僕と怨念VSフィーナ姉、戦う覚悟を決める
フィーナ姉とアルジュナさんは僕をマジマジと見つめるが違和感が漠然としている為はっきりという事が出来ないようだ。難しい顔をしている二人。
「……まあよい。とりあえず置いておくとして……フィーナ、メシは出来たのか?」
「出来たんですが……一人分無駄になっちゃいましたね」
フィーナ姉が僕の隣りで寝ているエルヴィラさんを見る。
「何というか申し訳ないです……」
「ウム、もう一人分、消化の良い食事が無駄になったな」
アルジュナさんが確認するように嫌味を言う。僕の悔しそうな顔にアルジュナさんがほくそ笑む。
「アルジュナ様! カイル君は出来る事を一生懸命やったんですですから……イジメちゃダメですよ。そういう子はご飯抜きです」
「いや、ワシ子どもじゃないし。ウン百歳年上の神さまじゃよ」
「カイル君をイジメる人のどこに神の威厳があるというのですか。神様と認めて欲しいのでしたらもっとちゃんとして下さい」
「ワシ……神じゃモン」
フィーナ姉がアルジュナさんをやり込めていた。僕は表面上では笑っていたが内面ではエルヴィラを殺す機会を伺っていた。
(フィーナネエモアルジュナサンモツヨサガジンジョウジャナイ。エルヴィラヲコロスナラドチラカヒトリハウゴキヲフウジナイト……)
(フィーナとか言う方は何とかなる。力が弱っていても神を名乗る方は手を考えないと……)
(チャンスハスグニクル、ソレヲマトウ)
「……カイル、どうしたボウッとしおって?」
「カイル君、熱でもあるの?」
フィーナ姉がおでこを僕のおでこに引っ付ける。
「ウーン……平熱だね」
「やめてよ……フィーナ姉」
僕は勤めて冷静にフィーナ姉を引きはがす。その態度にフィーナ姉はまた不審な顔をする。また違和感を感じているようだ。僕は誤魔化すように上半身を勢いよく起こす。
「さあさあ、お話はそこまで! 僕、お腹がすいてるんだ! フィーナ姉、早くご飯食べさせて!」
「ウ、ウン」
僕の勢いに驚きながらもフィーナ姉はその場を離れ、食器に料理を持ってこちらに持ってきてくれた。僕は食器を受けとって料理をがっつく。
「フム、ワシも貰おうかの?」
「アルジュナ様はご自分で?」
「冷たいのう、もって来てくれてもよかろうて」
ぶつぶつ言いながらアルジュナさんがその場を離れる。それを見送るフィーナ姉。二人の視線が僕から離れた。これをチャンスと僕の中のはエルヴィラの首に手を伸ばす。僕はそれを止めた。
(ダメダッ!! イマハコウゲキスルナ、チャンスジャナイ!!)
(なら、いつ行う?)
(モウスコシデカナラズチャンスガクル。ソレマデマテ)
僕の説得に僕の中にいるものは手を止める。殺意の衝動を必死に抑える。
「カイル君!?」
険しい顔になってる僕をフィーナ姉が見とがめる。
「フィーナ姉、大丈夫だから……」
僕はフィーナ姉に怪しまれない様笑顔を見せる。
「ンー……ご飯食べたら今日はもう寝ちゃいなさい。焚火はこっちに持ってくるし、火の番はお姉ちゃんとアルジュナ様で見てるから」
「頼んでいいかな」
「まあ、当然じゃな」
自分よりも大きい食器とスプーンを周りに浮かせたアルジュナさんがこちらへやってきた。
「ワシの知らない魔法を使ってエルヴィラを助けたのじゃからどういう反動があるか分からんしな。休める時に休んでおけ。最初はフィーナが火の番をしておれ。数時間したらワシが代わるでな」
「アルジュナさんはどこで休むんですか?」
「ん? ワシは石像(仮)に戻るよ。ワシはかつてお主に体をまさぐられた事があるでのう。無防備に体を晒しとったらどんな目にあうか分からんわい」
石像の本体の氣を探っていた時の事を言われ僕はぐうの音が出ない。
「……所でアルジュナ様は休む必要があるんですか?」
フィーナ姉がアルジュナさんに質問する。仮にも神を名乗るのだから休息や食事が必要なのかというのは当然の疑問だ。
