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フィーナ姉をよくも……僕の殺意。

この町に来た時はまだ太陽は東の方にあったのに今は中央に登っている。冒険者ギルドで思ったより時間がたってしまったようだ。僕のお腹がグーグーなった。お腹を押さえるがあまり意味はなった。チラリとフィーナ姉を見ると凄くウットリした表情で僕を見ていた。


「……何かな、フィーナ姉?」


「可愛いよ、カイル君……」


「可愛いいって何さ! 僕、男なんだから可愛いはないでしょ!!」


「そういう態度がなおさら可愛いんだよっ!!」


フィーネ姉は辛抱たまらんと言うように僕を抱き締めた。流石体力値100以上、僕の素の力では引きはがす事が出来ない。


「フィーネ姉、所かまわず抱き締めるのやめてよ。人が見てるよ、恥ずかしいよ!!」


冒険者ギルドからそれ程離れておらず、道を行きかう冒険者たちが僕たちをジロジロ見ては通り過ぎていく。微笑ましい、または疎ましいという視線に僕は耐え切れなかった。

この密着した状態では三体式の構えをする事は出来ない。腹式呼吸に切り替え、気を練るんだけどフィーネ姉の体から漂う芳しい香りや温い体温、それに柔らかい体の感触が心地良くて集中が乱れてしまう。眠気を誘われるんだけど必死に耐えて氣を練る。そして呼気を吐くと同時に両腕を広げ、フィーナ姉のホールドから脱出する。そしてフィーナ姉の手を引いて走った。しばらく走り人気のない裏路地でようやく一息つく。


「フィーナ姉……」


僕はジロリと睨むがフィーネ姉にはどこ吹く風と言った感じだ。


「ゴメンねぇ、お姉ちゃん我慢できなくて……」


「ゴメンというならもう少しすまなそうな顔しようか、フィーナ姉」


無邪気に笑うフィーナ姉に溜め息を付きながら、フィーナ姉のホールドを解いた時の事を思い出していた。

ステータス値に差があっても、体の連動と氣の力をうまく使えば瞬間的には格上に匹敵する力を引き出す事は出来そうだ。ステータスが低いという事をフェイントに使う事も出来そうだし戦術に幅が広がりそうだ。


「もういいよ。それよりお腹がすいたよ。何か食べに行こうよ、フィーナ姉」


「そうだね、今日は少しいい物食べようか。料理のレパートリー増やしたいし」


「食べただけで同じ味が出せるの?」


「お姉ちゃんの器用値を馬鹿にしないでよ!!」


「そういう表現に使う数値なんだっけ、あれって?」


僕は首を傾げるがフィーナ姉の美味しい料理のレパートリーが増えるのは確かに嬉しい。


「でもアルジュナさんとエルヴィラさんには少し悪いかな」


「だからこそだよ。料理を持って帰れない以上、家で作るしかないんだし」


「そうか、それならしょうがないよね……フィーナ姉期待してるよ」


「ウン、ウン。大船に乗ったつもりで期待してよ!!」


話は纏まった。僕たちは路地から大通りに出て道沿いにある店を物色し飲食店の一つに入った。大きな町に出店している店であるだけに中々の美味だった。少し高かったけど……。

腹が膨れた後は、腹ごなしついでに町を散策する。楽しい時間はあっという間に過ぎていき、日が大きく傾き始める。乗合馬車が出る時間も近づいてくる。もうそろそろ行かなければアルフィオレの町に一泊する事にある。そうなればアルジュナさんんとエルヴィラさんに何を言われるやら……。



乗合馬車の停留所に行くために僕たちは人通りの少ない路地を走る。フィーナ姉は方向感覚が鋭くこの道を行けば近道なのだという。もし仮に行き止まりだったとしてもフィーナ姉なら飛び越えられるとの事だった。フィーナ姉頼りになるなあと思いながら走っていると進路上に二人の男が出てきて進路を塞ぐ。二人は皮鎧を着ており腰に長剣を差している。剣呑な雰囲気に僕とフィーナ姉は警戒し進路を転換し後ろに逃げようとするがそちらにも一人同じように革鎧に長剣を持った人物に道を塞がれている、僕たちは囲まれていた。


