許されないという自覚のある恋
BKW大賞1に応募した作品、2エピソード目です。4月から来年の3月までに一作品を終わらせたいと思っていまして、応募しているこの作品を終わらせたいと思います。
ティオ・アキラス公爵令息の護衛を始めて一週間。
今のところ、何もない、普通の日常だ。
今日は、領地の視察に来ている。
領地といっても、公爵家の領地は広大だ。その中でも最も自然豊かな村、「ネイチャー」。
公爵家の領地の中では農作物の収穫量が一位だ。
そして、そんな土地に事件が起きたらしい。
「レシー。君はネイチャー村に来たことがあるかい?」
「いえ。一度、旅行できてみたいと思っていましたが……」
「ここは何度か来たことがあるのだが、ここの農作物は本当に美味しいんだ。収穫量だけでなく、質もいいから、王都の市場でも出回っている」
確か、王族の料理でも使われているとか。
一度、食べられるものなら食べてみたいな。
「そうなんですね。ところで、事件とはなんですか?」
「さぁ。僕も知らされていないんだ。父上から、事件が起きたとしか聞いていなくてな。ここで待っていれば、村長
がくる手筈だ」
ティオ公爵子息がそういった後に、少しだけ小太りの男性が走ってきた。
「ティオ様!お待たせいたしました!」
「久しぶりだな」
どうや、その小太りの男性がネイチャー村の村長らしい。
いかにも、農家という格好をしており、麦わら帽子を首にかけている。
「それで、事件とはなんだ?」
少し村の周りを歩いていると、ティオ公爵子息が村長に尋ねた。
先ほどから気になってた話題だ。
村長は少し、冷や汗をかいている。
「実は、狂獣が出たんです」
「狂獣だと!?」
狂獣とは、その名の通り狂暴な獣のことだ。
ただ、狂獣は少し違う。
普通の獣が暴れていても、余程のことがない限り、そこまで被害が出ない。
だが、狂獣となると話は別だ。
普通の獣とは違い、攻撃や速さが高くなる。
その代わり、現れるのは珍しいのだ。
今までも年に数十回程度で、しかも、大体が森の中で発見されることがある。
なので、こんな人が住む村で発見されることはごく稀なのだ。
「種類は?」
「猪です。被害は、男が一人怪我をした程度でした」
「今はどうしている?」
「さぁ。ただ、森の中にいるのは確かです」
ネイチャー村は北が森、南が湖に挟まれている。
森には、猪や熊など、様々な動物がおり、その肉や皮も質がいい。
そんな、多種多様の動物が住んでいるから、当然、森も広大だ。
「どこで現れたんだ?」
「森の西側で狩りをしている時に現れたみたいです。逃げる時も西側だったかと」
「西か……」
森の西側は川が通っており、洞窟や崖もある。
多分、洞窟の中に巣を作っているのだろう。
「詳しいことは、この中にいるやつに聞いてください」
そういって村長はどこかに行ってしまった。
着いたところは、村の医療所。
怪我をしたという男性が療養しているのだろう。
「あんたは、公爵家の人間か?」
「次期公爵、ティオ・アキラス様です」
扉を開けると、頭や腕に包帯を巻いた大柄の男性が現れた。
どうやら、彼が怪我をしたという男性のようだ。
「早速ですまないが、狂獣と出会った時、どのような感じだったか教えてくれないか?」
「あぁ。村長から、大体は聞いてるな?猪の狂獣だ。大きさは……、俺が両腕を広げたぐらいだ。力は、鉄の盾をへこますほどだ。それに、堅い。弓矢では跳ね返された」
「なるほど……。情報ありがとう。ゆっくり休んでくれ」
ティオ公爵子息はそういうと、医療所を出ていき、私もその後についていった。
それにしても、まぁまぁの大きさだな。これは、王都の方から騎士団を呼んだ方がいいんじゃないか?
