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冒険者との乱闘、ステータスを測ってみないか?

右頬を左拳で殴られた。頬がかっと熱くなり口の中に血の味が広がる。


「カイル君ッ!!」


フィーナ姉の悲鳴。それからフィーナ姉から殺気が迸り、僕を殴った冒険者に牙を向く。フィーナ姉が臨戦態勢に入った。このままだとギルド内が血の海に染まる。だから僕はフィーナ姉を手で制する。


「フィーナ姉、手を出さないで!! 僕は大丈夫だから!!」


「だけど、ソイツ……」


さらに何か言いたそうだったがフィーナ姉は僕の言う事を聞いて殺気を収めてくれた。僕はほっと息をついた。フィーナ姉には人を殺すという事を簡単にやってほしくなかった。命を救ったというのに僕を殴った冒険者は違う意味にとったようだ。


「獣メイドの姉ちゃんにいい恰好したいってか? 獣クセー獣人になに色気づいてんだか、このエロガキが!!」


冒険者は僕を更に殴ろうとするがそのまま殴られるつもりはない。僕の事をけなすのはいいけどフィーナ姉をけなした事は許せない。多少痛い目を見てもらおう。僕は胸ぐらを掴む冒険者の右手を左手で包むように掴む。そして下から肘を持ち上げる。人の構造上曲がるはずのない方向に持ち上げられたことにより腕に激痛が走り冒険者は僕の胸ぐらから手を離す。痛む腕を押さえ、血走った目で僕を睨む。


「ふざけた真似しやがって……オイ、お前らこのガキぶっ殺すぞ!!」


この声に仲間であろう二人の冒険者が席を立ち僕に向かってくる。三対一になりながらも僕は慌てず左三体式の構えを取る。正面から冒険者が右拳を繰り出す。それを左手で外側に弾くと同時に一歩踏み出し同時に腰に添えた右拳を弧を描くようにして上に打ち出し冒険者の顎を打った。冒険者は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。

この結果に残った二人は目を視線を交わし、腰の短剣を抜いた。二人から油断が消える。僕を敵と見なし、距離を徐々に縮めてくる。

フィーナ姉が援護に入ろうと動いた時後ろから怒鳴り声が上がる。


「いい加減にしねえか、お前ら!!」


声の主はフィーナ姉と話していた厳つい顔の大男だった。大男の声に僕はもちろん二人の冒険者も身が竦んでしまう。


「素人相手に腰の物を抜くって事は冒険者の資格を剥奪される覚悟があるって事なんだろうな!?」


大男の声に二人の冒険者は怯む。


「冒険者ってのはな誰にでもなれる分、信用と信頼が第一なんだよ。ならず者の集まりじゃねえんだ! ただでさえお前らは依頼を達成できず信用を失っているんだ! この上、さらに乱闘騒ぎを起こすっていうなら……どうなるか分かっているんだろうな?」


大男が拳をパキパキ鳴らしながらこちらに近づいてくる。


「……倒れているそいつを連れて出ていけ!!」


二人の冒険者が倒れている冒険者の両腕を掴んで僕の脇を通り過ぎ出口に向かう。出口に向かう冒険者たちに大男はさらに怒鳴りつける。


「お前たちは冒険者レベルを一つ降格の上、一ヵ月は依頼を受けさせん! 覚悟しておけ!」


大男の宣言に冒険者たちは泣きそうになりながらギルドを出て行った。緊張が解けその場に座り込んだ僕にフィーナ姉が駆け寄ってきた。


「カイル君、大丈夫?」


「ああ、大丈夫。少し疲れたけど……」


「すまなかったな、坊主」


大男がフィーナ姉の後ろかすまなそうに僕を見ていた。


「あれが冒険者の代表だとは思わないでくれ。全員があんな風ではないんだ」


「ええ、分かってます」


「分かってくれてありがとう。ところで君たち、ステータスを測ってみる気はないか?」


「突然ですね、どうしてですか?」


首を傾げた僕に大男は説明する。


「君が倒した冒険者はこのギルドでは中堅でね、レベルもそこそこあるんだ。そんな相手を一人とはいえ倒した実力者に興味があってなね。君がよければだがどうする?」


僕は腕を組んで考える。


(ステータスを測るという事は今の体力は魔力の数値化できるという事だよね。仙道や形意拳をやって体力もついてきたけどイマイチ実感が湧いてこなかった。数値化できれば実感も出来るし、修行で無茶な事はしないようにする事が出来るし、逆に限界ギリギリの修行も出来るようになる。体力値がイチでも残ればいいんだし……今の僕には必要な物かもしれない)


「……分かりました、やらせてください」


「分かった。冒険者カードを持ってこさせよう」


大男は受付の奥にいるギルド職員に声をかけ冒険者カードを二枚持ってこさせ、僕とフィーナ姉に手渡す。


「これが冒険者カード……」


そのカードには何も記入がされていない白いカードだった。天に掲げ透かして見るが何も浮かびあがてはこなかった。


「説明しておこう。まず、この冒険者カードは誰にでも発行している。自分の体力値、魔力値がどのくらいか知りたい者は多いからな。他にも色々な機能が付いているが、それは冒険者となり手づ付きを踏んでようやくその機能が解放される。今、冒険者になるのならその機能も使えるようにするがどうする?」


「僕はいずれ冒険者になろうと思っていますが……フィーナ姉は?」


「お姉ちゃんは現時点では考えてないよ」


「そうか……そちらのフィーナさんは出来ればスカウトしたいんだがね」


「フィーナ姉をですか? それはどうしてですか?」


「君も分かっていると思うんだが……獣人は身体能力が高い。天性の戦士と言える。そういう者が先頭に立てば死ぬ者が少なくなり、依頼の達成率も上がる。いい事尽くめという訳だ」


大男が言う事は一見聞こえがいいが獣人をコマ扱いしているようで気持ちよくなかった。僕は話題を変える事にした。


「ところで……あなたのお名前は?」


「言ってなかったか。私はここの冒険者ギルドのギルドマスター、ダンガン・ブロウクンだ」


厳つい顔の大男、ダンガン・ブロウクンは笑顔でそう名乗った。


 

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