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第16話 桐山姉妹とお家デート?


「おじゃましまあーす!」


 玄関から元気な声が俺の家に響く。

 それに続いて落ち着いた、けれど透き通るような声がする。

 

「おじゃまします」


「いらっしゃいふたりとも」


 ミイナちゃんとレナ、桐山姉妹が俺の家にきていた。

 靴をパパッと脱いで家へと上がるにミイナちゃんに、レナが引き留める。

 

「ちょっと待ってミイナ。お靴はきちんと並べようね」


「はーい」


 ミイナちゃんはちょこんとしゃがんで小さな靴をつかんで、つま先を玄関に向けくるっと反転させて整える。

 その仕草が妙にかわいい。


「えらいねミイナ」


 レナが頭をなでるとミイナちゃんがへへーと嬉しそうな笑顔を浮かべる。

 公園で遊んで以来、ミイナちゃんに対するレナの接し方が変わったように思う。

 とても柔らかくて、姉としてきちんと振る舞っているのがわかる。

 

「うんうん、お行儀が良くてえらいぞミイナちゃん」


 レナの後につづいて俺もミイナちゃんの頭をなでる。

 すると同じく、へへーと笑いながら体をふりふりと左右に動かして喜んでいた。


 それを隣でみていたレナが、靴を脱いで揃えたあとこっちをじーっとみている。


「どうした?」


 え、これってもしかして私も褒めて欲しいってことか?

 いや、それはないだろう。

 高校生が靴を揃えたくらいで褒めて欲しいと思うなんて、そんなまさか。ねえ?


「にいに、私は?」

 

 そのまさかだった。

 

「レナもえらいぞ」


 言葉をかけてもレナは動かない。

 眉根を寄せてこちらをみているだけ。

 そのまま見つめているとレナが頭をゆっくりと差し出してくる。

 これってそういうことだよな。


「えらいえらい」

 

 頭をなでてやるとレナはえへへと笑って、ようやくその場から歩いてくれた。

 銀髪の襟足が嬉しそうに跳ねている。

 お母さんが不在なことが多く、こうして褒められた経験が薄いのだろう。

 それまでの幼少期の寂しい時間を埋めるようにこうしてレナは俺に妹っぽく甘えてくるのだった。

 

「ここがおにいちゃんのおうちー、なんだかいいにおーい」


 ミイナちゃんはが小さな鼻をすんすんとしながらいう。

 

「そうかな?」 

 

「うん! おにいちゃんのにおいがする」


「それっていい匂いなのか?」


 自分の匂いって自分では分からないから、なにが良いか悪いかなんて判断つかない。

 アロマディフューザーを置いてるわけでも香水を使ってるわけでもないしさ。


「ミイナはすきっ! おねえちゃんもいいにおいって思うよね?」


 おいおい、ミイナちゃんその話題をレナに振るのか。

 レナが困るんじゃないかと俺は横目で表情を伺う。

 

「私もいい匂いだって思うよ。にいにがそばにいてくれてるみたいで安心感がある」


 いつもは澄ましたように整った顔を、ふわっと綻ばせながらレナはいう。

 でも、と一拍おいて俺に近寄り、すーっと深呼吸した。

 

「にいにから直接嗅いだ方が安心する」

 

「ほんとうだねー」


 なんてミイナちゃんは俺の足をぎゅっと抱く。

 美少女姉妹に挟まれて匂いを嗅がれる、どういう状況だこれ。

 

「ほら、ふたりとももういいだろ。今日はゲームしにきたんだったよな」


 これまでの遊びとは趣向を変えて、今日はテレビゲームをすることになった。

 というのもミイナちゃんの通う幼稚園でゲームの話題になったとき、ゲームのやったことのないミイナちゃんはついていけなかったみたいだ。


 しかし、桐山家にはテレビゲームがない。

 なぜならレナがその類をしないから。


 そんな話をしているときに俺が持ってることを告げると、ミイナちゃんはえらく食いついた。

 家から持ってきてもよかったけど、二人が俺の家に来たいということもあり、こうして招くことになったのだ。


「ん、げえむげえむ!」


「よし、ミイナちゃん行こうか」


 ゲームに触れたことのないミイナちゃんが目を輝かしている。

 もうちょっと、と呟くレナは無視することにした。

 