「本来は必要ないわな。生前の姿を取っておるだけで肉体はないのじゃから疲れたり腹がすいたりはしとらんし……まあ、気分じゃよ、気分。生前の事をやっとると気分がいいんじゃよ」
アルジュナさんが笑いながら浮かしていたスプーンを起用に操り料理を掬い口に運ぶ。
「ウム、うまいぞ。フィーナ腕を上げたの……」
体がないというのなら口に運んだ食事はどこに消えているのだろうとどうでもいいことを考えてしまう。食事が終わるとアルジュナさんが欠伸した。
「腹が満たされたら今度は眠いんですか。子供みたいですね」
フィーナ姉がくすくす笑う。
「目ざとい奴よ……別にええじゃろう食ったら寝る、当たり前の行動じゃろうが」
「本当に子供ですね」
「ウルサイ!! ともかくワシが先に休む、数時間したらワシを呼べ……まったくワシを子ども扱いしおって。腐っても神じゃぞ……」
アルジュナさんがブツブツ言いながらフィーナ姉のポシェットの中にある石像(仮)に戻った。
「アルジュナさん、お休みなさい……」
僕は思った。ようやく来た、チャンス到来だ。この時僕はどういう表情をしていたが分からない。フィーナ姉が恐ろしい物を見たという表情をしている所を見ると僕は相当邪悪な顔をしていたのだろう。僕はすかさず、黒い靄を放出する。フィーナ姉ではなくフィーネ姉の持っている石像(仮)が目的だった。僕の放った黒い靄は石像(仮)を包み込む。
「ヌッ、何じゃこれは!? クッ、離さんか?」
石像(仮)からアルジュナさんの悲痛な声が聞こえた。
「今のアルジュナさんでは僕たちの力をはねのける事は出来ませんよ……大人しくしててください」
「カイル君、何をしたの!?」
「フィーナ姉も抵抗しないでね。僕がこの女を殺すまでは……」
僕は隣で寝ているエルヴィラの首に手をかけ、力を籠めて首を絞める。
「カイル君……」
「今のカイルに何をいっても無駄じゃ!! カイルは怨念に憑りつかれておる!!」
「怨念!?」
「あの洞窟で殺された女性たちの怨念じゃ。おかしいと思う場面が色々あったのに気づけなんだとは……不覚!!」
「アルジュナ様、どうにか出来ないんですか!?」
「外に出れれば何とか出来るんじゃが……こ奴らの怨念は……強い!! 弱まったとはいえ神であるワシが振り払う事が出来ん!! フィーナ、カイルを止めよ、このままじゃ本当に……エルヴィラを殺すぞ!!」
アルジュナさんの言葉にフィーナ姉が動く。エルヴィラの首を絞めている僕の手を掴み引きはがそうとする。
「何、この力!?」
「フィーナ姉の力でも僕たち全員の力には適わないよ。お願いだから大人しくしてて。すぐ殺すから……」
フィーナ姉は手を引きはがす事を諦め、別の場所を狙う。僕の手首を掴み全力で締め付ける。骨がミシミシと軋む。もう少し力が籠められれば手首の骨が折れるだろう。そうなる前に僕は手を離した。僕は全身から黒い靄―――怨念の塊をフィーネ姉に向かって放出した。フィーネ姉が手を離し両腕をクロスして攻撃を防御するが防御しきれず後方に吹っ飛ばされる。
「……頼むよ、フィーナ姉、大人しくしててよ」
「ダメだよ、カイル君……カイル君が人を殺すなんてお姉ちゃんが許さない!! それは簡単にやっちゃいけないし、誰かに唆されてやってはいけない事なんだよ。カイル君本人がやりたい事じゃないでしょ!! 人を殺すなんて……」
フィーナ姉の言葉に僕の心はずきりと痛んだが怨念の塊に覆われ痛くなくなった。
「エルヴィラを殺すにはまずフィーナ姉を何とかしなくちゃね……」
僕の体から放出された怨念がどくろを巻き体の各所を守る。
「カイル君……」
フィーナ姉が筒うな顔になるが一瞬だった。四つん這いになりこちらを見る。その表情は威嚇をする獣そのものだった。フィーネ姉は僕たちと戦う覚悟を決めた様だった。




