再びの手紙
集められた書状は、最終的に十七通にのぼった。
差出人となった家々は身分も規模もばらばらだったが、共通する点がひとつだけあった――すべての取引の窓口が、ゴドウィンだったということだ。
だが、書状の内容だけでは、いつ、どのような順序で要求がなされたのか、その全体像がまだ見えてこなかった。モナークは、自分の手元にある情報の乏しさに苛立った。
時系列に沿って、ゴドウィンの要求の変遷を正確に記録した情報が必要だ。
そこでふと思い出したのが、スカーレットの存在だった。
彼女は、この一年のゴドウィンとのやり取りを、おそらく誰よりも把握しているはずだ。
(だが、あれほどの態度を取った相手に、今更……)
自嘲めいた思いを抱えながらも、モナークは筆を執った。
今度は召喚状ではなく、一通の私信として。
「拝啓 ラングドン嬢。先日は、私の非礼な態度により、貴女に多大な不快の念を抱かせたことと存じます。まずはそのことをお詫び申し上げます。
その上で、恥を忍んでお願いがございます。此度、雪渓領の会計及びゴドウィンの仲介による諸々の取引について、公爵家として正式に調査を開始いたしました。
つきましては、貴家がこれまでゴドウィンより受けた要求について、可能な限り詳細な記録をお貸しいただけないでしょうか。貴女の観察眼と記録の正確さは、この調査において何より貴重なものと考えております」
書き終えてから、モナークは何度もその文面を読み返した。
詫びの言葉を書くことに、これほど手間取ったのは初めてだった。
返事は、思いのほか早く届いた。
そこには、この一年でゴドウィンから受けた要求のすべてが、日付順に、金額や品目まで整理された形で記されていた。
几帳面な文字と、無駄のない構成。モナークは思わず感嘆の息を漏らした。
「……これほどまでに、正確に」
添えられた短い手紙には、こう記されていた。
「私自身、この記録が誰かのお役に立てるのなら、これに勝る喜びはございません。セドリック様のご無事を、心より願っております」
恨み言のひとつもない、静かで誠実な言葉だった。
モナークは、自分がいかに一方的な決めつけで彼女を傷つけていたかを、改めて思い知らされた気がした。




