真実
「封魔具、だと……?」
モナークは弟の首元の装身具を凝視した。
「はい。これは着用者の魔力を絶えず外部の触媒に流出させる代物です。おそらく、この文様に沿って、魔力は雪渓領のどこかにある貯蔵用の魔晶石へと送られ続けているものと思われます」
「では、セドリックが幼い頃から患っているとされてきた『魔力欠乏症』とは」
「おそらく、後天的に作られたものです。生まれつき魔力の器が弱いのではなく、幼い頃はもっと目立たない小型の魔具、その後この封魔具によって、絶えず魔力を奪われ続けてきた結果でしょう」
ベッドの上のセドリックは、呆然とした表情でその会話を聞いていた。
「兄上……それは、本当のことなのですか。私は、ずっと生まれつき体が弱いのだと……」
「……信じられん」
スカーレットは、寝台の傍らで身を硬くしているセドリックの姿を見つめ、静かに一歩前に出た。
「セドリック様。私、スカーレットと申します。あなた様の婚約者として、長く文をやり取りさせていただいておりました」
セドリックは、はっとしたようにスカーレットを見た。
「貴女が……スカーレット嬢……。このような形でお会いすることになるとは……申し訳ありません。私は、ずっと何も知らずに……」
「どうか、ご自身を責めないでくださいませ。悪いのは、あなた様を欺いていた者であって、あなた様ではございません」
スカーレットの穏やかな声に、セドリックの目にじわりと涙が滲んだ。
モナークは、そんな二人のやり取りを、複雑な思いで見つめていた。
目の前にいるのは、今なお自分の弟の婚約者である女性だ。
だが自分の胸には、もはや単なる「弟の婚約者」以上の感情が、はっきりと根を張り始めていた。
その夜遅く、館の隠し部屋から、ヴォルフが決定的な証拠を発見した。
ゴドウィンの手による裏帳簿には、この十数年にわたる魔力の抽出量、それを密かに売却してきた記録、さらには十数の貴族家から騙し取った出資金の使い道――そのほとんどが、ゴドウィン自身の隠し財産に費やされていたことが、克明に記されていた。
「……あなたは、正しかったのですね」
モナークは、証拠の束を握りしめながら、隣に立つスカーレットに向かって静かに言った。
「私はただ、真実が知りたかっただけです」
「それでも、貴女がいなければ、俺は今も真実に気づかず、弟を苦しめ続けていた」
見つめ合う二人の間に、これまでとは違う、静かで確かな何かが流れていた。




