第十四話『霊華打ち上げ計画始動! 出っ来るかにゃん!』のその①
第十四話『霊華打ち上げ計画始動! 出っ来るかにゃん!』のその①
ぷゆぷゆ。ぷゆぷゆ。ぷゆぷゆ。
何度も、行ったり来たり、を繰り返しているせいにゃろうか。にゃん丸らはウチを覚えてしまったみたいにゃ。それが証拠に、レミロにゃんの保守空間に入った途端、ウチは盛大にゃるお出迎えを受けてしまったのにゃん。
「レミロにゃんはどこにゃあ! 助けてくれると、すっごく嬉しいのにゃけれども」
顔も含めてウチの身体中に、丸っこいのがびっしりとくっついているのにゃ。おかげで身動きが取れにゃいばかりか視界さえも遮られ、どっちが右か左か判らにゃいほど。
「ふふっ。難儀ですね、ミアン殿」
直ぐ近くにゃ。声をかけられあとに、ぽんぽん、と手を叩くようにゃ音が聞こえてきた。
「はい、そこまで。みんな聞いて」
くるっくるっ。くるくるくるくるっ。
ぷゆぷゆ、と賑やかにゃったのが、突然、しぃぃん、と。にゃんとか頭を出してみれば、にゃん丸らの視線が一斉に声のするほうへと注がれているのにゃ。
(さすがは創造主にゃん)
「ねぇ。あなたたちの甘えたい気持ち、とっても良く判るわ。
でもね。ミアン殿は、わたくしがお呼びした大事なお客様なの。
さぁ、いい子だから。遊びたいのなら向こうへ行ってお遊びなさい」
(おとなしく聴いてはいるみたいにゃのにゃけれども……、果たしてどうにゃるか)
言葉ぐらいじゃ、と気を揉んでいたらにゃ。『イイヨ。ぷゆぷゆ』『マタアトデ。ぷゆぷゆ』にゃどと口々に叫びつつ、いともあっさりとウチの元から遠ざかっていったのにゃ。
(ふぅ。やっとにゃ。ほっ、としたのにゃん)
「どうも済みませんでした。それにしても……」
言葉が途切れた、と思う間もにゃく、目の前に幻覚のようにゃ、ゆらゆらぁっ、としたものが浮かび上がってきたのにゃ。
(レミロにゃん?)
あっという間に、実体を見るのとおんにゃじまでのくっきり感。にゃん丸らを優しげにゃ目で追っている姿がそこにはあったのにゃん。
「ミアン殿。あなたは、にゃん丸たちに大層好かれてしまったみたいですね」
「ウチが? そうにゃのにゃん?」
半信半疑にゃ気持ち。でもにゃ。こちらを振り向いて、こくり、とうなずいたレミロにゃんの顔も、続く言葉も、真実味に溢れているのにゃん。
「しかも、かなりですよ。あなたがいらっしゃらない時でも、
『アノオネエチャン、イツクル? イツクル?』とそればっかしなのですから」
「きっとお客さんが珍しいのにゃろう。ウチ以外、誰か来るのにゃん?」
「いいえ。というよりも来られません。外側はミスト殿の守りがありますし、仮にそれが破られたとしてもです。おいそれとは辿り着けません。保守空間という性質上、むやみやたらと外部者を入れるわけにいきませんから、いろいろと細工が施されてあるのです」
「にゃら、ウチは?」
「前にいいましたでしょ? あなたの身体にイオラ殿の命の欠片がある以上、わたくしはあなたをイオラ殿かイオラ殿の使者とみなさなければなりません。だから、あなたが『来たい』といえば無条件で通します。いえ、通さなければならないのです」
「うんにゃ。聴いた覚えがあるのにゃん」
「もっとも……今では、あの子たちが勝手に入れてしまうかもしれませんね。
顔パスってわけです。ふふっ」
「そんにゃまさかぁ」
とは口にしたものの、そういってもらえるくらい親しくにゃれたのかと思うと、まんざらでもにゃい気分にゃ。
「いえ、十分あり得ます。見ての通り、ここはわたくしとにゃん丸たちだけで他には誰も居ません。そして造り手とはいえ、わたくし自身は翅人型の影霊。加えて賑やかな性格でもないのです。会話もしょっちゅうしますし、身体をすり寄せても来ますが、にゃん丸たちにとってはなにか今一つ物足りないようです。話題にせよなんにせよ、盛り上がるようなことが起きた試しのないのがこれまででした。
ところが……です。あなたが姿を見せた途端、にゃん丸たちは色めき立ちました。今まで誰も来なかったところへ、しかも、自分たちに近い姿のものが現われた。興味も然ることながら、親しみも覚えたのでしょうね。今までに見たこともないような燥ぎっぷりです。こんなに楽しそうなにゃん丸たちを見るのは初めてです。こっちまで嬉しくなります。同じ空間内なのに、別世界へと変わった感すらあります。それもこれも全てあなたのおかげです。
ミアン殿。特に用事なんかなくても結構です。暇潰しでも構いませんから、時々は顔を見せに来てくれませんか? あの子たちの造り手として心からお願いします」
「レミロにゃん……」
初めてにゃん。今までに一度もにゃかった。『来てくれませんか』と相手から懇願されたことにゃんか。自分というものの存在を喜んでくれる者らが居る。必要としてくれる者らが居る。化けネコにゃのに心に熱いものが込み上げてきたのにゃ。
