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閑話・2――とある少女の追憶

どうして私は思い出したのだろう。


どうして私を思い出したのだろう。




□■□




ある夜。

目を開けると、そこは薄明かりの中だった。

光源は、零れ落ちそうな満天の星。

しばらく待っていると、徐々に目が慣れてくる。

私は、星座には詳しくないが、その中の1つに目が留まった。


「……あ」

思わず、声が漏れる。オリオン座だ。


『この世界』の星空を眺めたことは、実はあまりない。当然だ、『今』は貴族の箱入りお嬢様だもん。

……しかし、私は、この世界の星空に、オリオン座がないことを知っていた。



ああ、とため息を吐く。



こんなに過去が懐かしいのは、久しぶりだ。



□■□



『私』はシンディ・カスターに生まれ変わっていた。

それは、私の魂が途中でシンディに入ってしまったわけではない……と思っている。

私は、死んだあと、最初からシンディになっていたのだ。

それを思い出したきっかけが、たまたま、あの食当たりだった。


思い出してしまうと、前世の自分が懐かしくもなる。

家族に、友達、幼なじみ、部活のみんな。

私の死を、悲しんでくれたのだろうか。

今まで目を背けていたことが、頭の中でぐるぐると回り始めた。


鮮明に見えていたオリオン座の小三ッ星が、次第に、ぼやけてくる。



□■□



前世の『私』は、至って普通のJKだった。



高校から始めた室内楽部の活動に明け暮れて、毎日コントラバスを弾いていた。

日々の癒しは、幼なじみと少女漫画の話で盛り上がること。

家族も優しく明るくて、兄と姉が私を可愛がってくれていた。

彼氏はいないけど、ドヤ顔で『私の恋人はコンバスなのよ!』とコントラバスをなでなでしていた。


そんな、普通の女子高生。


――だったのに、な。



突然、平和で呑気な日々が終わってしまった理由は、実は覚えていない。

最後の記憶は、家族で仲良く食べた晩ごはん。

幸せな思い出だったのは、運がよかったのかもしれない。


でも、本当はやっぱり切なくて。

直視したくなかったのだろうか、あまり思い出したりはしていなかった。

しかし、今、かつての居場所の星を見つけて……あまりに淋しかった。



――ああ、私、死んだんだな。




しばらくして、いつのまにか止まっていた、涙の残りを拭う。

硬質な光を放つ星々の中に、もうオリオン座は見当たらなかった。



□■□



例えるならば、氷か、はたまたガラスだろうか?

青やら赤に煌めく光は、確かに冷たい。

しかし、その冷たさが、火照った頬を冷ましてくれるようだった。



気持ちが、徐々に凪いでいく。




もう一度空を見上げると、星が優しく降り注いできた。

涙が溢れるように、ゆっくりと。


落ち着いたはずの私の心が、また軋んでいく。


降り止まない星の中、私は、目を覚ますまで泣き続ける――


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