第十五話『マロンにゃんを助けるのにゃん!』のその③
第十五話『マロンにゃんを助けるのにゃん!』のその③
「ダマラはこちらが造っているのですよ。『霊穴路との衝突』で生じる反発力の値はもちろんのこと、『ダマラ同士のぶつかり合い』での値にしても、シュミレーションにて、とっくに計測済みです。これら二つの要因だけで、反発力があれほど増大する事態になるとは、とても考えられません。起きるはずがないのです!」
「だが、実際に起きているんだ。オレもミクリ殿も身をもって体験した。これが現実だ」
「ですが!」
「レミロ。現実に目を背けるつもりか?
お前さんはマザーミロネでもあるんだぞ。オレと同じようにな」
「…………」
「まっ、オレもおかしいとは思っているさ。いつだったか、お前さんのいうシュミレーションの結果とやらを見せてもらったことがあったが、あれの上限よりも、はるかに大きくなってしまったんだからな。
マザーの影霊としていわせてもらうが、シュミレーションプログラム自体におかしいところがあるとは、さすがにオレも思わない。となれば、現実とかい離した理由はただ一つ。シュミレーションの前提とした条件もしくは設定のどこかに誤りがあったということだ。足りない項目があるのか、入れてはいけない項目が入っているのか、それとも、違う値を設定してしまったのか。いずれにしても、だ。誤りを見抜けなかった以上、今回の失敗はオレたちのミスが招いた、と認めなければならないんじゃないのか?」
「それは……そうですね」
「オレのほうの話はこれで終わりだ。他になにかいいたいことは?」
「いえ、ありません」
「では、これで交信を打ち切ってくれ」
「はい、ミロネ」
抗議ともとれるレミロにゃんの言葉が、『ずいぶん』と強い口調で発せられていたのに対し、応じたミロネにゃんは、『ずいぶん』と呆れたようにゃ口調にゃった。でもって言葉の内容そのものは……、これまた『ずいぶん』と皮肉っぽいのにゃん。にゃもんで、ふたりの交信を聴こえてはいたもののにゃ。『ずいぶん』が三つも続く排他的会話には、ウチもミクリにゃんも、とうとう終わりまで口を出せずじまいにゃん。
(ネコは苦手にゃんよ、こういうのって。みんにゃで仲良くお喋りしようにゃん)
霊覚交信の間、ずぅっ、と瞑っていたミロネにゃんの目が開いた。ウチはここぞとばかり、誰でもするであろう質問を口にしてみたのにゃ。
「にゃあ、ミロネにゃん。レミロにゃんもミロネにゃんも、マザーミロネにゃんの影霊じゃにゃいの。にゃんで意見が違うのにゃ?」
「まぁ一口にいってしまえば、仮想と現実の差というところか。
レミロから聴いたと思うが、オレにもレミロにも、マザーの意志とは別に、それぞれ独自の『個』が追加されている。オレの『個』は、オレの実体験を元にマザーから判断をもらっている。一方、レミロの『個』は、保守空間でのシュミレーションを元にマザーから判断をもらっているんだ。違いがあっても不思議じゃない」
ウチにはそう答えたものの、自分自身も納得がいかにゃいとみえて、
「とはいえ、マザーのシュミレーションとこうまで異なるとは……」と呟いたミロネにゃんは左手を右肩の脇に挟み、親指とネコ差し指の股であごを支える格好に。いかにも考え込んでいるといった仕草にゃ。
(やれやれ。ウチらは置いてきぼりにゃ。
完全に自分にゃけの世界に、のめり込んでしまっているのにゃもん)
姿勢を崩すことにゃく、黙りこくってしまったミロネにゃん。その姿を見て、ふと思ったのにゃ。
「下手の考え休むに似たり」にゃらば、ウチは、
「アホの考え休むに似たり」といいたい、とにゃ。
いや、にゃにか深い意味があるとかそういうんじゃにゃくて。にゃんとにゃく、にゃ。
(考えたら、正解が出てくるもんにゃのにゃろうか?)