「三人でできるゲームといえば……『浦島太郎電鉄』だな」


 初心者の二人にアクションゲームをしてもらうのはハードルが高い。

 それに一人で進めるRPGをするよりもパーティ系のゲームの方がいい、と考えた俺が選んだ結果だった。


 壇ノ浦が置いていったこのゲームが役にたつとはな。


 本体を起動するとタイトル画面が出てくる。

 それだけでミイナちゃんは、わー、と新鮮な反応を見せてくれる。かわいいなあ。

 


「ジュース入れてくるから待ってて」


「ありがとにいに」


 それぞれにコントローラーを渡して俺はおもむろに立ち上がった。

 

「なんかすごーい」


「ミイナ、勝手にボタン押さないの」


「全然いいよ、好きにさせてあげたら」



 背中から聞こえてくるレナの声に振り返り、なだめる。 

 コントローラーを触るのが楽しいんだろう。

 自分の操作ひとつで画面が変わったりするのって魔法みたいだよな。


「じゅん、って……」


「ん、どうしたー?」


 ジュースを注いでいた俺は、レナの呟きに顔をあげて尋ねる。

 氷がカップにからからと当たる音がして、レナがなにを言ってたか聞き取れなかった。

 

「ううん、なんでもない」


「そっか」


 なにかミイナちゃんがコントローラーで遊んでいただけかもしれない。

 運んできたジュースをテーブルにおいて、二人の横に俺も並ぼうとしたところでミイナちゃんが手を引っ張る。


「おにいちゃんはこっち」


 ミイナちゃんとレナの二人の間にぽっかりと空いた空間に誘われる。

 ミイナちゃん、俺、レナの順番で、俺を挟むような形になった。

 また俺真ん中かよ。

   

「お待たせ。じゃあしよっか」


「しよー!」

 

「……うん」


 レナの反応が悪い、どうしたんだろう。

 画面をみると設定画面になっていた。

 BGMやボイスの数値がおかしくなっている。


 ミイナちゃんがメチャクチャに操作してこうなったんだろう。

 レナはゲームをしたことがないから、変なことになったかもしれないと、不安を覚えたのかな。

 

 気を取り直して、俺は「はじめから」を選択し、それぞれキャラに名前をつけたりゲーム設定を決める。

 ミイナちゃんはキャラを選ぶのも楽しそうで、一人一人みていっていた。

 双六だから性能が変わるわけじゃないんだけどこれも楽しいよな。


 最終的には「ミイナに似てる!」と銀色の子猫のキャラを選んでいた。

 レナは銀色の猫娘のキャラだ。

 ゲームの設定的にも姉妹の設定なのでちょうどいいだろう。



「やった! ミイナ、ゴールしたよ」


「すごいなミイナちゃん」


 ミイナちゃんはゲームをあまり理解していなかったけどサイコロの目の出が良くて何度もゴールしていた。

 物件とかも分からなそうだったけど、ケーキ屋さんとかお花屋さんなどかわいいらしいものを買っていて「ミイナのお店」っと朗らかに笑っていた。

 

「レナまたビンボーンついてんじゃん」


「ぐうぅ! 私が買った物件が売られてく」


「あはは、おねえちゃんよわーい」


 レナは対照的に運が悪くて、ビンボーンというこのゲームのお邪魔キャラにやられていた。

 俺はこのゲームのやっていた経験を活かしてお助けカードを使いながら、程よく楽しんでいた。

 

「すまんな、ゴールはいただいてくぜ」


「にいに! ずるい!」


「ずるくないよな? な、ミイナちゃん」



 俺がミイナちゃんに聞くと、ミイナちゃんは「ずるくないよー」と首を振っていた。

 


「もういい」

 


 ふん、とレナが不機嫌になる。

 俺が負け役になってもよかったけどレナは運が悪すぎて差が開くばかりだった。

 


「すー、すー」

 


 ゲームを終えて、しばらくするとミイナちゃんが寝息を立てて俺の肩にもたれていた。

 画面を見ながら集中するとその時は忘れてるけど体は結構疲れるんだよな。

 ましてや幼い子ならなおさらか。


 俺はミイナちゃんを自分のベッドまで運び、横にしてあげる。

 帰ってもらうのは起きてからでもいいか。

 ミイナちゃんはその小さな手で布団をきゅっと掴んでいた。


 そんなミイナちゃんを見届けて俺はレナの元へ戻り、腰掛ける。

   

