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僕VS三匹のコブリン、力を思い出す。

疾走したフィーナ姉は跳躍、一条の矢の如く、六本足の熊に向かって飛び、蹴りを食らわした。前かがみになっていた熊立ち上がりは四本の前足をクロスしてフィーナ姉の飛び蹴りを受け止める。しばらく拮抗していたが熊が後ろに下がった。


(フィーナ姉の方が明らかに体重が軽いよね!? 後退させるってあの足にはどれだけの力があるの!?)


時々膝枕をしてくれたあの足にそれ程の力がるとは……。


(今後はあの足に敬意を払おう……)


そう考えた時、僕の頭がズキリと痛み、ある言葉が浮かび上がった。


(ラ〇ダー〇ック? 何それ? ライ〇ーって誰?)


最近状況に応じて久坂さんの記憶から勝手に言葉が浮かび上がる事がよくある。この前も『メイド萌え』なる言葉が浮かび上がり調べてみてがっくり来たことがある。このラ〇ダー〇ックもあまりいい意味ではないのだろう。僕は考えるのを止め、フィーナ姉、アルジュナさんVS六本足の熊の戦いを観戦する。


フィーナ姉が近接戦闘を続けている間、アルジュナさんが呪文を唱えていた。


「我らを守護する十二が精霊よ! 汝が欠片に従い疾く現れよ! 鋭き歯を持ち、素早く動くもの、絶えず増える者、汝は鼠、炎を纏いて現れよ!」


唱え終わるとアルジュナさんの背後に炎を身に纏った鼠が九匹空中に現れた。


「フィーナ下がれ!」


拘束で移動しながら攻撃を繰り返していたフィーナ姉が後方に下がる、同時に九匹の炎の鼠が六本時の熊に殺到し爆発を引き起こす。爆炎により跡形もなく消し飛んだかと思ったら、雄叫びによる衝撃波で爆炎を吹き飛ばす。六本足の熊は所所焦げているがまだ、死んではいなかった。雄叫びを上げながらフィーナ姉とアルジュナさんに突進してくる。攻撃の意志が少しも衰えていない。獣の生命力が魔力を得たらこれほど厄介な存在なのかと思うがフィーナ姉とアルジュナさんは余裕顔だ。二人がタッグを組めば何も心配する事はないだろう。そう思い安心してしまったから僕は後ろから足音もなく近づいてきた者がいるのに気が付く事かなかった。後頭部にドンという衝撃と痛みを感じた後、目の前が真っ暗になった。



水滴が落ちる音が断続的に聞こえた。その音に僕は目を開く。目の前に壁があり僕は壁に押し付けられているような状態になっているのが分かり腕の力を使って壁から離れる。頭にズキンと痛みが走り僕は頭を押さえる、たんこぶが出来ていた。


「ここは……どこだろう?」


キョロキョロと周囲を見渡し、僕は壁に押し付けらえたのではない、床に倒れていたのが分かった。

フィーナ姉とアルジュナさんが六本足の熊との闘いを観戦していた。その後、頭に痛みと衝撃が走ったのは覚えているがそこから先は覚えていなかった。僕は何者かに襲われここに捕らえられたのだろう。どうして捕らえられたのか分からないがここから早く逃げだしてフィーナ姉と合流した方が良さそうだ。僕は周りを調べてみる。

部屋全体は薄暗く、そこそこ広い、四方を囲むむき出しの岩は頑丈そうで僕の力では壊せそうもない。自然の洞窟なのだろうか? 床は何と言うかガラクタの山だった。剣や槍、鎧に兜、それから食料品、その他もろもろが地べたにまんま置かれており足場がほとんどない。これらは僕を捕えた者の戦利品なのだろうか? 僕も捕えた何者かの戦利品の一つなのだろうか? ムッとしながら僕はこの部屋の唯一の出口であるドアに向かう。ガラクタをよけながら進むと何か柔らかい物を踏んでしまう。ガラクタに埋もれて分からなかった。その柔らかい物は呻き声をあげた。僕はガラクタをどかしその人を見つけた。


