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死の運命にある女性2

今回はほっこりする内容にしました。ほぼレシーとリース公爵夫人しか出て来ません。

<一日目>



「あら、早速ありがとう。お茶を……」



「私が淹れますね」



 昨日、リース公爵夫人と医療所に行き毎日部屋に行くと約束した。そして、早速来てみると、昨日とはあまり変わっていないが、痩せているリース公爵夫人がベッドで横になっていた。



 ベッドから起きてお茶を出そうとするので、急いで止める。ティオ公爵子息もだが、リース公爵夫人も、お人好しだ。



 リース公爵夫人から教えてもらった茶葉を見ると、他国でとることのできる高級品だ。流石公爵夫人。



「どうかしら。お口にあったかしら?」



「はい。甘いくてスッキリしていて、飲みやすいですね」



「これね、夫が病気の私でも飲めるようにって、他国に行って選んでくれたの。私って、紅茶が大好きだから」



 そう言いながら笑うリース公爵夫人の表情からは、パージ公爵を愛していて、愛されているということが伝わってくる。少し、羨ましいなと思ってしまう。



「そうだ。恋バナしましょう。レシーさんは誰か好きな人はいないの?」



 リース公爵夫人の言ったことに少しむせてしまった。いえない。あなたの息子が好きなんですなんて。



「い、いますけど、言えません……」



「あら、そういうことを言われると余計気になるわ。ちなみにいつ出会ったの?」



「最近ですね」



「きゃ〜!」



 はしゃいでいるリース公爵夫人は、まるで恋する乙女という感じだ。元気が出たようでよかった。



「お、奥様と当主様の出会いは……」



「あら、恥ずかしいわ〜!でもそうね〜、今年で結婚四十周年ね」



 四十周年となると、若い頃に結婚したのか。そういえば、リース公爵夫人も政略結婚で結婚させられたとか。なら、出会いはそれよりももっと前かもしれないな。





<二日目>



「失礼します」



「いらっしゃい!って、ティオも来たの?」



「今日は仕事が少なかったからね」



 二日目。今日はティオ小公爵とリース公爵夫人の部屋に来た。私は入るとすぐに、昨日と同じようにお茶を淹れる。



「おや、この紅茶、母上用だったのか」



「あら、ティオ知ってたの?」



「これをもらうために他国と交渉したんだよ。父上が実戦だと」



 厳しそうに思えるが、パージ公爵なりの思いやりなのだろう。息子が手に入れたお茶を飲んで欲しくて頼んだ。私にはそう感じる。

 ティオ小公爵やリース公爵夫人も感じたのか、嬉しそうな、ほっこりとした顔だ。



「やっぱりレシーさんの淹れた紅茶は美味しいわね」



「当主様がお選びになった茶葉がいいのかと思いますが」



「いいえ。紅茶というのは茶葉が良くても淹れ方が悪いと、質が落ちてしまうものよ」



 私たちにとっては紅茶など使う機会が滅多にない。たまに貴族が追加の報酬としてくれるが、私とボス以外、まともに淹れられないので、よく私が余っている紅茶を振る舞っていた。



「俺も昔は母上に紅茶の淹れ方を伝授されたものだ。厳しかったがな」



「あら、パージとティオは紅茶を淹れるのが下手なんですもの」



 ティオ小公爵はパージ公爵と似ているところが多いのだろうか。それにしても、一回だけでもティオ小公爵が淹れた紅茶を飲んでみたいものだ。



「っと、俺はそろそろ仕事に行かなくては」



「それならレシーさんも行かなくてはね」



「失礼致します」



 私は一礼をし、部屋を出た。リース公爵夫人は扉が閉まり姿が見えなくなるまで、ずっと微笑みながら手を振っていた。





<3日目>



「奥様。入ってもよろしいでしょうか」



「いいわよ」



 リース公爵夫人の了承を貰い中に入ると、部屋の中には椅子に座って本を読んでいたであろうリース公爵夫人と、侍女がいた。



「あ、レシーさんはまだ会ったことなかったわね。彼女は私の専属侍女のメリン。と言っても代理なのだけれど。

今、私の専属侍女は体調を崩して休暇をとっているの」



 そう言ってリース公爵夫人から紹介された専属侍女のメリンさんは、公爵夫人に対して軽んじているような視線を向けている。代理だからだろうか。それにしては態度が悪すぎるが。