返事に迷いはにゃい。思いは言葉とにゃって口から吐き出されたのにゃん。
「うんにゃ。是非とも遊びに来させてもらうにゃん」
残念にゃことに、今日は遊びに来たわけじゃにゃい。
刻々と移り変わる色彩空間に浮かぶ何枚ものパネル。ウチはこれらのパネルに目一杯映し出されている映像を、左側から順に一つ一つ、眺めていったのにゃ。
ヴィナにゃんの居る空間、霊穴路……造りかけも含めてにゃ……の各区間、射出する火口、そして空へと。ウチの視界の中に計画の全貌がすっぽりと収まっているのにゃん。
「どうです? 感想は」
「たいしたものにゃん。ここまで判るにゃんて」
「今回は観測区域が短いから楽なほうですよ。おかげで使うスバルも少なくて済みます。いつもみたいに検索したり、ぺらぺらとめくる手間が省けてなによりです」
レミロにゃんとのお喋りの間も、ウチの目は映像の一つ一つに注がれていたのにゃ。ミクリにゃんばかりじゃにゃく、ミムカにゃん、ミリアにゃん、ミストにゃんもまた、それぞれ違うパネルに映っているのにゃ。
先に行にゃわれた会議で決まったミムカにゃんの担当は霊穴路の補修係にゃ。にゃんでも、『造る』よりは『改造す』ほうが得意ということで、『だったら』とミクリにゃんに勧められた結果、『いいでありまぁす』といつもの如くの軽い調子で承諾したのにゃん。
ミリアにゃんとミストにゃんは、『地の妖精を追っ払おう』係にゃ。
地中は地の妖精が一杯。しかもにゃ。神霊ガムラが地霊ということもあってか、妖精とはいえ、並々にゃらにゅ霊力を持つ。『こんにゃ者らに近づかれたら、霊穴路にゃど造った先から壊われてしまう』との危機感から設けられた担当にゃ。
どうしてこのふたりにゃったかといえば……。
ミリアにゃんはにゃ。実体・霊体問わず、相手を無気力化させてしまう『無気力波』にゃる霊力が使えるのにゃ。
一方、ミリアにゃんはにゃ。『ぷよぷよ水』という霊力を放つことが出来るのにゃ。
この透明にゃ液体に身体を覆われたが最後、一切の霊力が使えにゃくにゃる。閉じ込められたまま身動きが取れにゃくにゃってしまうのにゃん。
またこれとは別に『溶解水』というのも使えるのにゃけれども……、こっちは説明することさえはばかれるほど、危にゃっかしい霊力にゃもんで使用禁止としたのにゃ。
どちらも一癖も二癖もある霊力……にゃのにゃけれども、地の妖精を追っ払うには極めて有効にゃ手段かもしれにゃい。ミロネにゃんも、きっとそう思ったのにゃろう。『どうだ? やってみないか?』とふたりに勧めたのにゃ。これが利いたのにゃろう。ミリアにゃんもミムカにゃんも二つ返事で承諾したのにゃ。
(ひょっとしてみんにゃイヤがってやらにゃいかも)
この係が設けられる、と決まった時のウチの憶測にゃ。それをモノの見事に打ち砕いて、意外にあっさりと決まったのにゃん。
(とはいえ、最初の頃は大変にゃったにゃあ)
どこをどう間違えたのにゃろうか。こともあろうにミリアにゃんは、お願いしていた作業現場の外側……霊穴路へと集まってくる地の妖精ら……に、ではにゃく、内側……仲間の地中ネコやミストにゃん……に向かって『無気力波』を浴びせたのにゃ。首輪をメガネに変えたあと、左右のレンズから『光沢鮮やかにゃ緑色の真ん丸輪』が放たれるさまをパネルの映像で見た時には、ウチもレミロにゃんも立ち上がったまま開いた口が塞がらにゃかった。おかげで作業は中断。再開のめどは当分立たず、とまぁ笑うに笑えにゃい一幕も。
ミストにゃんも相当、頭にきたみたいにゃ。復活するや否や、お返しとばかり、ミリアにゃんを、ぷよぷよ水に閉じ込めてしまったのにゃもん。
「へらへらと笑った顔で謝って……、
それで許してもらえると本気で思っているのかしら?
この中で少しは頭を冷やすことね」
冷たく告げた言葉通り、お仕置きは作業が再開されるまで続いたのにゃ。さしものミリアにゃんも応えたのにゃろう。それから以後は慎重に作業をこにゃしているとみえ、トラブルめいたことは一つも起きていにゃい。
(ミストにゃん。感謝にゃ)
「打ち上げの準備にゃあ、とばかりに、第十四話の始まりにゃあん!」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「全くぅ。ミリアにゃんにも困ったもんにゃあ」
「でもやることがあるだけまだいいわん。
アタシなんか、『これはまだ早い。あれはやっちゃダメ』って制約多すぎ。
とどのつまりが、なんにも出来ないから、つらいわん」
「いいじゃない。これでミーナちゃんもワタシのお仲間。
どう? ミアンちゃんもこっちに来ない?」
「えっ。アタシがお仲間? ミアン、助けてぇ!」
「全くぅ。イオラにゃんにも困ったもんにゃあ」




