解放
ゴドウィンは、それから三日後、王都から戻ろうとしていたところを、モナークが手配した王国騎士団によって拘束された。
集められた証拠は動かしようがなく、彼は観念したように罪状のすべてを認めた。
セドリックの首に嵌められていた封魔具は、王都から急遽招かれた高名な魔導医――老齢のホーレス医師の手によって、慎重に解除された。
「これは相当に精巧な魔具ですな……よくぞ気づかれました」
封魔具が外された直後、セドリックの体には目に見える変化が現れた。
青白かった顔にわずかに赤みが差し、長らく閉ざされていた魔力の流れが、堰を切ったように巡り始めたのだ。
「セドリック様、あなたの魔力の質は、氷雪属性としては王国でも稀に見る高い純度をお持ちだ。長年抑え込まれていたせいで表に出ていなかっただけで、決して脆弱な器などではございません」
「私が……稀少な、魔力……?」
セドリックは信じられないという表情で、自らの手のひらを見つめた。
そこにはうっすらと、青白い光の粒子が集まり始めていた。
「無理をせず、これから少しずつ体を慣らしていきましょう。おそらく半年もあれば、健常な方と変わらぬ体力を取り戻せるはずです」
その言葉に、セドリックの目からはとめどなく涙がこぼれた。
生まれてからずっと、自分は病弱で、生きているだけで周囲の重荷になっているのだと、そう思い込まされて生きてきた。
それがすべて、他人の欲によって作り上げられた偽りだったのだと知った衝撃と、そしてわずかな希望とが、彼の中で入り混じっていた。
回復に向かう日々の中で、セドリックはスカーレットと何度も言葉を交わすようになった。
長年の空白を埋めるように、互いの近況や、これまでの手紙のこと、たわいもない話をした。
だがその会話の端々で、セドリックは次第にあることに気づき始めていた。
スカーレットが、兄モナークの名を口にするときの声音。
兄が彼女を気遣う眼差し。
二人の間には、自分がどれだけ言葉を重ねても生まれなかったであろう、自然な信頼と温かさが、すでに確かに根付いていた。
「……お二人は、私が思っていた以上に、良い時間を過ごされたのですね」
ある日の午後、セドリックは静かにそう切り出した。
スカーレットは驚いたように目を見開いた。
「セドリック様……それは」
「隠さなくとも結構です。私はこの目で、はっきりと見ました。兄上が、貴女のことを話すときの顔を。あんな兄上の顔を、私は初めて見ました」
セドリックの声には、責める響きも、悲しみの色もなかった。ただ、静かな確信だけがあった。




