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第十三話『霊華作戦開始にゃん!』のその④

 第十三話『霊華作戦開始にゃん!』のその④


「それは……困ったわん。困ったわん。困ったわんったら困ったわん」

 ミーにゃんが眉間にシワを寄せ、いつににゃく真剣にゃ面持ちにゃ。

「村を灼熱の大地にするわけにもいかず。かといって、ひっくり返して毒ガスの雲海に落とすわけにもいかず。しかもその上……」

(その上? はて?)

「ミーにゃん。他に一体にゃにがあるのにゃん?」

「モワン、忘れたの? 『アタシの心をときめかす』っていう、ミーにゃん同盟最大の作戦を」

 とどのつまり、『ミアン』とは呼ばれにゃいまま、『モワン』に戻ってしまったのにゃ。

(でもまぁ今はそれより)

「あのにゃあ。最後の作戦は先の二つを片づけてからでもいいと思うのにゃけれども」

「モワン。なにをいっているのわん!」

 ミーにゃんは立ち上がると、ぱたぱた、と羽ばたかせにゃがら、ウチの頭よりもほんの少し上の高さまで身を浮かばせたのにゃ。

 びしっ!

 左手を左腰に当て、右手のネコ差し指をこちらに突きつけるという、誰もが良くやる指差しポーズ。思いっ切り、上から目線の顔つきにゃ。

(まぁ高いところに居るのにゃもん。当たり前といえば、当たり前にゃのにゃけれども)

 ミーにゃんお得意の無理難題発言がここでも飛び出したのにゃん。

「困難があればあるほど立ち向かう。それがアタシたちミーにゃん同盟だわん!」

「ふぅぅん。そこまでいうの。……なら」

(おおっ! にゃんか黙っているのにゃあ、と思っていたら)

 ミーにゃんのいいたい放題に我慢していられにゃくにゃったとみえる。ミストにゃんがついに沈黙を破り、口を出してきたのにゃん。視線の先はもちろん、指差しポーズを決めたばっかのミーにゃん。ぱたぱた、と羽ばたいて視線の高さがおんにゃじくらいににゃるまで上昇。向かい合うや否や、両腕を組んで、『これがわたしの敵ね』といわんばかりに問いつめ始めたのにゃ。

「是非ともリーダーのミーナに、三方を満足させる解決策を教えて欲しいものね」

「えっ!」

「まさか、この期に及んでなにも考えていないとはいわないわよね、ミーナ」

「うっ……」

 ミーにゃんは声を詰まらす。これ一つとっても、ミストにゃんのいう、『まさか』以下が真実であることは一目瞭然。

 ……とはいうもののにゃ。本当のことをいえば、誰も期待してはいにゃかったと思う。でもそこはそれにゃ。ミーにゃんの暴走をとめる切り札として使おうと、みんにゃ口を噤んでいたにゃけ。知らにゅはミーにゃんばかりにゃり、というわけにゃん。

「だ、だから、それは……」

 苦し紛れに、とかいう感じで、ミーにゃんは仲間ひとりひとりに目を向けたのにゃん。誰かに助け舟を出してもらいたい風にゃのがありありにゃ。しかしにゃがら、物事ってそうそう上手くはいかにゃい。ミーにゃんを中心に世界が回っているわけじゃにゃいのにゃ。手を上げる者にゃど、ひとりとして居るはずもにゃい。

「……モワアァァン」

 たまらにゃくにゃったのにゃろう。ウチを見つめ、救いの手を求めてきたのにゃ。本来にゃらば、そっぽを向いて然るべきところ、にゃのにゃけれども、ミーにゃんのすがるようにゃまなざしにウチはとにもかくにも弱いのにゃ。いつもメロメロにゃのにゃん。

(ミーにゃんが困っているのにゃ。にゃんとかしにゃければ)

 そう思ってしまったのにゃん。


 にゃもんで、心のうちを暴露することにしたのにゃん。

「要するににゃ。マグマにかかった霊圧をどこかに開放すればいいのにゃん」

 ウチを除くみんにゃが、こくり、とうなずく。

「残念にゃことに今回はにゃ。『噴火』という従来の方法では村を危険に晒す恐れがあるらしいのにゃ。

 にゃら万事休すか、というとそうでもにゃい。今もいったようにヴィナにゃんにはマグマの霊圧を霊力へと換える力があるのにゃ。そこでにゃ。

 どうにゃろう、みんにゃあ。ウチらの手で霊力の通り道みたいにゃもんを造れにゃいにゃろうか? 他の霊力とは一切の干渉をしにゃい、隔絶された通路にゃん。ヴィナにゃんから一番近くの火口まで繋げてにゃ。一気に放出してもらうのにゃ。これにゃらマグマや地の妖精らを刺激しにゃいし、今のように時間をかけにゃくても済むはずにゃん」

「あのぉ。ちょっと聴いてもいいでありますかぁ?」

 ミムカにゃんが手を上げての質問にゃ。

「でもミアン。仮にそれが造れたとしてもですよ。火口から先はどうするのでありますかぁ? ただ出すだけでは、地表におびただしい霊力が降り注ぐことになりますですしぃ。そうなったら、地上の草木や生き物に悪影響を及ぼすのは必至と思いますですけどぉ」

 にやり。

(うんにゃ。『我が意を得たり』の質問にゃん)

