表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「ブラックバイトから解放されたら、女神の負債(ブラック)を背負わされた件」  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

EP 11

猫耳行商人の品定めと、ATM(拓哉)を巡る修羅場

ラビーナがポポロ村に滞在するようになって、数週間の時が流れた。

追っ手の気配はまだなく、村にはのどかな空気が漂っている。

その日の昼下がり、ポポロ村の広場にカランコロンと軽快なベルの音を響かせて、一台の荷馬車がやってきた。

小型のロックバイソンが牽く幌付きの馬車。御者台に乗っているのは、ピンと立った可愛い猫耳と尻尾を持つ、小柄な獣人の少女だった。

「わーい! ニャーニャだ!」

「お菓子! お菓子ちょうだい!」

村の子供たちが、あっという間に荷馬車の周りに群がっていく。

「毎度どうもニャ! 今日は甘くて美味しい『太陽芋のかりんとう』が入ってるニャよー! 順番に並ぶニャ!」

ニコニコと営業スマイルを振りまきながら、少女は手際よく子供たちに駄菓子を売り捌いていく。首元で揺れる銀貨のペンダントが、太陽の光を反射してキラリと光った。

少し離れた場所で鉄骨フレイルの素振りをしていた拓哉は、その賑やかな様子に目を留めた。

「誰だ? あの娘。俺と同じ20歳くらいに見えるけど」

「あ、ポポロ村を巡回ルートにしているゴルド商会の行商人さんです」

横でルルアが説明してくれる。その声に気づいたのか、猫耳の少女――ニャーニャがこちらへ視線を向けた。

「毎度どうもニャ! ルルアはん。……おや? 知らない顔がチラホラ居るニャ」

荷馬車からぴょんと飛び降りたニャーニャが、トコトコと拓哉たちに近づいてくる。

「えっと、紹介するね。この村に滞在している、拓哉さんとラビーナさんよ」

「初めまして、鈴木拓哉です」

「ラビーナだ。よろしく頼む」

二人が短く挨拶した、その瞬間だった。

ニャーニャの猫耳が、ピクンッ!と異常な反応を示した。彼女の『超・動体視力』と、ゴルド商会ビジネススクール(夜間部)で叩き込まれた鑑定眼が、二人の身なりを一瞬でスキャンしていく。

(……ニャニャ!?)

ニャーニャの脳内で、凄まじい勢いで算盤が弾かれ始めた。

(この男……着ている服の繊維が異常に細かいニャ。タローマートやタローソンに出回っている規格品じゃないニャ! 縫製技術が完全に未知のレベルニャ! さらに、背中に背負ってるあの『コンクリートとかいう未知の素材』……防具屋でも見たことがない謎のアーティファクトだニャ!)

ニャーニャの視線が、瞬時に隣のラビーナへと移る。

(こっちの月兎族のはんも、どう見ても普通の出で立ちじゃないニャ! あの革鎧の装飾、剣の柄に彫られた紋章……超一級品の『お尋ね者』か『ワケありの貴人』の匂いがプンプンするニャ!)

ニャーニャの赤い瞳孔が、極限まで開ききった。

(私のビジネス校の勘が言ってるニャ……儲かる! 圧倒的なブルーオーシャンニャ! 規格外の金貨が降ってくる音がするニャ~~ッ♡)

「……ニャーニャさん? どうしたの、固まっちゃって?」

不思議そうに顔を覗き込むルルアに対し、ニャーニャは突如、バチコンッと特大のウインクを飛ばし、両手を天に掲げた。

「ニャーニャ、今ここで決めたニャ! 巡回の行商人からクラスチェンジして、この村で『出店屋』を始めるニャ!!」

「はあ!? なんで急に!?」

拓哉が驚いてツッコミを入れると、ニャーニャは拓哉の腕にガシッと抱きつき、猫撫で声ですり寄ってきた。

「だって、ついに愛しの『旦那様(※直訳:一生食いっぱぐれない金のなる木)』を見つけたからニャ~♡ 拓哉サン、私と専属のビジネスパートナー(生涯契約)を結ぶニャ!」

「ええっ!?」

「はあっ!? ダメですぅぅぅ!!」

事態は急転直下。

ニャーニャの爆弾発言を聞きつけたリリスが、猛烈な勢いで割り込み、拓哉のもう片方の腕に組み付いた。

「拓哉さんは私専属のATM(借金返済機)なんですからぁ! どこの馬の骨とも知れない泥棒猫に、私の財布は渡しませんよぉぉ!」

「お前、神の自覚ゼロだな! つーか財布って言うな!」

拓哉が叫ぶ横で、事の成り行きを静観していたラビーナが、フイッとそっぽを向いた。

「……やれやれ。随分とモテるのだな、拓哉は。この俗物が……」

「ラビーナ!? なんでちょっと拗ねてんだよ!? 目を合わせてくれよ!」

明らかに機嫌を損ねてしまった元騎士隊長。

さらに、ルルアまでが杖をワナワナと震わせ、涙目で拓哉を指さした。

「拓、拓哉さんの、浮気者ぉぉぉっ!!」

「ちーがーうーだろ!!!」

拓哉の魂の絶叫が、ポポロ村の青空にこだました。

「よく聞けルルア! リリスは『ATM』、ニャーニャは『旦那様(金のなる木)』って言ってんだから! 愛とか恋とか一言も言ってない! アイツらの目は、ただの『資本主義の目(¥_¥)』だ!! 浮気もクソもねぇよ!!」

「ニャフフ、照れなくていいニャ、マイ・ハニー(※利益率1000%)♡」

「私のカード残高、早く払って下さいね♡」

両腕を金の亡者たちにホールドされながら、鈴木拓哉は天を仰いだ。

死蟲機との死闘や過酷な特訓よりも遥かに恐ろしい、女たちの『経済マウント戦争』が、今ここに勃発しようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