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「ブラックバイトから解放されたら、女神の負債(ブラック)を背負わされた件」  作者: 月神世一


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EP 2

ルルアの魔改造と、異世界最初の「魔導チェーンソー」

「ふぅ……! できましたわ、拓哉さん!」

数時間後。ミルクファームの裏庭に、ルルアの明るい声が響いた。

普段は清楚な修道服に身を包んでいる彼女だが、今は袖をまくり上げ、可愛らしい頬や鼻の頭に機械油(黒いグリス)をべっとりとくっつけている。

その手には、先ほどまで「ただの重いプラスチックと鉄の塊」だった地球のエンジン式チェーンソーが握られていた。

「ルルア、本当か!? わずか数時間で、ガソリンエンジンを異世界の動力に置き換えたっていうのか!?」

「ええ! ドンガン帝国地下通信講座の第4巻『魔導回転回路の基礎と応用』の知識が、まさかこんな形で役に立つなんて思いませんでしたわ!」

ルルアは鼻息を荒くして、得意げに胸を張った。

普段のオロオロした僧侶の面影はない。その瞳には、完全に「メカニック(技術者)」としての狂おしい情熱が宿っている。

「地球の『えんじん』とやらは、中で燃料を爆発させてピストンを動かし、それを回転運動に変えるという、恐ろしく複雑でロマン溢れる機構でした。でも、今の私たちには燃料がない」

「あぁ、そこが一番のネックだったんだ」

「ですから! その爆発機構を丸ごと引っこ抜き、代わりに動力部へ『魔導石』を組み込んで、魔力を直接『回転力トルク』に変換する回路をバイパス接続したんです! 操作は簡単、この持ち手のトリガーを引いて、使用者の魔力を少しだけ流し込むだけですわ!」

説明しながら、ルルアはチェーンソーを拓哉に手渡した。

重量は元のエンジンパーツを削った分、少し軽くなっている。しかし、その禍々しい鋼鉄のソーチェンの威圧感は健在だ。

「よし……。じゃあ、さっそくテストしてみるか。ニック、何か硬い試し斬り用の的はあるか?」

「的ッスか? それならちょうどいいのがありますぜ!」

ニックが孤児院の倉庫から引っ張り出してきたのは、大人が両手で抱えるほどの巨大な丸太だった。

だが、ただの丸太ではない。表面が黒光りしている。

「こいつは『鉄頭木てっとうぼく』っていう、魔力のこもった特別に硬い木ッス! 俺のハンマーを全力で叩きつけても、表面が少し凹むだけで絶対に割れねぇ代物ッスよ!」

「ふむ、鉄頭木か。確かに、駆け出しの剣士では刃が通らず、熟練の戦士でも両断するには骨が折れる硬度だな」

ラビーナも腕を組み、その硬さに太鼓判を押した。

拓哉は丸太の前に立ち、チェーンソーのグリップをしっかりと握りしめる。

「いくぞ……! スイッチ、オンッ!!」

拓哉がトリガーを引き、ほんのわずかな魔力をグリップに流し込んだ。

――その瞬間。

ギュイイイイイイイイイィィィンッ!!!!

静かな裏庭の空気を切り裂いて、凄まじい轟音が響き渡った。

魔導石から生み出された暴力的なまでの回転トルクが、ガイドバーに巻かれた地球の超硬合金の刃を、目にも留まらぬ速度で自動回転させる!

「うおぉぉっ!? す、すげえ振動だ!!」

「拓哉さん、そのまま! 丸太に刃を押し当ててください!」

ルルアの叫びに従い、拓哉は高速回転する鋼鉄の牙を、最強の硬度を誇る「鉄頭木」にゆっくりと押し当てた。

ギャリギャリギャリギャリギャリッ!!!

木屑が爆発したように空中に舞い散る。

異世界の剣では決して切断できないはずの鉄頭木が、まるで柔らかいバターか豆腐のように、何の抵抗もなくズブズブと削り取られていく。

「うおおおおおおっ!?」

「き、切れる! 重さじゃなくて、回転する刃が勝手に抉り込んでいくッ!!」

わずか数秒。

ズドンッ! という重い音と共に、巨大な鉄頭木は、切り口を鏡のようにツルツルにして、真っ二つに両断されてしまった。

「……マジかよ」

拓哉がトリガーから指を離すと、チェーンソーはゆっくりと回転を止め、静寂が戻った。

裏庭には、呆然と立ち尽くす仲間たちの姿があった。

「あ、あのクソ硬い鉄頭木が……数秒で、真っ二つ……!?」

「なんという恐ろしい武器だ……! 振るう技術すら必要ない。ただ刃を当てるだけで、相手の装甲ごと肉を挽き肉に変えるというのか……!」

ニックが腰を抜かし、歴戦の騎士であるラビーナでさえ、その理不尽な破壊力に冷や汗を流して震えている。

「チャ、チャリ……チャリーン!!」

一人、ニャーニャだけが震える手で算盤を弾き、顔を真っ赤にして興奮していた。

「だ、旦那様! これ、売れますニャ! 鉄パイプの比じゃないですニャ! 一振り……いえ、一台で金貨10枚(10万G)でも、軍隊が喉から手が出るほど欲しがりますニャァァァッ!!」

狂喜乱舞するニャーニャをよそに、拓哉は手の中のチェーンソーと、真っ黒な顔でVサインを作っているルルアを交互に見つめた。

(……そうか。俺の『リサイクルマスターLv.2』の真価は、ただのゴミを出すことじゃないんだ)

地球の機械は、ガソリンや電気がなければ動かない。

しかし、地球の『計算し尽くされた構造デザイン』と『規格外の超硬合金(素材)』。これらと、ルルアが操る異世界の『魔導エンジン』が融合した時――。

それは、アナステシア世界の常識を根底から破壊する、最凶の【魔改造兵器】へと進化するのだ。

「ルルア……お前、マジで天才だな! 最高のメカニックだ!」

「えへへ……! 拓哉さんに褒められちゃいました!」

拓哉が頭を撫でてやると、ルルアは油まみれの顔をほころばせて照れ笑いした。

「よーし! これで、俺たちクラン『リサイクル』の最強のジョーカーが完成したな! 今度どんな硬いバケモノが出ようが、こいつで三枚おろしにしてやる!」

「おーっ!!」

最強の武器「鉄パイプ」による経済掌握に加え、究極の破壊兵器「魔導チェーンソー」という武力まで手に入れた鈴木拓哉。

だが、急激に膨れ上がる彼らの力と富を、タナントシティの既存の利権者たちが黙って見過ごすはずがなかった。

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