「アナタたち一体何者です!!」


僕とフィーナ姉は壁を背に立つ。フィーナ姉は僕の目に立ち僕を守ろうとする。険しい顔で男たちを睨み威嚇する。


「昼間は世話になったな。クソガキに獣クセー姉ちゃんよぉ」


男の一人が長剣を抜き、僕たちに向けて切っ先を向ける。


「昼間って……」


僕はしばらく考えてポンと手を打つ。


「ああ、昼間、僕にやられてた冒険者」


フィーナ姉も合点がいったというように手を打つ。三人の男たちには確かに見覚えがあった。依頼に失敗しやけ酒を飲み、悪酔いした所に目が合った僕に絡んできた冒険者三人組。……何か情けないなこの人たち……。


「それで何か用ですか? 私たち急いでるんですけど」


フィーナ姉は警戒を緩めず男たちに問う。男たちが僕を睨み怒鳴りつける。


「お前らのせいで一ヵ月依頼を受ける事が出来なくなっちまった……お前らのせいだぞ! どうしてくれるんだ! 責任取れ!!」


「いや、責任取れって……どう見てもアナタたちの自業自得でしょう」


僕は情けないなと思いつつも正論を言う。だが、この三人の冒険者たちにはそんな正論は通じなかった。


「うるせえ!! お前が黙って殴られればそれですんだんだ!! それを抵抗しやがって!! 素人にやられた冒険者なんて誰が信用する!!」


「お前らのせいでお飯の食い上げだ、責任取れ!!」


口々に情けない事を言われ僕のテンションは一気に上がった。情けなすぎてため息が出る。


「……で、僕はどうすればいいと?」


「金目の物とそっちの獣メイドを置いていけ。そうすれば命だけは助けてやる。俺たちが仕事できない間の金をお前らに補填してもらう」


「そんな事に頷くと思っているんですか?」


「怪我はしたくないだろう? だったら言うこと聞くしかないな?」


そう言って残り二人も長剣を抜いた。それを見たフィーナ姉の怒りが頂点達した。フィーナ姉の髪が逆立っている。


「……冒険者のふりした強盗の戯言、聞くに堪えません。アナタたちがどうなろうと当方には一切関係ありません。立ち塞がろうというのなら遠慮なく粉砕させていただきますので……お覚悟を!!」


フィーナ姉は両拳を握りしめぶつける。ドゴンッという激しい音に僕も三人組も震え上がる。


(フィーナ姉、本当に怒っている!!)


藪をつつく真似をした三人組には同情を禁じ得ない。だが三人組には震えながらも妙な余裕があった。その理由がすぐに分かった。


「……フィーナ・レイクスを縛る者! エス・クラボよ! 契約に従い彼の者に苦痛を与えよ!」


「何故、アナタたちがそれを……ギャンッ!!」


フィーナ姉は悲鳴を上げその場にうずくまった。


「フィーナ姉!?」


僕はフィーナ姉に近寄り体を揺さぶる。フィーナ姉は苦痛に呻き体が小刻みに震えている。僕はユラリと立ち上がり三人組を睨みつける。


「アンタら、フィーナ姉に何をした!?」


「それをお前に言う必要はないわな……俺たちの言う事を聞いていれば痛い目を見ずに済んだって言うのに獣人はやっぱりバカだな」


ゲラゲラ笑う三人組の怒りが湧く。怒りを下腹―――丹田に溜めて氣に変えて力にする。こんこんと湧き上がる熱い力に体が焼けそうだ。焼けるような呼気を吐きながら僕は言う。


「アンタら……よくも僕の家族に手を出したな……絶対に許さない!!」


「許さなければどうだと言うんだ。お前みたいな雑魚、油断しなければまず負ける事はねえんだ。世の理不尽さを感じながら死ねよ、ガキ」


さらに笑う三人組に対し僕は三体式の構えを取った。


「アンタらこそ世の理不尽さを感じてろ……僕は一切の手加減を加えない、絶対に殺す!!」


殺すという言葉に込められた純粋な殺意に三人組は笑いを収め、長剣を構えた。













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