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「ブラックバイトから解放されたら、女神の負債(ブラック)を背負わされた件」  作者: 月神世一


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EP 5

ワカバの危機と、クラン『リサイクル』の初仕事

「街の地下水道の緊急掃討依頼。俺たちクラン『リサイクル』が、一括で受注させてもらうぜ!」

拓哉の力強い宣言が、ギルドマスター執務室に響き渡った。

「な、何を馬鹿なことを!」

ドワーフ武器ギルドの総長ガンツが、目を血走らせて吠えた。

「貴様が持っているその奇妙な鉄の塊が何なのかは知らんが、特務型シザー・ビートルの甲殻は、普通の死甲虫機とは次元が違う! 表面に魔力コーティングまで施された極厚の装甲じゃぞ! ワシらの秘伝の魔導剣以外で傷などつくものか!」

「へぇ。じゃあ、もし俺たちがこいつで特務型を全滅させたら、ドワーフの『秘伝』とやらはお笑い草ってことだな」

拓哉が不敵な笑みで挑発すると、ガンツの顔は怒りで茹でダコのように真っ赤になった。

「ほざけッ! ええじゃろう、そこまで言うなら勝手に死んでこい! その代わり、貴様らが地下水道で全滅した暁には、ワカバ! 約束通りクラン『リサイクル』を追放し、あの鉄の筒の契約を破棄してもらうぞ!」

ガンツは吐き捨てるように言うと、ドスドスと足音を立てて執務室から出て行った。

「た、拓哉さん……っ! 大丈夫なんですか!? 特務型は、熟練の銀等級パーティーでも苦戦する化け物なんですよ!?」

ワカバが涙目で拓哉の袖を掴む。

だが、その不安を払拭するように、ニャーニャが自信満々に算盤を弾きながら前に出た。

「ニャフフ、ご心配なくワカバ様。うちの旦那様とこの『秘密兵器』があれば、特務型なんてただの鉄屑ですニャ。……それより、緊急の指名依頼ですから、報酬は弾んでもらいますニャン? 討伐報酬は通常の3倍、さらに特務型のドロップ素材は全て我がクランの総取り、これで手を打ちますニャ!」

「ひゃいっ! ギ、ギルドが救われるなら、それくらい安いものですぅ!」

(こんな緊急事態でも交渉を忘れないニャーニャ、マジで頼もしすぎるだろ……)

拓哉は感心しながら、仲間たちを振り返った。

「よし、みんな! クラン『リサイクル』の初仕事だ。タナントシティの地下水道を掃除しに行くぞ!」

「「「おおーっ!!」」」

タナントシティの地下に広がる、広大な下水道施設。

生活用水や雨水が流れ込む石造りの巨大なトンネルは薄暗く、じめじめとした湿気とカビの匂いが立ち込めていた。

ルルアが杖の先に『光の魔法ライト』を灯し、一行は慎重に奥へと進んでいく。

「陣形はこのままで行くぞ。前衛はニック、ロース、ラビーナ! 中衛は俺とニャーニャ! 後衛はルルアとリリスだ!」

拓哉の指示で、パーティーは完璧なフォーメーションを組んだ。

最前列には、鉄パイプを両手持ちしたラビーナと、同じく鉄パイプを予備として背負ったニック(鉄ハンマー)とロース(鉄斧)の獣人コンビ。

「ギギ……ギギギギギッ!!」

暗闇の奥から、金属が擦れ合うような不快な機械音が響いてきた。

ルルアの光が照らし出したのは、通路を埋め尽くすほどの数を持つ、巨大な機械のカブトムシの群れだった。

通常の死甲虫機よりも一回り大きく、黒光りする分厚い装甲。そして何より、頭部には人間の胴体など簡単に両断できそうな『巨大な鋼鉄のハサミ(シザー)』が備わっている。

「出たな、特務型ッス!」

「兄貴! 俺たちが奴らの突進を止めるッス!」

ニックとロースが前に出る。

先頭の一匹が、巨大なハサミを振りかざして猛スピードで突進してきた!

「させるかよっ!」

ニックが渾身の力で鉄ハンマーを振り下ろす!

ガゴォォォンッ!!

すさまじい激突音。特務型の突進は止められたが、その極厚の装甲には、わずかなヒビが入っただけだった。

「クソッ、やっぱり硬え! しかもあのハサミ!」

特務型が反撃に出る。巨大なハサミが、ニックの胴体を真っ二つにしようと迫る!

だが、その間に割って入ったのはラビーナだった。

「甘いぞ、鉄屑め!」

ラビーナは手にした『鉄パイプ』を横に構え、特務型の巨大なハサミの刃を真っ向から受け止めた。

ガキィィィィィンッ!!!!

火花が散る。

普通の鉄剣や銅盾であれば、ハサミの圧力でへし折られていただろう。

しかし、地球の規格で作られた【中空の炭素鋼】である鉄パイプは、恐るべき耐久力でその切断の圧力を完璧に受け流し、ミリ単位の歪みすら生じさせなかったのだ!

「す、すげぇ! やっぱり兄貴の銀杖パイプの防御力は最強ッス!!」

「よし! ニック、ロース、ラビーナ! そのまま敵の群れを一箇所に押しとどめて『壁』を作れ! 一歩も通すな!」

拓哉の指示で、前衛の三人が鉄パイプとハンマーを駆使し、通路の幅を利用して特務型の群れを完全に足止めする。

どれだけハサミで挟まれようが、鉄パイプは絶対に折れない。前衛はまさに『鉄壁』と化した。

「よし、キルゾーン(殺戮地点)の構築完了だ……!」

拓哉はニヤリと笑い、背中に背負っていた長方形の布包みを解き放った。

赤と黒の禍々しいフォルム。地球の極悪非道な伐採用機械が、地下水道の冷たい空気に晒される。

「ルルア! 動力パイプの接続確認!」

「はいっ! 魔導エンジン回路、オールグリーンですわ! いつでも魔力流せます!」

ルルアが後方から親指を立てる。

拓哉はチェーンソーのグリップをしっかりと握りしめ、特務型の群れに向かってゆっくりと歩み出た。

「さぁて、ドワーフのオッサンが『絶対に傷つかない』って豪語した特製装甲……」

拓哉の指が、チェーンソーのトリガーに掛けられる。

「地球の科学とルルアの魔導で、粗大ゴミ(三枚おろし)に変えてやるよ!!」

地下水道の暗闇に、反撃の産声が響き渡ろうとしていた。

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