第十五話『マロンにゃんを助けるのにゃん!』のその④
第十五話『マロンにゃんを助けるのにゃん!』のその④
その時はもう無我夢中で良く判らなかったのにゃけれども、あとで振り返ってみるに、とぉっても奇妙にゃ感覚を続けざまに味わったようにゃ気がするのにゃ。
先ずはにゃ。ふわりと身体が浮かんにゃのにゃ。でもってお次は、にゃにかに引っ張られでもしているように、斜め上へと上昇していく。今思うに、ひょっとしたら、迫ってきた石像のほうへと自ら飛んでいったのかもしれにゃい。にゃらば、ぶつかって当然、のはずにゃのに、そんにゃ覚えは一切にゃい。代わりに訪れたのは、ふわふわ、と宙に浮かんにゃままの感覚にゃ。
ばっががぁぁん!
不意に、にゃにかが砕ける散るようにゃすさまじい轟音。これを耳にして我に返った時には、ネコ人型モードとにゃって地面を踏み締めていたのにゃん。
やがて……静けさが戻ってきた。『またにゃにかあるかも』と、しばらくの間、じっとしていたのにゃけれども、どうやら、それらしき気配はにゃさそう。
(にゃるようににゃったのにゃろう)
そう思って恐る恐る目を開いてみたらにゃ。
「ふにゃ?」
目線の高さが目を瞑る前とは少しばかり、高くにゃっていたのにゃん。
「一体にゃにが……」
頭を下げたらこれまた、びっくり、にゃ。
お腹、両腕、両足、そして尻尾と、身体のどこもかしくもが、ぷよんぷよん、にゃ深碧ともいうべき濃い緑色。おまけに、あの甘い匂いも、ぷんぷん、立ち込めているとにゃればにゃ。頭に、ぴぃぃん、とこにゃいほうがおかしいというもの。
「これは……ヨモギ団子にゃあ!」
生前、ウチが大好きにゃったヨモギ団子。その真ん丸おモチが幾つもくっついた姿とにゃっていたのにゃ。もう嬉しくて嬉しくて。ウチを中心に、全世界が可愛いお花で咲き乱れていくようにゃ気がするくらいの、思いっ切りの感動にゃのにゃん。
(長生きはするもんにゃ。どんにゃ僥倖に巡り逢わにゃいともかぎらにゃい)
試しに顔も触ってみたのにゃ。こちらもぷよんぷよん。でもって頭のほうには、ネコ耳らしき感触がある。
「はて? これとおんにゃじ姿をどこかで見たようにゃ……」
頭の中で、身体の真ん丸オモチが白い霊石へと置き換えられていく。
「そうにゃん!」
見覚えのあるそれは、にゃあまんの石像。ご神体にゃ。
「ウチが……にゃあまん様に?」
んもう、驚きの連続にゃん。
「ねぇ、ミアン君。ミアン君ったらぁ」
(はて?)
声のするほうへと視線を向けてみたらにゃ。幻のようにゃものが浮かび上がってきたのにゃん。霧のようにゃもので形造られた白い球体で、中を覗けば、なじみの顔が。右手の拳とダブって目に映るのにゃ。どうやら、にゃあまん様に取り込まれた時点で、『完全霊体化』とにゃるみたいにゃ。でもって、大きさもそれにゃりに小っちゃいのにゃん。
「ミクリにゃん。大丈夫にゃの?」
「安心していいよ。ケガはないからさ。君のほうは?」
「ウチ? ええと……ええと……ふにゃ? どうにも上手くいかにゃいにゃあ」
かろうじて動いたのは首から上と右腕のみ。あとは全然にゃ。
「にゃんで、こんにゃことに……」
「ねぇ、ミアン君。君は、どうやってこれを動かしているんだい?」
「どうやってって……。普通に自分の身体を動かそうして、にゃよ」
「いいなぁ。ボクには出来ないんだよ。上も下も右も左も、周囲くまなく見渡せるんだけどさぁ。四つ足を幾らばたばたさせても、なんにも反応しないね」
「身体自体は、どういう風に見えているのにゃん?」
「輪郭が緑色に光る透明なネコ人型。まぁそんなとこか。
で、その右手の中にボクが、ぷかぷか浮かんでいるって感じかな。
これってさぁ、あの『にゃあまん』様なんだろう?
伝説の戦神様だよね?
君が羨ましいよ。ふたりで一緒に入ったのに、どうして君だけなの?
不公平だと思わないかい?」
「ウチに文句をいわれてもにゃあ」
ここは、『ネコに文句をいわれてもにゃあ』というべきにゃったのかもしれにゃい。
自慢ににゃるかは別としてにゃ。ウチは自他ともに認めるアホ。にゃもんで、今一つ、状況が呑み込めていにゃい。とても心穏やかではいられにゃいのにゃ。
(これからどうにゃるのにゃん?)
心穏やかじゃにゃいのは、ミクリにゃんもおんにゃじみたい。たにゃ、ウチとは、ちぃとばかし違うのにゃ。こちらに向けられた怪しむようにゃ細めの目つきと声。紡がれた言葉がそれと教えてくれたのにゃん。
「でもさ。元はといえば、ボクたちがお願いごとをしたからじゃないかなぁ。
ねぇ、ミアン君。君には、なにかが起きるって判っていたんじゃないの?
