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僕VS怨霊 心の世界で思わぬ援軍

フィーナ姉は四肢に力を溜める。そして力を解放した。その場からフィーナ姉の姿が消えた。咄嗟に僕たちは怨念の壁を造り全方位を守る。次の瞬間、僕の右横から凄まじい衝撃が襲う。衝撃により僕の体が吹っ飛ばされエルヴィラから距離を取らされた。


「しまった!!」


さらに空中に浮いた状態でフィーナ姉が連続攻撃を行い最後に地面に叩きつけられた。


(フィーネ姉、本気だな……)


僕たちは何事もなかった様に平然と起き上がる。逆にフィーナ姉の拳やメイド服の膝の部分が血で滲んでいた。咄嗟に貼った怨念の壁が障壁となりフィーナ姉の攻撃を全て防いだのだ。渾身の力で怨念の壁に打撃を加えたフィーネ姉は壁を破る事が出来ずダメージを負う結果になった。


「フィーネ姉の攻撃は僕たちには通らない……お願いだからもうやめてよ」


僕の悲痛な声にフィーナ姉は首を横に振った。


「カイル君に人を殺させない。カイル君こそ目を覚まして! エルヴィラさんを助けるんでしょ。怨念なんかに負けないで!!」


「ダメなんだよ、フィーナ姉。僕たちが生きる事が出来なかったのにアイツ一人が生き残るなんて許せない。そいつも殺して僕たちの仲間にしないと……」


「カイル君……」


迷っているフィーナ姉に石像(仮)に封じられたアルジュナさんが声を上げる。


「フィーナ。今のカイルに何を言っても無駄じゃ。カイルと怨霊は半ば融合しておる」


「怨念と融合!? 何とか出来ないんですか!?」


「コブリンどもが殺した者たちの怨念が強すぎる。今のワシではどうにも出来ん。エルヴィラを連れて逃げるよりない」


それしかないと判断したフィーナ姉があるヴィラに向かって走る。


「そうはさせないよ……」


僕たちは怨念を幾数もの鞭のように伸ばしフィーナ姉を追跡する。怨念の鞭の幾つかをフィーナ姉は躱すがいつまでも避けられるはずがなく怨念の鞭の一つがフィーナ姉の腕に巻き付いた。力で引きちぎろうとフィーナ姉が動きを止めたがその一瞬で左腕と両足を捕え拘束する。拘束されたフィーネ姉の元に僕は歩く。


「カイル君……止めようよ、こんな事……」


涙ながらに言うフィーネ姉に僕の胸は少し痛む。どうすれば痛まなくなるのか? 僕たちはいい事を考えた。


「……フィーナ姉も僕たちの仲間になろうよ。フィーナ姉も僕たちと一緒になれば胸も痛まない、そうしよう」


僕たちはフィーナ姉に怨念を流し込む。だけどフィーネ姉の全身が薄い光の様なものに覆われ侵入する事が出来なかった。


「フィーナはワシの加護を受けておる!! 怨霊どもが侵入する事はかなわぬぞ!!」


「僕たちの拘束を解けない弱小神でもそういう事が出来るんですね? じゃあどうしようか?」


僕たちは考え、僕が練習しているある技術に目を止めた。


「フィーナ姉……ちょっと痛いだろうけど許してね」


僕はフィーナ姉の前に立つ。左手を前に伸ばし、掌をフィーネ姉の方に向ける。右掌を腰に添え左足を前に右足を後ろに置き、腰を落とす。吸う時にお腹を膨らませ、吐く時にお腹をへこます呼吸を行う。呼吸法を繰り返す事で僕の心の靄が少し晴れる。だからフィーナ姉と戦うこの状況がおかしい事に気付く。


「カイル君……」


「フィーナに何をするつもりじゃ、止めぬか!!」


二人の声に僕は動揺する。なのに体が止まらない。だから僕は叫んだ。


「フィーナ姉、逃げてっ!!」


僕が僅かな氣をフィーナ姉を拘束している怨念の鞭に流す。そうする事でフィーナ姉の拘束が弱まるフィーナ姉は力でもって拘束を解くが僕の動きは止まらない。

僕は左足を半歩踏み出す。それと同時に右足を左足に引き寄せるように踏み込む。左掌を腰に引き寄せ右縦拳で突く。僕が放った崩拳がフィーナ姉の腹部に吸い込まれる。だが、僕の拳が届く前にフィーナ姉は後方に飛び、僕の拳を避けた。

ホッとした僕の心に怨霊は働きかけまた僕を支配する。



僕の心の世界は怨霊たちであふれていた。その中で僕はもがいていた。もがく僕に暗闇が怨霊が張り付いていく。粘着性のある暗闇は僕の心をからめとっていく。


(クソッ! 僕の体は僕の物だ。お前らにこれ以上好き勝手にはさせない。早く出ていけ!!)


(そうはいかない……あの女は絶対殺さなければならない。お前の体でやらせてもらう。こうしてる間にも支配が進んでいる。無駄な抵抗はやめてお前の体を明け渡せ)


もがく度に体の自由が奪われ繭状になり動けなくなった。


(また支配されるのか……)


僕の心はまた暗闇の飲まれていった。だが、一条の光が暗闇を打ち破った。


(あきらめるな、カイル少年ッ!!)


僕の目の目に現れた人物は、僕と同じ黒髪黒目、身長も僕より頭二つは高い、筋骨隆々の大男だった。その人は無骨な笑顔を見せる。この怨霊だらけの暗闇の世界で見せられた笑顔は太陽とも思えた。その人物が放つ不可視の力は怨霊の繭を打ち破り、怨霊近づけさせない。こんな数の怨霊に一人で対抗できるこの男性に僕は驚かずにはいられなかった。


(……あなたは?)


(君に仙道と形意拳の知識を与えたものだと言えば分かるか?)


(!? じゃあ、あなたがクサカマサトさん?)


(私の事は後だ。それよりこの状況を何とかしなければならないな)


(こんな数の怨霊にどう対処するんですか?)


(外にいるフィーナ少女に協力してもらう)


(フィーナ姉に!?)


(まあ、任せろ。悪いようにはしないから)


そう言って久坂さんは場違いな、だけど陽気な高笑いをした。
















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