↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
政略結婚だとしても、納得ができない私は当主代理に直訴する  作者: 翠川ニナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/13

再びの手紙

集められた書状は、最終的に十七通にのぼった。

差出人となった家々は身分も規模もばらばらだったが、共通する点がひとつだけあった――すべての取引の窓口が、ゴドウィンだったということだ。


だが、書状の内容だけでは、いつ、どのような順序で要求がなされたのか、その全体像がまだ見えてこなかった。モナークは、自分の手元にある情報の乏しさに苛立った。

時系列に沿って、ゴドウィンの要求の変遷を正確に記録した情報が必要だ。


そこでふと思い出したのが、スカーレットの存在だった。

彼女は、この一年のゴドウィンとのやり取りを、おそらく誰よりも把握しているはずだ。


(だが、あれほどの態度を取った相手に、今更……)


自嘲めいた思いを抱えながらも、モナークは筆を執った。

今度は召喚状ではなく、一通の私信として。


「拝啓 ラングドン嬢。先日は、私の非礼な態度により、貴女に多大な不快の念を抱かせたことと存じます。まずはそのことをお詫び申し上げます。

その上で、恥を忍んでお願いがございます。此度、雪渓領の会計及びゴドウィンの仲介による諸々の取引について、公爵家として正式に調査を開始いたしました。

つきましては、貴家がこれまでゴドウィンより受けた要求について、可能な限り詳細な記録をお貸しいただけないでしょうか。貴女の観察眼と記録の正確さは、この調査において何より貴重なものと考えております」


書き終えてから、モナークは何度もその文面を読み返した。

詫びの言葉を書くことに、これほど手間取ったのは初めてだった。


返事は、思いのほか早く届いた。

そこには、この一年でゴドウィンから受けた要求のすべてが、日付順に、金額や品目まで整理された形で記されていた。

几帳面な文字と、無駄のない構成。モナークは思わず感嘆の息を漏らした。


「……これほどまでに、正確に」


添えられた短い手紙には、こう記されていた。


「私自身、この記録が誰かのお役に立てるのなら、これに勝る喜びはございません。セドリック様のご無事を、心より願っております」


恨み言のひとつもない、静かで誠実な言葉だった。

モナークは、自分がいかに一方的な決めつけで彼女を傷つけていたかを、改めて思い知らされた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。