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アルフィオレから戻ってきて……何、これ?

冒険者ギルドを後にして乗合馬車の停留所に向かう。昨日の事が夢だったかと思えるぐらい何事もなく乗合馬車に乗れた。ようやく一日ぶりに離れに戻る事が出来てホッとするのもつかの間別の問題が持ち上がった。


離れの入り口にアルジュナさんが浮いていたのだ。棒とフィーナ姉の姿を一瞥するとこちらに向かって近づいてきた。ニコリと笑っているのだがアルジュナさんの体からは黒い何かが発せられている。それを見て僕は思った。


(あれは怒っている……あの笑顔はフィーナ姉が怒っている時の笑顔と同質のものだ)


「フィーナ姉、逃げよう」


「……ダメ、もう逃げられない!」


アルジュナさんは僕の目の前に来ていた。アルジュナさんは凶悪な表情で僕を睨むと舌打ちする。僕の頭の周りを旋回しながら文句を言い始めた。


「……二人そろって朝帰りか……昨日はお楽しみじゃったようじゃのう……わしらの事はほおっておいて……朝チュンコーヒーはうまかったか!? アア……ン?」


文句を言っていたアルジュナさんが怪訝な顔をする。


「カイルよ、何かあったのか? お主、ひどい顔をしとるぞ?」


「そうですか?」


「ウム……誰かに襲いかかろうとしておる、そんな顔じゃ……もしかしてフィーネを襲おうとしておるのか? お互いの同意があるのならいいのじゃが無理矢理はやめておけ。お互い悲しむ結果にしかならんぞ」


「……何を言ってるんですか、アルジュナ様?」


フィーナ姉がニッコリ笑ってアルジュナさんを鷲掴みする。


「ギャーッ! 何をする!? エロメイドが!?」


「おバカな神様はこうやって黙らせるしかないじゃないですか?」


「何じゃとぉ!!」


アルジュナさんは両手足に力を入れフィーネ姉の手を広げ脱出する。


「このダメイドが!」


「この耳年間のバカミッ! どうしてすぐにやるやらないの話になるんですか!?」


フィーナ姉とアルジュナさんの睨み合いを呆れた表情で見ていると誰かの視線に気付く。視線の方向を見ると、離れの入り口からエルヴィラさんが顔のみを出してこちらを見ていた。


「……お帰りなさい」


「ただいま、エルヴィラさん。その……頭は大丈夫?」


「ムウッ……頭はってどういう意味ですか!!」


エルヴィラさんは少しムッとしていた。こういう受け答えをしている所を見るとフィーナ姉の洗脳は解けた様で何よりだ。


「言い方が悪かった、ゴメン」


フィーナ姉とアルジュナさんのじゃれ合いをほおっておいて離れに近づくとエルヴィラさんが扉を閉めた。しかも鍵をかけられた。


(何でさ?)


「エルヴィラさん、ここ開けてよ」


僕はコンコンと扉をノックする。だが、返ってくるのはエルヴィラさんの怯えたような声のみだ。


「ゴ、ゴメンナサイ! もう少し待って下さい!」


「待つって何を?」


「ともかく待って下さい!!」


どういう事かと考えているとフィーナ姉とのじゃれ合いをやめたアルジュナさんが僕の隣りに来ており、扉をノックする。


「エルヴィラよ、もう諦めよ。ワシらで何とかしようとするともっと被害が出てしまう。ここには家事については玄人のダメイドがおる。こ奴に任せたほうがよい」


「でも……」


「開けよ!」


「……分かりました」


扉の向こうにいるエルヴィラさんは諦めて扉の鍵を開け、中から顔を出す。その表情は暗く沈んでいた。


「あの……すみません」


「僕らを締め出した事なら……」


「そうじゃなくて……」


エルヴィラさんが室内に目を向けるのを見て僕とフィーナ姉は顔を見合わせ中を覗く。


「これは……ヒドイ……」


僕は顔を歪めた。


「これは……やりがいがありますね……」


フィーナ姉は凄いのある笑みを浮かべゴクリと唾を飲んだ。


「「エッ?」」


僕とフィーナ姉はお互いの感想の違いに顔を見合わせた。

僕たちが見た状況を説明するとこういう感じだ。入ってすぐの台所の床は割れた皿の破片が散乱している。粉および液体の調味料も床に漏れており、混ざり合い固まりとなっている。ナベには紫色になった謎の液体が入っており異臭を漂わせている。


「どうすればこうなるの?」


僕は異臭に鼻を摘みながらエルヴィラさんに問いかけると恥ずかしそうに顔を両手で覆う。エルヴィラさんの代わりにアルジュナさんが答えてくれた。


「エルヴィラ、こ奴のう……こ奴こそが真のダメイドでな。お主らが昨日戻ってこんかったからワシらで夕飯を作る事になったんじゃがこ奴は家事全般やった事がないぐらいの駄目っぷりでな、皿を持てば落として割る、調味料はこぼす、包丁を持てば自分の指ごと切ろうとする、火をつければボヤを起こす、片づけをすればすっころんでさらに散らかす。こんな感じで散々じゃったんじゃよ」


「ス、スミマセン!!」


エルヴィラさんは何度も頭を下げる。


「アルジュナさんが夕飯作ればよかったんじゃ?」


「ワシもか家事は苦手でな……」


テヘッと笑い舌を出すアルジュナさん。


「事情は分かりました。後は任せて下さい!!」


腕まくりをし、鼻から口を布で覆うフィーナ姉。その姿はとても頼りになる。魔王に立ち向かう勇者そのものだった。


「なんぞ燃えとるの、フィーナ?」


「汚いものを綺麗にする事に情熱を燃やしてますからね、フィーナ姉は……」


「私も手伝います!!」


エルヴィラさんが責任を感じ、手伝いを申し出るがフィーナ姉がヤンワリと断る。


「まだ本調子じゃないんでしょう。私に任せて休んでいて下さい」


「ワシらじゃ手伝いは出来ん、むしろ邪魔になる。引くのもまた勇気じゃよ……エルヴィラよ」


「……はい」


目の端に涙を浮かべながら頷くエルヴィラさん。アルジュナさんとエルヴィラさんはフィーナ姉の背中を見送る。その背中は語っていた。後は私にお任せくださいと……。何か盛り上がっているんだが僕はついていけずこう呟いた。


「何これ?」




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