるのが小周天です。ただ一周させるのではなく重要なポイントで氣を止めてそこで氣を強めて……」


「フンフン……」


エルヴィラさんは僕の話しを熱心に聞いている。色んな物の氣を探ったりするのが案外面白かったらしくその先の鍛錬法である小周天も面白いものだと思って聞いてくれているようである。エルフの人は排他的な所があると聞いていてがエルヴィラさんにはそんな感じはない、凄く素直で好感が持てる。そう思っているとおどろおどろしい視線を感じてそちらを向くと木の影からこちらを覗くフィーナ姉がそこにいた。


「フィーナ姉?」


僕に気付かれフィーネ姉は驚いて木の影から出てきた。


「な、何かなっ!? お姉ちゃん、偶然通りかかっただけだから!! 覗いてなんかいないから!! アッハッハ……」


挙動不審なフィーナ姉は慌てるようにこの場から走り去った。その後ろ姿を見ながら僕はこう呟く。


「……何でさ」


エルヴィラさんも不思議そうにフィーナ姉の後ろ姿を見ていた。


中断していた小周天の行の説明を終えると早速エルヴィラさんに小周天の行を行ってもらった。仙道の呼吸法は体に強い熱を発生させるもので男性ならともかく女性にはあまりいい物ではない。腹式呼吸のみ行うように指示する。


「ハイッ」


エルヴィラさんは頷き腹式呼吸を行い意識を丹田に集中する。女性のお腹をジロジロ見るのはとてもよくないのだがそうしないと氣の動きが見れないのだから仕方がない。最近僕は人の氣の流れを何となくだが見る事が出来るようになっていたのだ。出来の悪い僕でも少しづつではあるが成長しているようだ。だが、エルヴィラさんの成長速度は僕なんかを大きく超えていた。


エルヴィラさんの丹田に氣が発生しているのが見て取れた。意識の集中と腹式呼吸で氣を強めて移動させる。特定のポイントで氣を止め、強めそれから移動と繰り返し―――約一時程で氣を一周させてしまった。僕が数ヵ月かけてようやくできた事をアッという間に出来てしまうとは……。僕はその鮮やかさにポカンとしてしまう。


そんな僕の間抜け面を笑うように弱々しい、けれど僅かな存在感がある氣が僕の頭の周りのくるくる回っていた。僕はその氣を振り払おうと手を上げ止める。


(これって……もしかしてリリオ?)


振り上げた手に氣が止まると幼い少女の声が頭の中に聞こえてきた。


(そうだよ、リリオだよ。カイル、お久しぶり)


(久しぶり、今までどうしていたの)


(カイル達の傍にいたよ。みんなを見ているのはとても面白かった。あのおばさんにはとてもよくしてもらったし)


(あのおばさんって?)


(アルジュナさん)


(絶対本人の前で言ったらダメだ!!)


僕は語気を強めて思う。それにリリオはびっくりしているように感じられた。


(ウ、ウン、分かった……)


(そ、それよりエルヴィラさんに近づいてみたら。もしかしたら僕らみたいに話が出来るかもしれないよ)


(ウ、ウン……)


リリオは躊躇している様だった。


(もし、またお話が出来なかったら……)


(今回出来なくても修行が進めばきっと話が出来るようになるよ。今日はお試しで話してみたら)


(……わかった)


リリオは僕の手から離れ、エルヴィラさんの方に向かっていく。恐る恐るという感じでエルヴィラさんの額に触れる。僕はリリオに触れていなければ声を感じる事が出来ない。だけどリリオがエルヴィラさんの頭の周りをくるくる回っている所を見ると答えは聞くまでもない様だ。


そこから先の変化に僕はさらに間抜け面になってしまう。周りからさらに複数の氣が出現したのだ。地水火風、四大の氣がエルヴィラさんの元に集まっていく。強く荒々しいのだけど邪悪な感じがしない氣の感覚に僕は驚きを隠せないかった。


(エルヴィラさんてもしかして凄い精霊使いだったんじゃないのか?)


しばらくしてエルヴィラさんは小周天の行を終え、目を開き大粒の涙をこぼした。


「エルヴィラさん!?」


「すみません……」


エルヴィラさんは涙を拭きつつ僕に微笑んだ。


「私の周りにはあんなにお友達がいてくれたんですね。それなのに私気が付かなくって……それが申し訳なくて……嬉しくて……」


僕は感涙に咽るエルヴィラさんの頭を撫でる。エルヴィラさん最初ビックリしたが何度か撫でるうちにそれを受け入れ、されるがままになる。それが気に入らないのはエルヴィラさんの周りに集まった四大の氣だった。僕を押し倒さんとする強力な突風が吹きつける。それに乗って石が飛んでくる。僕は両手で顔を覆って防御する。


「みんな、やめてよっ!!」


エルヴィラさんの声と同時に風が止み、石が落ちる。攻撃的な気配が消えた。周りの精霊が自分の意志で攻撃してきた。この事実に僕はゾッとした。


(……魔法とは質が違う!? 呪文を用いず精霊が自分の意志で攻撃してきた……今は風と地の精霊が攻撃してきたんだよな。火と水が混ざればどうなったんだろう……)


「カイルさん、大丈夫ですか?」


「これって……エルヴィラさん、精霊使いの能力を?」


「はい、取り戻せました」


「……という事は記憶も?」


「記憶は戻っていません……」


「そうですか……」


僕は残念そうな顔をするが内心ではホッとしていた。エルヴィラさんとの出会いを考えると思い出してもいい事はないように思えたからである。


「……記憶はおいおい思い出せばいいですよ。今は色んなお友達とまた会えるようになった事を喜びましょう」


「ハイッ!」


エルヴィラさんはここ一番の笑顔で頷いた。


エルヴィラさんは精霊使いの能力を取り戻した。これで僕がいなくなったとしても、一人で如何様にでもやっていけると思う。僕の目的の一つはこれで果たした。あともう一つは……。

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