「なあ、レナ。最下位なったからってそう不機嫌になるなよ」


 そう、レナはゲームを始めた頃に様子が変わって、いつも少ない口数が余計に少なくなっていた。


「ゲームは運だからさ、またやれば結果は変わるって」


「うん……」


 ぽつりと零してレナは黙る。どうしたものかと悩んでる俺に、レナがゆっくりと口を開く。


「不機嫌になってたらごめん……」


 ねえ、にいに、とレナは続ける。


「お医者さんごっこしてもいい?」


「唐突だな」


「前にミイナしてるの見たてたら私もしたくなった」



 なんだそれは、断ろうと思うと頭の中にビービーと警報が鳴る。

 くそう。やっぱりか。

 

 不機嫌が解消されるなら、と俺は了承し、そういう流れになった。


 てか、レナまだまだ子どもだよなあ。

 お、子どもってことはこれならレナとラブコメ展開になることもないかもしれない。

 やったぜ。


「じゃあ初めるね」


「分かった」


 ソファに座ったまま向かい合う。

 そして、レナは表情をきりりと引き締めた。

 最近は緩んでいるのを見る機会が多いかったから忘れていたけど、いつもはこんな感じだったな。


「本日はどうされましたか」


「ちょっと体調が悪くて」


 ごほん、ごほん、と俺は空咳をする。


「それはいけませんね、体温を計ります」


「体温計ならあっちにあるぞ」


 ミイナちゃんは本格派だから小道具にも気を配っていたのを思い出し、レナにも必要かもと考えてそれをすすめる。


「いえ、大丈夫ですよ。私はプロのお医者さんなので」


 済ました表情でレナはいう。

 お医者さんってみんな免許を持ったプロだろ、というツッコミは飲み込んだ。


 レナはゆっくりと俺に顔を近づけてくる。

 

 とんっ、とレナは自分の額を俺の額につけた。

 レナが瞬きをするたびに長いまつ毛が、はらはらと風を送るのを感じるほどの距離。


「……レナ?」


「先生と呼んでくださいね」


「せ、先生、これで計れるんですか?」


「はい、だからじっとしててくださいね」


 俺は人形のように整ったレナの顔を眺めていた。

 レナは瞳をつむっている集中しているようだ。

 患者に向き合う真面目な先生のように思えた。


 向き合うってこういう意味じゃない気がするけど。


 昔の俺だったらこの距離に美少女がいたら、照れているところだがギャルゲー帰りのおかげで冷静にいられる。

 

 そして、時間が経つとじわじわと額が熱くなってきた。

 あれ、俺って本当に熱あったっけ?


   

 いや、これレナが熱を持っているんじゃないのか?



「先生熱いです」



 目をつむっていたレナがぱっと目を開けた、俺はずっと目を開けていたのでパチリと目が合う。

 ぱっと花が咲いたように、レナの頬が赤く染まる。

 しかし一瞬でそれを隠すように済ました顔に戻る。


「やっぱり熱がありますね。大変です」


「違いますよ先生。俺じゃなくて先生が熱を持ってるんです」


「いけない子ですね。先生は病気になりません。プロのお医者さんなので」



 治療する人は病気にならないと思っているのか?

 お医者さんも人間だぞ。

 てかプロのお医者さんってフレーズ気に入ってんのかな。

 


「では、治療を行います」


「あ、はい……。治療ってなにをするんですか?」


「こうです」


 ガバッとレナが俺に覆い被さる。

 

「な、なにを……?」


「熱いものは冷たいもので冷やすのが一番です。私は冷たいとよく言われるので」


 そんな民間療法まるだしなことあるのか……。

 あとちょっと悲しいぞ。


「合わせて心拍数も計りますね」


 レナは俺の胸に耳を当てる。


「にいにの音、落ち着く」

 

 あれ、お医者さんごっこどこいった?

 俺がそう思ったそのとき。


「あー! おねえちゃんだけお医者さんごっこしてる!」


 ベッドで寝かしつけていたミイナちゃんが起き上がってこちらを指差していた。


「これは、その……」


 もにょもにょとレナは口ごもる。

 

「ミイナもする!!」


「ええ、ミイナちゃん?!」


 ミイナちゃんは俺の元にかけてきて、レナと同じように俺の胸に耳を当てて心音を聞いていた。

 なんだ二人して、これって楽しいのか?


 ミイナちゃんが和やかな表情を浮かべていたので、ま、癒されるから、いっかと俺はなにも考えず受けいれるのだった。



お読みいただきありがとうございます。

皆様のおかげで現在ラブコメ日間4位になっています!


今日はあと夜の1話投稿します!


このまま1位を取って作品をもっと多くの方に読んでもらいたいと思っています!

ブックマークと⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎での評価で作品を応援していだけると本当に嬉しいです!

よろしくお願いします!!

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