「……初めまして、レシーさん。メリンと申します」



「ティオ様の専属護衛となったレシーです」



 一応と思い礼をしたが、メリンさんは礼もしずに、明らかに私を見下している。

 こういう目は幾度となく見てきた。依頼主と直にあった時に「こんな小汚くて、しかも小娘にできるのか」と。今のメリンさんの表情はその依頼主と同じだ。



「メリンは元々少し離れたところの子爵家のご令嬢でね、お茶会ではメリンのお母様とよく話していたの」



「そうな——



「そういえば、このようなところで失礼ですが母からお茶会へのお誘いの手紙を預かっております」



 私が話している途中に割り込んで、嫌々しくリース公爵夫人に手紙を渡した。だが、少し納得がいった。

 貴族の令嬢なら私のような平民に対して嫌悪感を覚えるのはあることだろう。公爵家の人達は全員身分を気にせずに接してくれているため、少し感覚が麻痺していただろうか。



「................そう.........。それなら今日中にお返しの手紙を書いておくわ。レシーさんはそろそろお仕事の時間じゃ

ないかしら」



「そうですね。それでは失礼致します」



 リース公爵夫人はメリンさんの失礼な態度に、口には出さないも何か思っているみたいだ。さすが、公爵家夫人。





<5日目>



「あ、レシーさん。おはようございます」



「おはようございます。今日はメリンさんがご一緒ではないのですね」



 今日は前と同じようにベッドに横たわっているリース公爵夫人がいた。私がメリンさんの話をすると一瞬顔を曇らせる。あの後、どうなったのだろうか。



「昨日はメリンがごめんなさいね。一応、あの後注意はしたのだけれど、若い子によくあるもので、軽く流されてしまったわ。本当にごめんなさい」



「いえ!奥様が悪いということではありません!それに、貴族の令嬢様方からしたら、私は平民ですのでよくあることです」



「......それをいつか、当たり前じゃなくしたいのだけれど」



 リース公爵夫人のその気持ちは嬉しいが、人というのは必ず争うもの。それに、私は暗殺者だ。人を殺したことはないが、それでも差別されるべき人間。



「公爵家にはティオがいるから、玉の輿を狙って侍女になる子が多いのよ。メリンは他の子よりは信頼できるのだけれど、もしかしたらティオのことを狙っているかもしれないわね」



「.........失礼ですが、メリンさんの奥様に対する態度は公爵家の、それも公爵夫人専属侍女のするようなものではないと思いますが」



「そうね。けれど、今の私は病弱な公爵夫人だから、公爵家に嫁ごうとする令嬢達からしたら邪魔なのよ」



 リース公爵夫人が病気にかかったのは3年前。それからメリンさんのようなことがたくさんあったのだろう。



「まぁ、私はティオが認めた相手なら喜んで迎え入れるわ!パージもティオには無理に婚約者を作らせようとしてないし」



 パージ公爵はティオ小公爵が婚約者を作らなくても、後継はどこかの貴族から養子を取るのだろうか。そこら辺はわからないが、二人とも息子には幸せになってほしいという願いなのだろう。