疑問符がつく思いで待っていたらにゃ。案の定にゃ。とうとう諦めたみたいで、『まぁいいか』といって、こちらを振り向いたのにゃん。
「今回の失敗に関してはオレ、レミロ、そして……マザーにも責任がある。
済まない、ミアン殿、ミクリ殿。心から謝罪する」
深く頭を下げるミロネにゃん。態度からも、『済まにゃい』の気持ちが、ひしひし、と伝わってくる……のにゃけれども、それでにゃにかが解決するわけでもにゃい。
「でもにゃ。それにゃらどうすればいいのにゃん?」
「かなり時間がかかるが、ダマラが薄まるのを、いい換えれば、力が弱まるのを待つしかない。しかし、そうなったらそうなったで、今度はヴィナ殿の放った霊力が勢いをつけて迫ってくる。こちらが助け出す前にマロン殿とやらを呑み込んでしまうのは火を見るよりも明らかだ。情けない話ではあるが、正直いって、打つ手がない、というのが現状だ」
「そんにゃあ」
(困ったにゃあ。どうすればいいのにゃろう?)
途方に暮れる中、ふと、おばあにゃんの言葉を想い出したのにゃ。
(確か、力尽くでにゃんとかにゃる願いであれば、とかいっていたにゃ)
ウチはすぐさまミクリにゃんのそばへと寄ったのにゃん。
「どうしたの? ミアン君」
「ミクリにゃん。ウチと一緒に願いごとをしてもらえにゃいにゃろうか?」
「願いごと? なにを、さ」
「もちろん、マロンにゃんのことにゃよ。『助けて下さい』ってお願いをするのにゃん」
「誰に?」
「知らにゃい」
「知らないって……」
ミクリにゃんの顔は困惑げにゃ。実のところ、ウチにもどうにゃるかはさっぱり。でもにゃ。他に考えつかにゃい以上、これが最後の手段と決めたのにゃ。
「とにかく願うのにゃ。いいにゃん?」
ますます困惑げにゃミクリにゃん。それでも、
「まぁミアン君がそこまでいうなら」と応じてくれた。ウチを信頼してくれたのにゃ。
ウチとミクリにゃんは横に並ぶと、四肢を屈した姿で深々と頭を下げたのにゃん。ミロネにゃんが熔岩石の一つに腰かけて、ぽかん、とした顔のあごを両手で支えている直ぐ横でにゃ。
「どうか、マロンにゃんを助けて下さいにゃん」
「どうか、マロン君を無事に助け出して下さい」
目の前には誰も居にゃい。それでも真剣に願ったのにゃ。
そしたらにゃん!
ぷわああぁぁっん。ぷわああぁぁっん。
「ミ、ミクリにゃん! あんたの額から光が!」
「ミアン君! 君もだよ!」
ウチらは顔を真正面に。でもって、光が進む方向へと視線を向けてみたのにゃ。
「ふにゃ、あれは……」
「おばあちゃんの……」
まるでハンコを押されたかのように、上空には『たいへんよくできました』の真っ赤にゃ花丸印が浮かんでいたのにゃ。
ぴかぁっ!
「ふにゃん!」「うわぁっ!」
突如、花丸印からありとあらゆる色の光が同時に放たれ、ウチらの身体に浴びせまくったのにゃん。
「これはまたにゃんとも」
「眩しいねぇ」
光が消えると、上空の花丸印も消えていた。代わりにウチとミクリにゃんが光の姿とにゃってしまった。花丸印とおんにゃじで、多彩にゃ色の光を放っているのにゃ。
「どうしてこんにゃことに……、あ、あれはっ!」
見上げたウチの目に映ったもの。それは白っぽい岩の塊にゃん。
ごおおぉぉっ!
申し合わせたわけでもにゃいのに、ウチとミクリにゃんの叫びが一つににゃる。
『にゃあまんの石像にゃああ!』
こちらへと真っ直ぐに飛んでくる。あっという間に目の前にゃ。もう避けようにも避けられにゃい。
(ぶつかるのにゃん!)
反射的に、身体を強張らせ、目を瞑る力も、ぎゅうっ、と強めたウチにゃん。
「ミーにゃん。『アホの考え休むに似たり』にゃ。ってことで」
ばたっ。
すうっ。すうっ。
「ミアンったらぁ。主人公が真っ先に寝てどうするわん?」
「ねぇ、ミーナちゃん。これってひょっとしたら」
そわそわ。そわそわ。
「イオラ、なにをそわそわしているのわん?」
「ミアンちゃんからの暗示じゃないかしら。ワタシに、主人公をやれっ、ていう」
「イオラ……。んもう、本当、長生きするわん」
「あら。どれくらい増えたのかしら。
数万年? 数十万年? 数百万年? それとも……」




