今の力量は……ステータス変動
「ギルドマスター本人が受付をやっているんですか?」
僕の問いにダンガンさんは苦笑いを浮かべる。
「職員が少なくてな……。冒険者は荒くれどもが多いし、そういう人種を相手となると職員にもそれなりのレベルを求められるんで必然的にこうなる」
ダンカンさんの乾いた笑いに僕は同情する。大きな体が何故か小さく見える。
「まあ、それは置いとくとして……早速ステータスを見てみよう」
ダンカンさんが復活した。
「二人が持っている冒険者カード、これは今の状態では何でもないただのカードだ。だが、機能を解放する事でステータスが見れるようにある。今見れるのは名前、年齢、種族、体力、耐久、器用、敏捷、魔力の八つだ。さらに取得したスキルや魔法を見る事が出来るがそれは冒険者となって手続きをしてからになる」
僕は手に持っているカードを見る。手に収まるくらいの小さなカードがかなりの高性能で驚くばかりだ。
「それでステータスを見る機能を解放するにはどうすればいいんですか?」
「ほう、思ったより食いつくな。そんななりでもやはり男という事か?」
なりという言葉に僕は呻く。少しは体が出来てきたけど見た目は未だに華奢で情けないのである。それを察したのかフィーナ姉がやや険しい表情で僕の横に立つ。
「……早くこのカードのステータスを測る機能の解放条件を教えて下さい」
「……ああ、すまなかった。方法は簡単だ。冒険者カードを持って俺の言う呪文を復唱してくれればいい。短い呪文だから簡単に出来る。では復唱してくれ。”汝は我を映す鏡 我の力をその身に示せ”……これだけだ。さあ、やってみてくれ」
僕とフィーナ姉はダンカンさんの言った呪文を復唱する。その途端、持っていたカードが淡く光る。数秒して光が収まりカードに文字が浮かび上がってきた。
「……本当に浮かび上がってきた……フィーネ姉はどうなってる?」
フィーネ姉の冒険者カードを見ようとするとフィーナ姉は両手上げ冒険者カードを見えない様にする。
「何で隠すの?」
僕が怪訝な子をして尋ねるとフィーナ姉は……
「どうしてもです!!」
と顔を真っ赤にして言う。答えになっていなかった。
「どれ」
いつの間にかフィーネ姉の後ろに回ったダンガンさんが冒険者カードを取り上げ、確認する。
「これは凄い!」
ダンカンさんが感嘆の声を上げる。僕もフィーネ姉の冒険者カードを覗き込む。内容は以下の通り。
名前 フィーナ・レイクス 年齢 15才 種族 獣人 体力 382 耐久 272 器用 472 敏捷 259 魔力 55
「数字だけじゃわからないんですがこれって凄いんですか?」
「獣人だから魔力が低いのはしょうがないとしてもそれ以外は全て100を超えている。いきなりこんな数値を叩き出すとは……逸材だな。本当に冒険者やる気はないか」
ダンカンさんは興奮冷めあらずといた感じでフィーナ姉を勧誘する。だがフィーナ姉は表情を曇らせる。
「私はワルトハイム家のメイドなので。それに……」
フィーナ姉はそこから先を言う事が出来なかった。ダンカンさんの訳アリだという事を察したようで話を切り上げる。
「ところで君の方はどうだ」
「僕のはですね……」
僕の冒険者カードを見る。カードに記されて数値を見て僕は何とも言えなくなった。ダンカンさんは僕の気持ちを代返するようにこういった。
「……これはヒドイ……」
そう言いたくなるくらい僕のステータスは散々だった。
名前 カイル・ワルトハイム 年齢 13才 種族 人 体力 21 耐久 15 器用 51 敏捷 34 魔力 1
「こんなにステータスが低いんじゃ冒険者家業は絶対無理!! 君と同い年の子供でももう少し高いぞ。特に魔力が1ってある意味特殊だぞ!? もう少し鍛錬でもしないととてもじゃないが冒険なんて出来んぞ」
「そんなにですか?」
「当たり前だろう。冒険者ともなると野宿は当たり前、寒暖が激しい土地に行く事もあるし、悪所、難所に赴く事があるんだ。体力は絶対に必要になる。最低でも体力が50以上なければ武器や防具を装備する事も出来んぞ……」
「そこまで……」
あまりのヘタレっぷりに僕は深く落ち込んだ。
「だとするとおかしいですね?」
不思議そうに首を傾げるフィーナ姉。
「そのステータスの数値があっているとするならどうしてカイル君は冒険者の人に勝てたんでしょう?」
「そう言えばそうだな」
ダンカンさんが腕を組みながら言う。
「アレでもアイツらはそれなりに鍛錬をしてステータスを上げている。油断があったとしても格下に負けるような奴らじゃない。これは一体どういうことだ?」
ダンカンさんとフィーナ姉は同じ様に首を傾げるが僕には心当たりがあった。
「このステータスの数値ってこのままなんですか? 例えば体を鍛えたり武器や防具を装備すれば数値が動いたりするって事はあるんですか?」
「ああ、物によって耐久、敏捷は動く。魔法の道具を装備する事で魔力が変動する事もある……もしかして君は何かを装備しているのか?」
「いや、そういう物は持っていないんですけどね。僕が持っている物っていうとやっぱりこれかなって」
そう言うと僕は三体式の構えを取った。そして腹式呼吸を行い氣を練る。しばらく行う事で冒険者カードの数値に変化が生じる。数値が点滅したかと思ったら数値が上がったのだ。体力が21……22……23……と上がっていき60で止まった。更に耐久 50 器用 60 敏捷 49 と劇的に上がった。魔力だけは変わらず1のままだったが。三体式の構えを解き呼吸も腹式から胸式に戻すと数値が下がり元の値に戻った。
「……そういう事か。魔法でも体力は耐久力、その他諸々を底上げする魔法があるが、カイル君は別の方法でそれを行っていたのか。そんな事が出来るならあいつ等にも対抗出来るか? だが、その技術が常時出来ないというのであれば致命傷になりえるかもしれない。危機を察知する技術も学ぶべきだな」
(久坂さんの知識の中にそういう技術がないか今度調べてみよう)
「分かりました。助言ありがとうございます」
「何、いいって事だ。自分のステータスが数値で出れば鍛える事にも張りが出るだろう。これからも精進してくれ……長くなってしまったが話はこれで終わりだ。それからこれを渡しておく」
ダンガンさんは僕に銀貨三枚を手渡した。
「これって?」
「コブリンの巣についての情報料。有用な情報をもたらしてくれた者には情報料を支払う決まりになっているんでな。受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
僕は金が三枚をぎゅと握りしめた。大した金額ではないがそれでも思わぬ収入に僕たちはニンマリした。このお金で何をしようかと考えながら僕たちは冒険者ギルドを後にした。




