2.ツルハシを売るだけじゃ金は集まらない
商人エイは柄でもなく欠伸をかいた。
…人が来ない。
「…狩りにでもいこ」
エイはそう呟いた。
そう。この世界には敵性生物が色々といる。
それを倒し、売ればお金になる。
もしそれが希少で強力な生物なら高値である。
つまり、彼女は金を掘り当てるためのツルハシを売っているのだ。
…まぁそれはさておき、彼女は今日のご飯を少しでもマシなものにするために店を出た。
食料を得るために狩りに出る…とはまた随分とリアリティのあるMMORPGだ。
「あれ…もしかして…」
「聞かれるぞ…やめとけ」
「いや…偽物かもしれんぞ?」
第3開拓州、州都。午前7時。
エイが歩くと、周りはそんな噂話をし始める。
まるで石を投げられて揺れる波紋のように。
別に有名という訳では無い。一番最適な表現は…『都市伝説』だろうか。
『猟銃生成V』を持つ謎の商人…或いは単に『死の商人』。
名前や姿は広く知られていても、それ以上は何も知られていない。
彼女はギルドに入って空いている受付カウンターを探し、受付嬢に話しかけた。
「…受けられるクエストはある?」
受付嬢はビクッと反応する。
エイが小首を傾げると、受付嬢はギギギとロボットのようにぎこちなく笑顔を作り、言った。
「は…はい!もちろんです!」
「じゃあ、見せて」
その言葉で受付嬢はスススと足早にどこかへ去っていった。
エイは待つ。
周りからの畏怖…或いは畏敬の目を気にせずに。
「お持ちしました」
出されたクエスト依頼は3つ。
分かりやすく言えば、初心者向け、中級者向け、上級者向けの3つである。
彼女は迷わず初心者向けのものをとった。
その決断に明らかに受付嬢は驚いた。
が、別にエイに実力がない訳ではない。
楽をしたい訳でもない。
れっきとした理由があるのだ。
彼女はぺらりと初心者向けの依頼書を持ち上げ、見る。
討伐難度:★☆☆☆☆
最低保証買取単価:200エセン
つまり1匹あたり20円である。
対して上級者向けの依頼を見てみると、
討伐難度★★★★★
最低保証買取単価:5000エセン
つまり1匹あたり500円である。
初心者向けのを25匹殺しただけで並ぶ。
その上、上級者向けの個体はかなり少ない。
確かに単価は高い。しかし、明らかに効率が悪いのである。
エイは意気揚々…とまではいかなくとも、効率の良いクエストを見つけて少し嬉しそうにギルドを出ていった。
…今日はお肉とか買おうかな。