だから、『とにかく願うのにゃ!』って急き立てたんだろう?」
ここでウチは初めて気がついたのにゃ。
(そうにゃ。ミクリにゃんは、あの話を知らにゃいのにゃん)
「実はにゃあ」
ウチはおばあにゃんから教えてもらった花丸印の不思議にゃ力について話したのにゃ。そしたら……、予想通りにゃ。ミクリにゃんの目が丸くにゃったのはいうまでもにゃい。
「へぇ。あれにはそんな力が隠されていたんだ。とすると……、
これはチャンスかもしれないねぇ」
ウチの目に映るは、らんらんと輝くまなざしにゃ。
(ぶふっ。『ネコの目のように変わる』って意味が判った気がするのにゃあ)
おおっ、と。面白がっている場合じゃにゃい。
「ふにゃ? チャンス?」
「にゃあまんって戦神、つまり、神なんだろう?
だったらさ。マロン君のところへ楽々と行けるんじゃないかなぁ」
「マロン君って…………あっ!」
閉ざされたウチの頭の中に、ぱぁっ、と光が射し込んにゃようにゃ思い。
「そうにゃん! それにゃん! にゃからウチはお願いごとをしたのにゃん!
ミクリにゃんにも頼んで一緒にやってもらったのにゃん!」
「ええと……、ひょっとして忘れていたの?」
戸惑い、そして呆れた。そんにゃ思いが含まれた問いかけに対する返事は、ちゃんと決めてあるのにゃ。
「うんにゃ」
ウチは正直者。恥ずかしげもにゃく心のうちを晒したのにゃん。
「君って……。まぁミアン君らしいといえばらしいか」
(うんうん。良ぉく判っていらっしゃるのにゃん)
「でさぁ。一緒に来てくれるんだろう?
君しか、にゃあまん様の身体を動かせないんだ。是非とも君の協力が欲しいんだよ」
いうに及ばずにゃ。ウチの答えは端っから決まっているのにゃん。
「もちろんにゃよ」
「有難う、ミアン君」
嬉しそうにゃミクリにゃんの声。ウチも嬉しい。やっと助ける方法が見つけられたのにゃもん。
……と喜んでばかりはいられにゃかった。
(頭を動かせるってことは……)
「どうやら、ウチは頭に来たみたいにゃん」
「へっ? 怒っているのかい?」
「いや、そうじゃにゃくて」
「はははっ。判っているよ。
そうか。ひょっとしたら、頭を占有した者が、にゃあまん様を動かせるのかも。
……ああ、だとしても、どうしてミアン君なんだろう?」
「にゃあまん様へ真っ先に飛び込んにゃのが、ウチにゃったってことは?」
「なぁるほどねぇ。早い者順かぁ。ほんのちょっと遅れて、ボクは右手、いや、右腕になったってわけだ。いやあ、残念無念、といいたいところだけど……、
まぁいいか。文字通り、ボクは君の右腕になったんだから。うん。悪くないね」
「あのにゃあ」
ミクリにゃんはたいしたものにゃ。こんな状況下でもつまらにゃい冗談をいえるのにゃもん。
「ところで、と。にゃあ、ミクリにゃん。も一つ、問題があるのにゃけれども」
「問題? なんなの?」
「ウチが今、動かせるのって、にゃあまん様の頭と右腕、つまり、ウチらが居るところにゃけみたいにゃんよ。どうしてにゃと思う?」
「君ねぇ……。ネコを見てモノをいって欲しいなぁ。
ボクみたいなアホに聴いてさ。『こうだよ!』って明快な答えが出ると本気で思っているのかい?」
「うんにゃ。『そろそろ出てもいい頃にゃ』と思って」
「そりゃあ、期待はずれだったね」
「みたいにゃ」
にゃはははっ、はははっ、と笑うウチら。でもにゃ。笑い合うにゃけではにゃんにも解決しにゃい。とどのつまりが、はぅう、とふたり同時に深いため息を突く始末にゃん。
(ダメにゃん。ウチらにゃけでは、どうにもことが進まにゃい)
運命の神に見捨てられた感が。ひしひし、と。
でもにゃ。世の中良くしたもので、捨てる神もあれば、拾う神もあるのにゃん。
「恐らく、にゃあまん殿を動かす心の力が足りないのだと思います」
突然、心に届いた声は、いわずとしれたサポーター&アドバイザーのレミロにゃん。
「いつもいつも済まにゃいにゃあ」
「いえ、これもお務めのうちですから、どうか、お気になさらないで下さい」
「これはこれは。いつもにゃがらの丁寧にゃるお気遣い。痛み入るのにゃん」
にゃどの社交辞令ともとれる挨拶を済ませたあとにゃ。
「で? ウチらはどうすればいいのにゃ? レミロにゃん」
「身体全体を動かすには、心の力を高めるしかありません、
協力者が必要と思われます。そちらで補充出来ますか?」
「協力者とはにゃあ」
「ミクリにゃんの気持ちは痛いほど判るのにゃん。
『ネコを見てモノをいえ』とはまさに名言にゃ。
みんにゃもこの際、ネコのプライドを思いやってにゃ。
かける言葉には、もちぃっと配慮すべきにゃんよ」
「アタシもすっごく同意。
『ネコ』を『花の妖精』に置き換えてもいいわん」
「ワタシも。
『ネコ』を『大精霊』に置き換えてもいいんじゃないかしら?」
「はて?
にゃあ。ちぃとばかし、おふたりにお伺いしてもいいのにゃん?
にゃあんか、どちらも予防線を張っているみたいにゃのにゃけれども……、
あんたら、自分の力量を超える頼みごとにゃんて、誰かにされたのにゃん?
そんにゃ身のほど知らず、というか、命知らずが天空の村に居たのにゃん?」




