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今日は、お父さまも帰ってきて、3人での夕食だった。
私は、好物である鶏肉のスープに顔を綻ばせ、テーブルについていた。
「やあ、遅くなってしまったね」
お父さまが、少し遅れてやってくる。
3日ほど、お城で缶詰めだったらしいが、最近は特に忙しいらしい――っていつでも言っている。大丈夫か。
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「そういえば、シンディのエルラーツ語の先生が見つかったよ」
「まあ、お父さま、そうなんですの?」
エルラーツへの悪感情が根強いロードウィンで、話者を見つけるのは大変だっただろうな……。
本当に素敵な親だと思う。
「思ったより手間取ってしまったよ。この話をしたら、大臣――ダルリンプル侯爵がね、"ジェラルディン嬢とシンディが親しくしているからそのお礼に"と、話をつけてくれたんだ。エルラーツの元外交官の方だ」
「…………そ、そんなすごいお方に教えて頂けるのですか?」
お母さまも私も、呆然とする。
給仕をしていたサラの動きも、一瞬止まっていた。
「うん、引退外交官と言っても、つい最近引退したばかりでね。大臣とは気が合ったらしくてね、エルラーツ滞在中にお世話になったと言っていたよ」
「まあ、それはそれは……エリック、あら、まあ…………」
驚きのあまり、口をぱくぱく動かすお母さま。気持ち、分かりますわ……。
当のお父さまは、にこにこしながら鶏肉を口に運んでいた。
私は、お父さまに視線を向け、にっこり笑う。
「とても驚きましたけれど……大変ありがたいお話ですわ。ありがとうこざいます、お父さま!」
やった、エルラーツ語も分かるようになったら、この先の人生も、結構いい感じなんじゃないのかな……!
生き延びた後も、人生は続くからね!
(ちなみに、ダルリンプル侯爵のエルラーツ滞在とは、平和条約の締結のための準備に、密かにエルラーツ側と会談したことを指しているらしい。ダルリンプル侯爵、やり手なのだ。大臣だしね)
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さて。
今年も、あと1ヶ月で終わりである。
ロードウィンでは、1年の最後の1週間に感謝祭が行われる。
1年を無事に過ごせたことに感謝して、国中で盛大に祝うのだ。
王都も大賑わいで、去年、私はポーリンとお揃いの髪留めをゲットした。
しかし、今年は、私は感謝祭から新年の間、祖父母のところで過ごす予定になっていた。
感謝祭の最中に、祖父の誕生日があるのだ。
前にも1度、感謝祭の期間にクロークスを訪ねたらしいが……まだ『シンディ』だったので怯えて街には出られなかったらしい。今年は楽しむぞ。
楽しみなのはもちろん楽しみだが、それだけというわけにもいかない。
実は、祖父母にグレースのことを打ち明けようか、迷っているのだ。
本来なら、先に両親に言うのが筋かもしれないが……まあ、祖父母の方が話しやすいのよ、そういうものよね。
打ち明けたとして、できればライト家の話もしたい。カスター家への悪意があることも伝えたい。
――なんせ、あと半年だ。『シンディ』でなかったからこそ得られた情報を、無駄にするわけにはいかないのだ。




