王都での再会
スカーレットから届いた記録は、調査の大きな手がかりとなった。
ゴドウィンの要求が急激に膨らみ始めた時期が、ちょうど南部の伯爵家からの出資金が振り込まれた時期と一致していることが判明したのだ。
より詳しい照合作業が必要だと判断したモナークは、思い切って、スカーレット本人を王都に招くことにした。今度は召喚状ではなく、丁重な依頼状として。
「貴女の記録と、こちらで集めた書状とを、直接照らし合わせながら確認したいのです。もちろん、これ以上のご迷惑はおかけしないとお約束いたします」
戸惑いながらも、スカーレットは父の許しを得て再び王都へと足を運んだ。
今度案内されたのは、応接間ではなく、書類が山と積まれた執務室だった。
「よく来てくれた。……前回は、済まなかった」
開口一番、モナークはそう言って頭を下げた。
スカーレットは驚いた様子だったが、すぐに気を取り直し、書類の山に向き直った。
「頭をお上げください、モナーク様。それより、この記録を確認するお手伝いをさせてくださいませ」
二人は日が暮れるまで、書類を突き合わせながら、ゴドウィンの動きを一つひとつ検証していった。
スカーレットは数字の羅列の中から不自然な符合を次々と見つけ出し、モナークはその鋭さに何度も舌を巻いた。
「よくこんな細かい違和感に気づかれるものだ」
「銀嶺では、誰もが幾つもの仕事を兼ねなければなりません。私も物心つく頃から、父の帳簿仕事を手伝っておりましたので」
そう言って微笑むスカーレットの横顔に、モナークはふと見入ってしまった。
着飾った令嬢たちとは違う、地に足のついた強さと、それでいて柔らかな笑み。
作業は数日にわたって続いた。
夜遅くまで根を詰める彼女に、モナークは温かい茶を淹れて差し出したり、時に息抜きにと王都の菓子店の話をしたりするようになった。
最初はぎこちなかったやり取りも、日を追うごとに自然な軽口へと変わっていった。
「モナーク様は、思っていたよりずっと、お優しい方なのですね」
ある夜、疲れた目をこすりながらスカーレットがそう零した。
「……以前の非礼を、まだ許してはいないだろう」
「許すも何も。あのときのモナーク様は、大切な弟君を守ろうとなさっていただけです。それが行き過ぎた形になってしまっただけで」
その優しい理解に、モナークは胸の奥が締めつけられるような感覚を覚えた。
彼女は、自分を糾弾する権利がありながら、それを一度も振りかざそうとはしない。
むしろ、こちらの立場までも汲み取ろうとしてくれる。
(俺は、この人のことを何も分かっていなかった)
窓の外に広がる王都の夜景を眺めながら、モナークは静かに、しかし確かに、自分の中に芽生え始めた感情に気づき始めていた。