狂獣は鳥でもそれなりの被害を出す。
「どうされます?今日中に王都から騎士団を呼びますか?」
「いや、父上からは今日中に片付けろとの命だ。すまないが、君の力を貸してもらうことになる」
「わかりました。私が、猪の狂獣、討伐しましょう」
狂獣の討伐は依頼でもたまに受けることがある。
それに、依頼の途中で、討伐から逃げてきただろう狂獣と鉢合わせることもあるしな。
「よし、では、森を探索するか」
「ティオ様はここでお待ちを……」
「大丈夫だ。俺だって子供の頃から鍛えてもらっている。並の騎士には勝てる強さだ」
「わかりました。ただし、私の後ろにいてください」
「あぁ」
「見つからないな」
「そうですね」
ティオ公爵子息と森を探し続けて一時間半ほど。
動物は見かけたり、狂獣がいたという痕跡は見つけたのだが、狂獣はいくら探しても見つけられない。
「少し休憩するか」
「近くに川があります。流れも緩やかですのでそこで休憩いたしましょう」
茂みを抜けると川があり、日の光が差し込んでいる。
ネイチャー村の水は、透明度が高くそのままでも飲めるほどだという。
「ここは気持ちいな……」
「はい。あれ………」
「どうした?」
「いえ、あの洞窟、地図にはなかったような気がしまして」
川の下流の方に深そうな洞窟がある。
ここの地図は事前に記憶していたが、地図にも村長からもあんな洞窟があるとは聞いていない。
ティオ公爵子息も気づいたみたいだ。
「確かにそうだな」
「もしかしたら、狂獣の巣かもしれませんね」
「情報通りの大きさだと、あれぐらいの大きさの穴、掘れてもおかしくないな」
あの大柄の男が両腕を広げたぐらいの大きさとだったら、あの穴ぐらい大きくても不思議ではない。
ただ、あそこが巣だとなるとそれなりに討伐には時間がかかりそうだ。
「あそこが巣となると討伐に時間がかかります」
「そうだな……」
「なので、ここに誘い出します」
「誘い出す?どうやって?」
「火を使うんです。狂獣と言っても、獣なので。火で攻撃というより、驚かす、という感じですね」
「なるほど」
「ただ、その代わりに暴れる可能性があります。なので、ティオ様はあそこに隠れておいてください」
私の任務はティオ公爵子息の護衛。
死なせるわけにはいかない。それなりに丈夫そうな木の影に隠れてもらう。
ティオ公爵子息が隠れられたのが分かったら、火を起こし、火のついた木を穴の中に投げ込む。
すると、数秒後に狂獣らしき大型の獣の咆哮が聞こえた。
そしてそのすぐ後に、穴から猪の狂獣が出てきた。
やはり、この穴を巣にしていたみたいだ。
猪は私に気づくと、ものすごいスピードで突進してきた。だが、直進なので簡単に避けられる。
そして狙い通り、後ろの岩に激突した。
私は猪の意識が朦朧としている隙を逃さずに剣を抜く。
弓矢が刺さらないほど硬いということなら、強くて速い攻撃を当てればいい。
猪に近づき、首を目掛けて剣を振り下ろす。
すると、首を切ることにことができ、猪はその場に倒れた。
「大丈夫か?怪我は?」
「ご心配なく。怪我はしておりません。ティオ様は大丈夫でしたか?」
「あぁ」
そして村に戻って村長に伝えようとした時に、私の後ろの茂みから気配を感じた。
振り返った時には、目の前に矢があり、しまったと思った瞬間、その矢は弾き飛ばされた。
「大丈夫か!?」
「ティオ様!?」
なんと、ティオ公爵子息が腰にあった剣で矢を弾き飛ばしたみたいだ。
茂みの方からは男二、三人の声が聞こえた。
私はすぐに飛び出し、そこら辺にあった蔓を使って男たちを縛って捕まえた。
「ティオ様。気配に気づかず申し訳ありません」
「いや、捕らえられたからいいが、君は大丈夫か?」
「っ……!はい……」
なんだか、体が熱い。
なぜだろう。
「本当に大丈夫か?顔が赤いぞ?」
「だっ、大丈夫です!」
ティオ公爵子息が私の顔を覗き込むと、さらに体が熱いなった。
顔が近い。
まさか、まさか、まさか……….。
「こいつらも村長に伝えておこう」
「あ、はい!」
「ありがとうございます!狂獣だけでなく賊まで捕らえていただいて!」
村に戻り、村長に伝えると、あの男たちはこの辺では有名な賊だったみたいだ。ティオ公爵子息を狙ってたのだろう。
「いや、私じゃない。討伐したのも捕らえたのもレシーだ」
「レシーさんもありがとうございます!」
村長はすごい喜んでいる。きっと、賊に狂獣にと悩まされていたのだろう。
「それでは帰ろうか」
「……………」
ティオ公爵子息は金色の髪に夕日が反射しており、とても綺麗だ。青の瞳は少しだけ赤みがかっている。
おそらく、今も私は顔が赤いだろう。体も熱い。さっきからこの調子だ。
あぁ。間違いない。
私は、この方に、ティオ・アキラスに、「恋」をしてしまったのだ。
この作品は2エピソードの途中からこのサイトで書き始めていまして、途中で文章の書き方が変わっていると思いますが、いつか直したいと思っております。