「私的にはレシーさんが嫁いで欲しいと思っているのだけれど」



「ん゛!?そ、そんな......、ティオ様の事をお慕いしてはおりますが、身分差がありすぎます!.......あ」



 勢いで言ってしまった———。リース公爵夫人はなんだか予想通りという微笑みを浮かべている。好きな人の母親に認められていたとしても、私は身分差がありすぎる。



 そう、私とティオ小公爵では婚約など、夢のまた夢........。



「まぁ〜!やっぱり!?どこが好きになったの!?」



「そ、そろそろ時間なので失礼致します.......!」



 私がそういうとリース公爵夫人は「そう......」としょんぼりしたが、直ぐに笑顔になって「明日また聞かせてね!」と言ってきた。



 この場にメリンさんがいなくてよかった。






<7日目>



「し、失礼致します......」



「いらっしゃい。さぁさぁ、今日はティオに頼んでレシーさんは午前中は私の専属護衛よ!ゆっくり話を聞かせてち

ょうだい!」



 リース公爵夫人の言葉に私は驚きが隠せない。まさか、息子の護衛騎士の恋愛話を聞くためだけにそんな事を。私が入った時にはすでにテーブルには紅茶が用意されていた。



「それで、ティオのことが好きになったのはいつ?」



「2週間ぐらい前の狂獣討伐の時です」



「あぁ、あの日ね。全く、パージったらこんな可愛い子に狂獣討伐を任せるなんて!って思ったもの。しかも賊も出たんでしょう?」



 リース公爵夫人は頬を膨らませたり心配したり、失礼だが、まるで生き生きとした子供のような反応。それがリース公爵夫人らしさだと私は思うが。



「はい。その時にティオ様に私を賊から助けてもらい、その時にお慕いするように」



 自分で言っていて恥ずかしい。好きになった相手の母親に恋愛相談など、どれだけ肝がすわっていてもできない。



「ティオは幼い頃から剣術の訓練を受けてたのよね。そのせいで怪我だらけで、あと槍や弓はからっきしなのよ」



「武器は人を選びますからそれに、剣を振るっておるティオ様は、その、とてもかっこよかったです......」



「そうよね〜!パージもかっこいいのよ〜!」



 パージ公爵も剣を使えるのか。武の才能は昔騎士を目指していたリース公爵夫人の血かと思ったが、パージ公爵の血もあるのかもしれないな。



「奥様と当主様の出会いは.......」



「私とパージ?最初はパージの婚約者候補だったのよ。お茶会で出会ってね。それからパージに騎士を目指してるっ

て言ったら「応援している。夢を目指すのはいいことだ」って言われてね、この人なら夢を諦めてでも婚約していいかもって思ったのよ。公爵家の男性って全員女たらしよね」



「ふっ......」



 つい笑ってしまった。けれど、リース公爵夫人が夢を諦めて公爵夫人になった理由がわかる。最初出会った時は「夢を諦めていなかったら幸せになっていたかしら」と言っていたが、やはり誰よりも幸せそうな顔だ。



「公爵家の婚約者候補者は多そうですね」



「そうね。私の家は少し貧しかったから見下されることもあったわ。侯爵家の令嬢もいたし。怒涛の日々だったわ。けどね、婚約してから今まで、何度もパージになんで私と婚約したのか聞いてもはぐらかすのよ!酷いと思わない?」



「........確かに.......。けれど当主様は奥様を愛しておられるでしょうね」



「......そうね」



 婚約した理由を言わないということは、パージ公爵は恥ずかしくていえないのだろうか。少し気になるが深く追求したら大変なことになりそうなので、これ以上はやめておこう。



「それにしても、こんな可愛い子がそばにいるのにティオはなんとも思わないのかしら?ティオの好きな子っていうのも気になるし」



「私はこの想いは潜めておこうと思っております。身分が違いすぎますから。それに、ティオ様に想い人がおられるなら私はその恋を応援したいです」



「レシーさん。我慢することないのよ。もし告白して振られたなら私に言ってね?愚痴ぐらい聞けるから」



 告白した相手の母親に愚痴はどうかと思うが、リース公爵夫人は私の恋を応援してくれているみたいだ。まだ会って2週間ぐらいだというのに。



 本当、公爵家の人は優しい人ばかり。私のような「優しい暗殺者」には辛いところ。



「そういえば、レシーさんは今まで恋愛はしてこなかったの?」



「私は男性よりも強いので怖がれることが多く」



「勿体無い!こんな可愛くて優しい子なのに!」



 それからお昼までリース公爵夫人と楽しく話してから、ティオ小侯爵の護衛に戻った。


 ———その夜、リース公爵夫人の容態が変化した。

〜小ネタ〜

リース公爵夫人の部屋は、扉を開けて正面に窓とベッドがあります。そこから右に本棚と机、椅子。左には扉があり、そこは洗面所的なのです。

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