表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/46

妖精さん登場。助けを求められ……。

ボンッという音と共に火柱が立ち上った。フィーナ姉の悲鳴が聞こえた。


「フィーナ姉!?」


火柱が上った方向を見ると、フィーナ姉とアルジュナさんが言い争っていた。


「アルジュナさま、何するんですか!?」


「何するって……お主が火を出してほしいと言うたんじゃろうが」


「料理するのにあんな大きな火が必要ですか!?」


「ワシ、細かいコントロール苦手なんじゃ」


「神さまは大雑把でいけませんね」


「何じゃと、お主、神を便利な道具が何かと思うとらんか? 大体お主……」


フィーナ姉とアルジュナさんの言い争いはしばらく続きそうだ。夕飯の時間も大幅に遅れるだろう。

僕は隣で横になっているエルフの少女を見る。エルフの少女の顔はとても整っていてる。万年雪のような真っ白な肌、金色の水のような滑らかな金髪、創造と美の神様が本当にいるのならこういう人を作る為に存在するのだろうと思ってしまう。エルフの少女には生命の脈動が感じられず僕は不安になる。少女の顔に耳を近づけ僅かな吐息を聞こえ、胸元を見ると僅かに上下しているのを見て生きている事を確認しホッとする。ふと二つの視線に気づく。その視線の方向にいるのはフィーナ姉とアルジュナさんだった。


「カイル君、今何しようとしたのかな?」


フィーナ姉が笑っているがこれは怖い笑顔だ。対するアルジュナさんは苦虫を噛み潰したような顔をする。


「カイル、男女の事についての知識は低い様だが何となくは分かるのか? だとするとヤバいぞ、カイルの好みはああいうエルフの娘みたいなキレイ系かもしれんぞ?」


「何、言ってるんですか!?」


今度は僕の事で口げんかが始まった。僕が入り込む余地はない様だ……修行でもしよう。

僕は両手を擦り手を放す。手と手の間の空間に強い圧力を感じる。


(氣の感覚化は大丈夫だ)


氣の感覚化―――これが修行を始める時の儀式の様なものになっている。続いてそこら辺の木や石の氣を感じ、それから自分の体に氣を通す。ありとあらゆるものは生命エネルギーである氣が通っており、それは木であろうと石であろうと変わらない。この氣は通り道を通って循環している。普段は無意識に循環しているがちゃんと意識し、強めた氣を通す事でその通り道が強化される。舗装故事を行うようなものである。強化されるという事は道の母体となる体も強化される事に、つまり体が頑強になっていく。実際、修行を行ってから僕の体は健康になっていき、最弱の怪物とはいえコブリンと戦う事が出来るまでになった。この修行法は小周天こしゅうてんと呼ばれている。


僕はいずれ、ワルトハイム家から独立しようと思っている。その時はフィーナ姉と一緒にフィーナ姉の隣りに立っていられる人間でいたい。その為にも僕は修行に邁進する。


僕は軽く胡坐をかく。そして丹田に意識を集中する。文息と呼ばれる呼吸法も同時に行うと下腹に圧力感を感じる。最初はカッと熱い感覚だったのだが最近は圧力感に代わってきていた。この感覚を維持しながら意識でもって氣を動かす。丹田から股間、尾てい骨と動かす。この際、呼吸法を文息から武息という呼吸法に切り替え、氣を強化しながら氣を移動する。尾てい骨から背中、頭上に移動すると妙な現象が起こる。


自分の体が大きくなったような感じがするのである。どこまでも体が広がって行くような感覚。時々こういう事が起こる。そうなると感覚が鋭敏になり色々な事が分かる様にある。


風が頬を撫でる……草花が風で揺れる音……地面を這う虫たち……暗闇からこちらを窺う獣の気配……鼻孔をくすぐる料理の匂い……色々な情報が僕には感じられてた。


(向こうにいるのはフィーナ姉とアルジュナさん、二人とも氣が強い。見た目はともかくアルジュナさんは神様を名乗るだけあってより強力だ。それと言い合えるフィーナ姉は凄いな……僕の隣りにいるエルフの少女は……圧倒的に氣が弱い……少女から放たれる氣は所々が薄くなっていて黒ずんでいる……何で黒ずんていると分かるんだろう? 僕、目をつぶっているよね?)


さらにエルフの少女に意識を向けると妙な音に気付く。


(何だ? エルフの少女の傍にある気配は?)


エルフの少女に寄り添うように漂っている気配が一つあった。僕はその気配に意識を集中した。その気配は僕の意識の集中に気が付いたのかこちらに近づいてきた。そして僕の額にくっついた。


(あなたは誰?)


鈴が鳴り響いたような声が僕の頭に直接流れ込んできた。


(ワッ! 喋った!?)


僕は声に出さず、心の中で驚く。集中が解けそうにあるが何とか状態を維持しする。それが伝わったのかその気配から驚いたような感じが伝わってくる。


(やっぱりわかるんだ。人には分からないはずなのに?)


(君は一体何者?)


(あたし? あたしはリリオ、妖精だよ)


何でだろう、ちっさい女の子が自慢げに胸を張る映像が頭に浮かぶ。


(妖精って小さくて背中に羽が生えているあの妖精?)


(そうそう)


(その妖精さん……リリオはどうして彼女に寄り添っているんだ?)


(そうだった! お願い! 彼女を……エルヴィラを助けて!!)


(そうか、この子、エルヴィラって言うんだ……助けてあげたいけど僕じゃ出来ないよ。魔法とか使えないし……)


(魔法じゃなくて……その不思議な力で……あたしに気づいたその力でエルヴィラを助けてあげて!!)


(不思議な力って……氣の事?)


(氣っていうの、それ? よく分からないけどその力にエルヴィラは反応してる!!)


(本当か、それ!?)


(その力があればエルヴィラは目を覚ますかもしれない! だから……)


リリオの必死さが伝わってがどうするべきか迷う。仙道というこの世界ものとは系統の違う魔法を学ぶ事により力を身につけつつあるけど、まだ数ヵ月しかたっていない。ようやく氣を体の前面、後面に回せるようになっただけで人に、ましてやエルフに氣を当てたらどうなるか分からない。氣に反応しているというがそれは悪い反応かもしれない。どうなるか分からない事はやめるべきだと思う。

だけど今まで助けられるだけの人間だった僕が今誰かに助けて欲しいと言われている。助けられた分を誰かに返す、これは人として当たり前の事ではないだろうか。そう考えて僕は覚悟を決めた。


(分かった……やってみる。だけど危ないと判断したらすぐやめるから……それでいい?)


(いい! いい! ありがとう!!)


喜びの感情が伝わってくる。僕の頭の周りをくるくる回っているのはご愛敬だろう。


(じゃあ、一旦、小周天を終わらせてフィーナ姉にも話してからやってみる)


(ありがとう……よろしくお願いします)


リリオがの気配が僕から離れてエルヴィラの元に戻る。僕は頭上の氣を胸に、それから丹田に戻す。丹田に降ろした氣をゆっくりと消し、フウッと呼気を吐き目を開いた。眼前には僕の顔をマジマジ見つめるフィーナ姉とアルジュナさんの顔があった、僕は悲鳴を上げて飛びのいた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