閑話・2――とある少女の追憶
どうして私は思い出したのだろう。
どうして私を思い出したのだろう。
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ある夜。
目を開けると、そこは薄明かりの中だった。
光源は、零れ落ちそうな満天の星。
しばらく待っていると、徐々に目が慣れてくる。
私は、星座には詳しくないが、その中の1つに目が留まった。
「……あ」
思わず、声が漏れる。オリオン座だ。
『この世界』の星空を眺めたことは、実はあまりない。当然だ、『今』は貴族の箱入りお嬢様だもん。
……しかし、私は、この世界の星空に、オリオン座がないことを知っていた。
ああ、とため息を吐く。
こんなに過去が懐かしいのは、久しぶりだ。
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『私』はシンディ・カスターに生まれ変わっていた。
それは、私の魂が途中でシンディに入ってしまったわけではない……と思っている。
私は、死んだあと、最初からシンディになっていたのだ。
それを思い出したきっかけが、たまたま、あの食当たりだった。
思い出してしまうと、前世の自分が懐かしくもなる。
家族に、友達、幼なじみ、部活のみんな。
私の死を、悲しんでくれたのだろうか。
今まで目を背けていたことが、頭の中でぐるぐると回り始めた。
鮮明に見えていたオリオン座の小三ッ星が、次第に、ぼやけてくる。
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前世の『私』は、至って普通のJKだった。
高校から始めた室内楽部の活動に明け暮れて、毎日コントラバスを弾いていた。
日々の癒しは、幼なじみと少女漫画の話で盛り上がること。
家族も優しく明るくて、兄と姉が私を可愛がってくれていた。
彼氏はいないけど、ドヤ顔で『私の恋人はコンバスなのよ!』とコントラバスをなでなでしていた。
そんな、普通の女子高生。
――だったのに、な。
突然、平和で呑気な日々が終わってしまった理由は、実は覚えていない。
最後の記憶は、家族で仲良く食べた晩ごはん。
幸せな思い出だったのは、運がよかったのかもしれない。
でも、本当はやっぱり切なくて。
直視したくなかったのだろうか、あまり思い出したりはしていなかった。
しかし、今、かつての居場所の星を見つけて……あまりに淋しかった。
――ああ、私、死んだんだな。
しばらくして、いつのまにか止まっていた、涙の残りを拭う。
硬質な光を放つ星々の中に、もうオリオン座は見当たらなかった。
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例えるならば、氷か、はたまたガラスだろうか?
青やら赤に煌めく光は、確かに冷たい。
しかし、その冷たさが、火照った頬を冷ましてくれるようだった。
気持ちが、徐々に凪いでいく。
もう一度空を見上げると、星が優しく降り注いできた。
涙が溢れるように、ゆっくりと。
落ち着いたはずの私の心が、また軋んでいく。
降り止まない星の中、私は、目を覚ますまで泣き続ける――




