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ヘンな気分になって……冒険者ギルドにて

僕は興奮が隠しきれなかった。

道を行きかう人をキョロキョロ見まわし、珍しい屋台が出ていればそこに突っ込み、店主にあれは何? これは何だ? と聞きまくり、「冷やかしなら帰ってくれ!!」と怒鳴られ、「スイマセン!!」と走って逃げる。はたから見ればおのぼりさんだけどそう見られても構わない、そう見られる事さえも楽しかった。数ヵ月前はこんな風に出回れるとは思えなかった。頭を打って久坂さんの記憶を引っ張り出せなければ未だにあの離れから出る事は出来なかったろう。


今、この瞬間、僕は町を楽しんでいた!!


チョロチョロ動き回り、息が切れてきてようやく興奮が収まった。そこでようやくフィーナ姉の事を思い出した。


「アッ、フィーナ姉!?」


「お姉ちゃんはここだよ」


「ワッ!! ビックリした!?」


フィーナ姉は僕の後ろに控えていた。手には果汁を水で割った飲み物を持っていて僕に手渡してくれた。僕は飲み物を一気にあおる。体に水分がしみ込むようでとても美味しかった。フゥッと一息つき、フィーナ姉を見ると何故か優しい顔で見つめられていた。不思議そうな顔で見ていると頭を撫でられた。


「チョ、何するのフィーナ……姉?」


手を払いのけようとして僕はぎょっとした。フィーナ姉が涙ぐんでいたからだ。


「どうしたのフィーネ姉、どこか痛い!? いや、フィーナ姉ほっぽっといてあちこち動き回ったのが嫌だった!? ゴメンね、フィーナ姉!!」


「そうじゃないよ、カイル君……」


フィーナ姉は涙を拭きつつ笑顔を見せる。


「つい数ヵ月前はこうやって元気に動き回るなんて考えられなくて……。好きな人が元気でいてくれる事がこんなに嬉しいだなんて思わなくって……」


「フィーナ姉……」


僕とフィーナ姉は見つめ合う。


(何だろう……フィーナ姉凄くキレイだ……)


僕の目はフィーナ姉のつやつやでプルっとした柔らかそうな唇に引き寄せられる。


(そういえば唇同士の接触って凄く気持ちいんだよな……怖いけどもう一度してみたい……)


僕の体は妙な衝動に突き動かされる。僕はフィーナ姉との距離を縮める。フィーナ姉は僕がこういう行動に出るとは思っていなかったようで体が固まっている。僕とフィーナ姉の唇の距離は縮まりあとわずかという所でパンっと誰かが手を打った。

驚いて僕は飛び上がった。それと同時に僕を突き動かしていた妙な衝動はきれいに消え去った。


(ぼ、僕は何をしようと……)


手のなった方を見ると杖を突いたお婆さんがこちらを睨んでいた。


「イチャつくのは別に構わないんけど……往来でやるんじゃないよ。どうなるかと注目する奴らで道が塞がっちまうんだよ。やるならどこかの宿屋でやりな」


周りを見ると一体どうなる事かとやじ馬が出来ていた。僕は恥ずかしくなって、フィーナ姉の手を引いてこここから逃げる。後ろから「根性出せよ!!」、「お幸せに!!」、「ケッ、乳くりやがって」という声、それから口笛が聞こえた。

しばらく走り、声が聞こえなくなった所で足を止める。僕は息を切らしてるけどフィーネ姉は全く息を切らしていない。それどころかおかしそうに笑っていた。


「フィーネ姉……?」


「カイル君、こんなに強くお姉ちゃんの手を引けるようになったんだね……お姉ちゃん幸せだなあ」


フィーナ姉はしみじみと呟く。


「これくらいで幸せだなんて……手を引くぐらいいつでもするよ」


「うん、またお願いするね」


微笑むフィーネ姉の顔がキレイで見てられなくなり、僕は顔を背ける。


「それより早く冒険者ギルドに行こう」


「そうだね。早く報告済ませて遊ぼう。馬車が出るのは夕方だし、それまで時間もあるし」


そして冒険者ギルドに向かうのだが、それよりまず確認しなければならない事が出来た。


「ここは一体どこ?」



人に道を聞きながら冒険者ギルドに向かう。ギルドに近づいているのかすれ違う人たちに共通する特徴がみられた。すれ違う人たちは武装しているのである。剣や槍に杖、鎧や盾、ローブを纏っており、僕は大変興味をそそられる。武器屋にも寄ってみようと考えてしまう。


そんな事を考えているうちに大きな建物が目に入った。窓がいくつもあり壁の外側に看板が掛けられており冒険者ギルドアルフィオレ支部と書かれていた。

緊張した面持ちで僕は冒険者ギルドの入り口に立ち中をのぞく。僕と同じ年ぐらいの少年が依頼書が張られてる掲示板を凝視し、自分のレベルで受けられる依頼か仲間と相談したり、やや年上の三人の冒険者が受付で何やら言い争っていたりと僕には全く関わりのない世界だが物語の中に入ったかのようで僕は少し憧れた。ボウッと見てるとフィーナ姉に肩を叩かれる。


「カイル君、ボゥッとしてたら邪魔になるよ。早く入ろうよ」


フィーナ姉に急かされ僕は中に入る。


「報告ってどこですればいいのかな」


「あそこの受付だと思うよ」


フィーナ姉が指差す。二人の受付が下り、一人の方には列をなしている。受付が女性のようだ。露出の高い服を着ている為に男性の冒険者が列を作っているようである。僕は興味がなかったので隣の男性の受付に向かう。受付というよりは山賊、盗賊と呼ぶにふさわしい厳つい顔をした大男が僕とフィーナ姉の顔を一瞥する。


「……何か様か?」


「何か様かって……」


受付の大男に睨まれ僕は声が出ない。そんな僕の代わりにフィーネ姉が話してくれた。


「私たちが住んでいる村から数時間言った所にある森でコブリンの巣を発見しました」


大男の眉がピクリと動いた。


「それはどこだ? ちょっと待ってろ。今地図を持ってくるから出来るだけ正確に教えてくれ」


大男が奥に引っ込みしばらくしたら戻ってきてアルフィオレ近辺の地図を広げる。


「私たちが住んでいる村がここで、コブリンの巣があった森がここです……」


フィーナ姉が受付の大男と話している間僕は手持ちぶさになり、それとなくギルド内をうろつく。ギルド内は依頼書を張り付けてある掲示板の他に、軽食やお酒が飲めるスペースがあった。そこではまだ昼間というのに酒を飲んでいる三人の冒険者がいた。先程受付で騒いでいた冒険者だった。僕は呆れながらジロジロと見てしまい冒険者の一人と目が合ってしまう。冒険者の一人がふらふらした足取りで僕に向かってくる。


「オイ、テメー……何見ていやがる……依頼に失敗した俺たちを嘲笑っていやがるのか! アアン! 舐めやがって!!」


冒険者が僕の胸ぐらを掴んできた。冒険者を名乗るだけあって酔っているとはいえ凄い力だった。













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