「今、ミムカにゃんが口にした難題についても一つ、解決案があるのにゃ。

 それはにゃ。……ずばり、上空にゃん!」

「はて? 上空とは?」

「ミムカにゃんも知っての通り、地中と違って上空は、星々が拡がる宇宙へとも繋がる広大無辺の空間にゃ。当然、霊力の許容範囲も桁違いに大きい。溜まりに溜まった霊力の受け皿先としてこれ以上、安全で最適にゃ場所がどこにあるというのにゃ。

 にゃもんで……、

 ウチとしては火口まで上がってきた霊力を是非がでも上空まで届かせたいのにゃん!」


 ここまで一気に喋って気がついたのにゃん。みんにゃがみんにゃ、不思議そうにゃ顔をしてウチを眺めていることに。ややあって最初に口火を切ったのはウチの親友にゃ。

「モワン……。なんかモワンじゃないみたい。

 こう……なんていうか、とてもお利口さんに見えるわん」

「にゃんと!」

 思いもよらにゅ発言。続いて他の友にゃちからも、

「そうね。お利口さんかも」「ダマされました。お利口さんだったんですねぇ」「ちぇっ、裏切られちゃったなぁ。まさか、お利口さんだったなんてぇ」「お利口とは……、どうやらオレには、ネコを見る目がなかったようだ」「信じられませんです。お利口なんて反則行為をするなんてぇ」

 冷たい視線と冷たい言葉の集中砲火にゃ。一瞬、たじろぐウチ。でもにゃ。直ぐに反撃に打って出たのにゃん。

「と思うにゃろう? ところがにゃ」

 ウチは、自分の放り投げた石が自分の頭にぶつかった話をしたのにゃ。痛くて痛くて転げ回ったことや、実体波を造り治したこともにゃ。途端に、翅人、ネコ型問わず、全員が二つ足で立ち上がったのにゃ。みんにゃの目が、きらきらぁ、っと輝き、胸の前で両手のひら……ネコ型は前足の肉球にゃ……を合わせたのにゃん。

「そうね、アホだわ」「嬉しいです。やっぱり私たちと同じアホさんだったんですねぇ」「そうか、アホか。ほっ、とした。オレのネコを見る目に間違いはなかったようだ」「信じていましたですよぉ。アホだってぇ。正しい者は勝つってぇ」

 誰もが、アホ、アホ、アホ、と、賞賛及び感動の嵐にゃ。当然、気分は最高……にゃったのに、続けて喋ったミクリにゃんの一言が、ウチの心を激しくゆさぶったのにゃん。

「うん。アホだね。ひょっとしたらボクよりもアホかもしれない」

「にゃ、にゃんと!」

 ウチはがく然としてしまったのにゃ。

 ミクリにゃんこそ、アホのNo.1。ウチらのアホを覆い隠してくれる、巨大にして最後の砦とにゃるアホ。そう信じていたからにゃ。

(まさか、ウチがアホの頂点に立ってしまうにゃんて……。

 いんにゃ。あってはにゃらにゃいことにゃん!)

「にゃんのにゃんの。ウチにゃんてミクリにゃんに較べれば、クズ同然にゃよ」

「ふふっ。まぁそうだろうねぇ。なんといってもボクのアホは筋金入りだからねぇ」

「うっ」

 ……どうしてにゃろう。この自慢げにゃ口調と肩をそびやかすようにゃ態度を目の当たりにして、ほっ、としたのと同時に、悔しい、と思ったのは。

(にゃにゃにゃかもって複雑にゃんよ。ネコの心って)


「にゃんにゃの? ミーにゃん。

 どうして、そんにゃ疑い深そうにゃ目つきでウチを見つめているのにゃん?」

「見つめたくもなるわん。

 ミアンって、本当はお利口さんなんじゃないの?」

「うんにゃ。お利口さんにゃんよ」

「えっ。本当わん?」

「当たり前じゃにゃいの。ミーにゃんとウチとは生まれてから、ずぅっ、と一緒にゃんよ。

 そのミーにゃんがそう思うのにゃもん。きっとそうにゃ。

 でもまぁ念の為にゃ。ウチのこれまでの一挙一動を想い出してごらんにゃさい」

「一挙一動をねぇ。うぅぅん、とぉ…………。

 あれっ? どう想い出してもアホとしか思えないわん」

「にゃら、それが正解じゃにゃいの?」

「そうかも……ううん、間違いないわん。ミアンはアホ。アタシの大事なアホだわん」

「ミーにゃん。そこはにゃ。大事にゃ親友といって欲しかったのにゃけれども」

「てへっ」


「ただ今ぁ。

 あら。出かける前のぎすぎすした雰囲気とは違って、ずいぶんと和やかね。

 なにかあったの?」

「うんにゃ。全てはイオラにゃんがくれた命の欠片のおかげにゃんよ」

「そうそう。イオラのおかげなの。有難うわん」

「なんなの、急に。喋り方だって奥歯にモノが挟まったような感じで変だわ」

 ぎょっ! ぎょっ!

「確かめてみる必要があるわね。

 ミーナちゃんもミアンちゃんも、ちょっと口を開けてくれないかしら?」

「口を?」「にゃんで?」 

「ほら、早くして」

「あぁぁん」「あぁぁんにゃ」

「どれどれ。

 ……あら。ふたりとも、なぁんにも挟まっていないわね。

 やっぱり、気のせいかしら」

「ふぅ」「ふぅ」


「にゃあ、ミーにゃん。あれって、『たとえ』じゃにゃいの?」

「しっ。

『気のせい』で決着がついたんだから、これ以上、波風を立てる必要はないわん」


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