そこに倒れていたのは裸の女性だった。金髪碧眼、目鼻立ちの整った美少女、年の頃は十代後半だろう。表情がなく目は虚ろ。体中に裂傷があり、体からひどい悪臭がする。


「大丈夫ですか?」


僕は尋ねるが少女から応答がない。目を開いているが何も映していない虚ろな目に僕はゾッとする。僕の周りにいる人には目に命の光が灯っている、その光がないと人の目はこうも作り物めいたものになるのかと僕は悲しくなる。だが感傷に浸っている暇はなかった。ドアの向こうから物音が聞こえたのだ。複数の足音、それから子供のような甲高い声。その声は人の言葉で喋ってはいなかった。


僕は横になり体の上にガラクタを置き身を隠す。ドアが開き何者かがこの部屋に入ってきた。僕はガラクタの隙間から入って来た者を見る。そこにいたのは人ではなかった。子供ぐらいの低身長、緑色の肌、腰には簡素な布を巻いており、手には棍棒を持っている。僕はその侵入者に見覚えがあった。昔話に必ずと言っていい程出てくる怪物、コブリンだった。子供ぐらいの身長で力も知能も弱い最弱の怪物。子供ぐらいの知能しかないとはいえ己が弱いことを理解し群れを成して行動し人を襲う恐ろしい怪物。ちなみにコブリンは魔獣とは別のもので亜人種に分類されている。


この部屋に入ってきた三匹のコブリンは何かを探していた。キョロキョロと周囲を見渡し鼻を鳴らす。コブリンの一匹が二匹に何かを言ったかと思うと頭を叩く。何かを怒鳴りつけた後、溜め息を付き、倒れている少女の上に馬乗りにある。その時虚ろだった少女の瞳に僅かだが光が戻る。少女は馬乗りになっているコブリンに掠れた声を出して抵抗する。


「ヤ…メ…テ…」


少女の抵抗はコブリンの嗜虐心を刺激するのかゲヒた笑い声をあげ、両足を持ち上げ、股を開く。微かな悲鳴の後、僕の方に首を傾け唇を動かした、タスケテと。これを見た僕は自分の意志とは関係なく体が動いた。僕は起き上がり、体を隠していたガラクタを手に取り思いっ切り投げつけた。少女に馬乗りになっていたコブリンは対応出来すガラクタをもろに食らい目を回している。他の二匹のコブリンは反応し、僕のガラクタの投擲を見事に躱し、接近した。コブリンは手に持っていた棍棒で僕を殴りつけてくる。僕は痛みに怯み身を縮める。子供ぐらいの力がないとはいえ棍棒で叩かれるのはかなり痛い。何とかしなければ、そう思うのだけど体がうまく動ず、されるがままになる。


僕は体の痛みで頭がぼんやりし、関係のない光景が浮かんでくる。

父の命により離れに追いやられた。そこにフィーナ姉が来て僕の世話をしてくれるようになった。一人では生きる事も出来ない僕の家族になってくれた大切な人。そこにアルジュナさんが現れて二人でいるより賑やかになった。仙道や形意拳の修行をやってより体が少し頑強になった。


(そうだ、僕にはこれがある!!)


僕の頭の中に何故かある久坂将人という人の記憶、その記憶の中にあった異世界の魔法、仙道と武術、形意拳の知識。僕はこれを元に修行して力を身に着けた。これを今、使わない手はない。

僕の意識は急速に現実に戻される。僕はコブリンの一匹に体当たりをし、攻撃を逃れる。コブリン二匹に向き直ると僕は左掌を目の高さに置き前に伸ばす。右掌を開き腰に添える。左足を前に出し右足は後ろに置き腰を落とす。形意拳の基本的な構え三体式だった。形意拳は必ずこの構えから始まる。それ故『万法|(全ての技法)は三体式より生まれる』という言葉があるほどである。


三体式の構えを取る事により頭に登っていた氣が丹田に落ち、力が満ちてくる。そんな僕を見てもコブリンたちは怯む事はなかった。こんなひ弱な人間に何が出来るのかと思っているのだろう。


(僕の体には氣という魔力とは違う道の力が満ち満ちている、そして形意拳の技がある。さっきとは明らかに違うのだという事を見せてやる!!)


僕は呼気を吐きながら二匹のコブリンを睨みつけた。






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