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消えた治癒士への執着は棄てて下さい  作者: みん


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37 謁見

あれから、色々と落ち着いて暫く経った頃、国王陛下からの登城願の手紙が届いた。


『向こうがこっちに来るべきじゃないの?』


なんてヴァルナは言っていたけど、それは私が嫌だからとヴァルナを必死に宥めた。国王が辺境地の平民の家にやって来る──恐ろしすぎる。


『登城する必要はない』


とも言われたけど、全てが片付いたのなら、一度は謁見して話をしないといけないと思っていたから丁度良かった。


そして、謁見予定日よりも早めに王都に向かい、イデリアル伯爵家にも寄る事にした。






*******



「「ジルダ!!」」


伯爵家の邸に入るとすぐ、お父様とお母様が私に駆け寄って来て抱き締めてくれた。最後に会った時と比べて、少し痩せただろうか?


「何もできずに……悪かったな……不甲斐ない親ですまない……」

「お父様、今回の事は、普通の人間の私達だけでは何もできなかったんです。お父様は、すべき事はしてくれました。ありがとうございます。お母様も、ありがとうございます」

「ジルダ……」



それから、久し振りに3人揃っての夕食を取り、私から離れようとしないお母様とは、食後も一緒にお茶を飲みながら色んな話をした。

流石に入浴は別々だったけど、夜はお母様が寝付いた事を確認してから自分の部屋に戻った。


そうして、久し振りの自分の部屋でゆっくりした後、テラスに出て夜空を見上げていると


()()()()()ジルダだな」

「メンフィールス様!?」


転移魔法で現れたのは、メンフィールス様だ。


「不法侵入です」

「一応、イデリアル伯爵には許可を取っている」

「ソウデスカ……」


魔道士団長で、王妃様の実弟で、メンフィールス公爵から先触れが来れば、伯爵でしかないお父様は、たとえ拒否したくてもできないだろう。しかも、こんな時間に来るとは思ってもいなかっただろう。


私は今、久し振りにジルダの姿に戻っている。緑色の髪に、水色の瞳だ。リヴィアンナは茶髪で地味な印象だったから、一気にカラフルになって、少し恥ずかしい気がしたりする。


「今日は暖かいですし、夜も遅い時間なので、このままテラスで対応させてもらいますよ?」

「ジルダらしい対応だな……ふっ……」


そんなに優しく笑わずに、いっその事不敬罪で罰してくれないかなぁ?そうすれば、スッキリと縁が切れるかもしれない。こんな塩対応の私の、どこがお気に召しているのか?


「そういうところが気に入っているから、無駄に抵抗しても意味はないからな」

「ソウデスカ」


そんな事を言われつつ、そのままテラスで立ったまま、何のおもてなしもせず他愛のない話をした。本当に、ある意味中身の無い話ばかりなのに、窮屈な感じも面倒くさい感じもない。時折訪れる沈黙さえも、心地好く感じるほどだった。





「あれ?結局何をしに来たの?」


と思ったのは、メンフィールス様が帰ってから、ベッドに入った時だった。







**翌日、謁見の間**



「よく来てくれたな。ありがとう」

『本当よね……またここに来る事になるとはね……』

「…………」


国王陛下の労いの言葉に答えたのは、水の精霊のヴァルナ。未だに怒りは収まっていないようで、謁見の間がピリピリとした空気に包まれている。


『ヴァルナ、落ち着いてちょうだい。国王は巻き込まれただけよ』

『それもそうね……』


アウラの言葉で、ヴァルナも少し落ち着いたようで空気も軽くなり、待機していた騎士達もほっとした表情を浮かべた。


「今回の事、本当に申し訳なかった。知らなかったとは言え、セオドリクと聖女ナナカがジルダ嬢を裏切っていたとは……ナナカに至っては、ジルダ嬢の命を奪おうとしていた事にも全く気付かなかった」

「それは……仕方ありません。一緒に居た私でも気付きませんでしたから。ですから、謝罪は受け取りますから、今後は気になさらないで下さい」


ある意味、国王陛下は自分が悪く言われると分かった上で、私を護る為に死亡判定を下してくれたのだから、国王陛下が謝る必要はない。私に謝るべきは、聖女ナナカとセオドリク様だ。


「そう言ってもらえると……色々助かるんだが、はい、これで終わりというわけにもいかない故、何か望みはないか?王妃や側近達と相談して、“ジルダ=イデリアルを復活させる”か、“リヴィアンナに爵位を与える”という案が出たのだが……」

「その両方とも辞退させていただきます」

「だろうな……」


国王陛下も、私の答えを予想していたんだろう。


「それでも、何もしないわけにはいかないから、あっても困らない物を贈らせてもらう。それと、今住んでいる土地の権利を“国”から“リヴィアンナ”に変更しておこう」

「それなら、ありがたく受け取らせていただきます」


これで終わりかな?と思ったところで、王妃様から声がかかった。


「本当に愚息がごめんなさいね。それと……これからは弟が……ごめんなさいね……」


『弟がごめんなさい』とはどういう意味なのか──は、困り顔の王妃様には訊けなかった。



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