生きてこそ
「それで、ユズルさんはまずこれが欲しいみたいなものってあったりしますか?」
「欲しいもの……は特にないですけれど」
元の世界に帰りたい。 そう口に出していいものだろうか…… 俺は出かける前のトゥーナが言った言葉を頭の中にぐるぐると巡らせ続けていた。
『ジェーネを信用するな』 それは一体どういう意味なのか……
トゥーナもまた異世界転移者であるらしいが、なぜ元の世界に帰っていないのか?
仮に……仮にジェーネさんの目的が、外からの人間を拉致し、こちらの世界に留まらせること、だったとする。
その場合でも、あまりに整合性が取れない部分が多い。 例えば、それならトゥーナがいることを嫌がるはずだ。
そして第二に、外を自由に出歩くなんて事もあまりしないだろう。 監視しているとも取れなくはないかもしれないが…… 俺を留まらせること、脱出させないことを考えるのなら、閉じ込める方がよほど簡単なはずだ。
そして今は呼吸が安定しているが…… そもそも俺はどうやら、ココでまともに呼吸をすることもままならないらしい、というのは朝わかっている。 そして今も…… すこし酸素が薄い感覚がある。
まず解決すべきは、ここなのかもしれない……
「ジェーネさん、ちょっと疲れているというか、でた早々、息苦しさがあるんですが……」
「あ、じゃあ、おっぱいですね!」
なんでだよ。
どうぞっ!とジェーネさんは巨大な胸をぶっるんっと揺らしながら俺に向き直り、両手を迎え入れるように広げる。
トゥーナはそれを訝しめに見つめる。
どうも~! とはならないだろ。
「あの…… 俺の息苦しさとそれ、関係あります?」
「大アリですよ! というか、ユズルさんはこうしないとダメになってるんです!」
そうなの? 俺ってもう、おっぱいに飛び込まないといけないドスケベ星人になってんの?
そんなんじゃ、現代に帰れないかもな……たしかに……
え、マジで?
「……すみません、もしかしたら俺、それ意味よくわかってないかもなんで説明してもらっていいですか?」
「ユズルはエーアに侵されている 世界樹様に浄化してもらわないと、息苦しくなる だから、ジェーネの保護を受けなければならない」
意外にも、トゥーナが淡々と言葉を並べる。 まるで説明書を読み上げるかのように朴訥な抑揚だ。
「エーア…… それはこの世界にあるもの……ではないってことですか?」
「はい、エーアはユズルさんのように、世界樹様の浄化を受けていない世界から来た人は、みな侵されているものなのです エーアに侵されていると、息苦しくなり、呼吸ができなくなります
外からのエーアを世界樹様から浄化してもらえば大丈夫なのですが、世界樹様も常に誰にでもとは力が及びませんから、世界樹様の力が宿っているこのブローチの近くで呼吸をする必要があるんです」
「なるほど…… えっとじゃあ、そのブローチを俺に渡してくれるとか……ではダメなんですか?」
「これは私が譲り受けたもので、私が持っていることに意味があるものなので……簡単に私が誰かに渡せるものではないんです だからユズルさん、私の胸元にぎゅ~っ!って顔を押し付けてください」
「……トゥーナさん?」
「それしか手はない」
俺は生きるために、激エロシスター(今はふわっとしたクリーム色のリブ生地セーターを着ている くっきりと身体のラインがでていて、激エロお姉さんだ)のおっぱいを堪能するしかない。
生きるためならしょうがないよなぁ……と割り切れたらどれほどいいことか。
俺にだってプライドはある。 会ったばかりの女性が甘やかしてくれるからといって、ばぶばぶ~!おっぱい最高でちゅ~!とはならない。
生きるため、俺は結果的におっぱいに顔を埋めるしかないのだ。
目を閉じると、俺は顔をゆっくりとジェーネさんの胸元に寄せて、ブローチに口や鼻が近づくように…… 顔がむっちりと吸い付く柔肌に触れて、その後ろから後頭部が細い指にホールドされる。
「よ~しよし…… ユズルさん、すっごくいい子ですね す~は~ す~は~ ゆっくり呼吸、しましょうね」
「ばぶ……」
ばぶ。 しか言えねえよ、こんなの。
すごくやわらかく、程よくヌルすぎないひんやりとした感触に包まれて、俺の顔はどんどん対象的に火照っていく…… 甘い匂いがして、少し掠れたような呼吸はすぐラクになっていく。
「ユズルさんは、私のおっぱい大好きですもんねっ」
「おぎゃ」
おっぱい最高でちゅ……。
「下劣」
トゥーナが一言吐き捨てる。 だがそんな言葉は俺には届かない。 なぜなら幸せおっぱいイヤーマフで、耳が塞がっているからな。
「トゥーナだって、昔はよくこうしていたんですよ~」
ジェーネさんは自慢げに答える。 そっか、トゥーナも外からきたんだもんな。 もしかして、俺にジェーネさんを取られたのか?
「私はそんなこと、覚えていない」
「ふふ、そうでしたね」
照れているトゥーナの顔、ちょっと気になるな……そう思いながらも俺はおっぱいに顔を埋めたまましばらく呼吸を整え続けた。
これをずっとしなきゃならないのなら、俺はもう、帰れないのかもしれない……。




