11 探しもの
朔の日とその前後数日は、体が思うように動かせなくなるから、そうなる前に薬草を多めに取っておく必要がある。でなければ、塗り薬を作れなくなって収入が減ってしまうから。だから、いつも通りミツと森にやって来た──のだけど。
「森と言えば魔素の溜まり場があるイメージだけど、この森は澄んでて気持ちが良いね」
「そうですね。ここで取れる薬草で作られた塗り薬なら、効果が良いのも納得ですね」
「リヴィアンナさん、ごめんね?」
「いえ……お気になさらず………」
いつも通りに森に行く為にラボを出ると、英雄様とラドルファスとアーニーさんがいて、『一緒に森に行っても良いか?』とラドルファス様に訊かれて断る事ができる筈もなく、一緒に森に行く事になった。それを謝ってくれたのは英雄様。ミツとアウラは密かにキレているのも仕方無い。ただ、何となく、3人がミツを気にしているように見えるのは……気のせいかな?とにかく、必要分の薬草を早く集めて早く帰ろう!と、私とミツはいつもより急いで森の中を歩いて行った。
そうして、いつもより早く終わり、帰ってお昼ご飯を食べようと思っていると
「そこの川で取って来た魚で良ければ」
と、アーニーさんが魚を焼いていた。この森で取った果物もあった。
ー断れないよねー
「有難くいただきます」
と、結局5人で食べる事になった。ちなみに、アウラは近くにある木の上で寝ている。
「ミツは、獣人だよね?」
「はい。狐です」
ミツが獣人と言った事はなかったのに、ラドルファス様が気付いていたのは、流石だなと言ったところだろうか?やっぱり、獣人は感覚が鋭い。アウラの事は、気付かれていないと思うけど。
「手練だったりしますか?」
「………」
アーニーさんの質問に、軽い笑顔を作るミツ。私に向ける可愛い笑顔じゃない。これは、ミツの機嫌が良くない時の笑顔だ。理由は……この3人だ。この3人も分かってるのかもしれない。それ以上、誰もミツに話しかける事はなかった。
そんなミツのおかげで、昼食を食べた後は3人は帰って行った。
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『ただいま~』
「アウラ、おかえりなさい。何処に行ってたの?」
『あの3人に付いて行ってたの』
昼食の後、姿が見えないと思っていたら、どうやら3人の後を着けて行っていたらしい。風の妖精は物静かだと言われているけど、アウラは比較的好戦的なタイプで、特に私に対しては過保護だったりする。
「まさか、攻撃したりはしてないよね?」
『許可さえ出ればやっちゃうけど、リヴィの嫌がる事はしないわ』
えっへん(偉いでしょう?)──と胸を張るアウラは可愛い。
「それで?あの3人について何か分かったんですか?」
『分かったわ。あの3人は治癒士のジルダ=イデリアルを探しているみたい』
**ノーザンディア王太子宮**
「セオ、今日もお疲れ様でした」
「ナナカもお疲れ様。今日も神殿に行っていたそうだね。大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですよ。と言っても、以前のように大勢の人達を癒やす事ができなくて、お手伝い程度しかしてないから、助けになっているのかどうか分からないけど」
「そんな事はないよ。聖女の君と言う存在だけで、私達は救われているんだから」
「ありがとうございます」
今日も1日、公務を終えた王太子セオドリクと王太子妃ナナカが寝室でお茶を飲みながら話をしている。
「ナナカには、直接伝えておこうと思って……どうやら、誰かが今もなおジルダを探しているそうだ」
「ジルダさんを?」
「うん。納得いっていない者だろうな。結果は変わらないだろうけど……じゃあ、私はお風呂に入って来るから、ナナカは先に寝てて良いよ」
王太子セオドリクは、そう言うと寝室から続く浴室に入って行った。
「誰がジルダを?」
ナナカはポツリと呟いた後、寝室奥にあるクローゼットの中へと入り、更に奥にある隠し扉を開けて、隠し部屋にあるチェストの引出しを開けてネックレスを取り出す。
「これは、私の物よ。誰にも渡さないわ。それに……足りない。まだまだ足りない……」
ナナカの手には、アウイナイトのネックレスがあった。
カタン──
「誰っ!?って……きゃあっ!!」
「ナナカ、どうした!?」
「セオ!ネズミが──っ!」
『キュキュッ───』
ナナカの悲鳴を聞き、慌てて駆けつけたセオドリクだったが、ネズミに驚いただけだと分かりホッとする。そのネズミはすばしっこく、あっという間に何処かへと行ってしまった。
「明日にでも、猫を飼おうか?」
「大丈夫です。少し驚いただけだから」
「分かった。なら、探して駆除するように伝えておこう」
「お願いします」
『…………けて……………………』
その小さな声は
誰の耳にも届かなかった




