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第十一話『温泉で寛ぐのにゃん!』のその⑤

 第十一話『温泉で寛ぐのにゃん!』のその⑤


 ウチの問いに対するミムカにゃんの返事は至って明快。

「それは知りませんです」

「あのにゃあ」

『にゃら、どうする気にゃん?』と半ば呆れ気味のウチの心へ、待ってましたとばかりにタイミング良く、いんにゃ、奇跡と思えるくらい実にタイミング良く声が届いたのにゃん。

「ミアン殿、心配しなくても構いません。わたくしが霊覚交信で案内して差し上げます」

「レミロにゃん!」

 一番頼りにしていいであろう相手の言葉にゃ。実際に友にゃちの契りをまにゃ結んではいにゃいのにゃけれども、心ではもうとっくに友にゃちとにゃっている者の言葉にゃん。


 ぶくぶくぶく。ぶくぶくぶく。

 このままじゃ無理ってことで、

(当たり前にゃん)

 霊体の、透き通った身体とにゃったウチとミムカにゃん。湧き出るお湯の泡が身体に当たる時のにゃんともいえにゃい心地良さ味わうことにゃく、温泉の中を下へ下へと泳いでいくのにゃ。無念にゃ気もするのにゃけれども、『熱いものを凌げるにゃら』と、ここは忍の一字。我慢のしどころにゃん。

「一体どこまで泳ぐのにゃん? まさか温泉の底まで?」

 ウチの問いかけた相手は、もちろん、レミロにゃん。

「いえ、もっと下です」

「もっと下って……、ひょっとして地中にゃの?」

 次に心に届いた返事は、ウチの予想をはるかに超えるとんでも発言。

「そうです。しかもかなり深くまで潜らなければなりません。

 なにせ、熱く煮えたぎるマグマのど真ん中ですから」

「い、今にゃんと!」

「な、なんていいましたですかぁ!」

 ウチとミムカにゃんは顔を見合わせ、驚きの声を。もちろん、泳ぎはストップにゃ。

「マグマのど真ん中です。ヴィーナス殿の霊跡はそこで消えていますが、にゃん丸の気配は、はっきりと確認しました。間違いありません」

「で、でもぉですよ」

 ミムカにゃんの引きつったようにゃ声。身体も小刻みに震えているのにゃん。

「マグマの中はとてつもない霊力線の嵐が吹き荒れる『霊力場』だって聞いた覚えがありますですよ。そんなところにミムカたちが行けるのですかぁ?

 大体、霊跡が消えているなら、どうやって辿り着くのでありますかぁ?」

「ミムカにゃん。落ち着きにゃさい」

 冷静さを欠いていては出来ることも出来にゃくにゃる。ウチが口にしたのは自分自身への戒めの言葉でもあるのにゃ。

「ウチらにはペンダントのゼノンがあるのにゃ。きっと大丈夫にゃん」

 そうは口にしたものの、暗雲が心の中でどんどん拡がっていくのを抑え切れにゃい。

 と、ここでにゃ。

「その通りです、ミアン殿」

『おおっ!』

 ふたり同時にゃ。目を大っきく見開いて喜びの悲鳴。

 ウチらの不安を払拭をするかのように、随時、話しかけてくれるレミロにゃん。声が届くということがこれほど、有り難いものにゃったとは。ウチらは孤立していにゃい、との安心感も然ることにゃがら、励まされているようにも思えて、とぉっても嬉しいのにゃん。とおっても勇気づけられるのにゃん。

「ゼノンに収められた五つの宝玉が守ってくれます。ヴィーナス殿の元へと連れていってくれます。なに一つ心配は要りません」

 ほっ、と顔を向き合わせるウチらふたり。でもにゃ。続けて聞こえてきたのは、『ですが、これだけはいっておきます』との、警句が始まると予想される決まり文句にゃ。にゃもんで、ちょっとばかし緊張気味に心を澄ましたのはいうまでもにゃい。

「ミムカ殿。どんなことがあっても、ミアン殿から離れてはいけません。ゼノンのそばに居て下さい。それを守ってくれるかぎり、安全です。

 保守空間マザーミロネの名をもって保証して差し上げます」

『おおっ!』

 再び、ふたり同時に喜びの悲鳴にゃ。

(さっすがはウチらのサポーターにゃ。にゃんとも心強い言葉にゃん)

「判りましたです! はい!」

 返事に力が入っているのにゃ。どうやら、ミムカにゃんもウチと心はおんにゃじみたい。

「もっとも……、

 今のマザーが保証するといっても、どれほど安心されるかは判りませんが」

「いいえ、信じますですよぉ!」

「ウチもにゃん!」


 今ににゃってやっと、昨夜イオラにゃんのいわんとしたことが判った気がするのにゃ。

「ミアンちゃんが逢おうとしているマミ(=マザーミロネ)ちゃんはね。神霊ガムラを含めた、いわゆる『六大精霊』の中のひとりなの。天空の村に棲む数多くの霊体の中でも、最強クラスの霊力を持つ部類に属する空間霊体よ。彼女がなにをいおうが、自分のことをどう思っていようが、それは昔も今も変わらないわ。ワタシたちの信頼に足る知力と霊力とを、ともに兼ね備えた大精霊なの。

 いいわね、ミアンちゃん。それだけはしっかりと覚えておいて」


 保守空間にてレミロにゃんは意味ありげにゃ言葉を口にしたのにゃけれども、ウチにはどうでもよくにゃった。にゃって守護神の、おんにゃじ大精霊のイオラにゃんが認めているのにゃもん。

 六大精霊と呼ぶに相応しい力が今もマザーミロネにゃんにはあると。

 信じてもいい、とにゃ。

 レミロにゃんはその精霊の名をもって安全を保証するといったのにゃ。これ以上に安心感を与える言葉が他にあるのにゃろうか? いや、あるはずがにゃい。

 ミムカにゃんの顔には、ようやく落ち着きを取り戻した表情が。

 ウチもおんにゃじにゃったのに違いにゃい。


 ウチらは泳いで温泉の底へ達し、更には地中へと。『前足でかき分けて、後ろ足をばたばたさせて』の泳ぎ姿はウチもミムカにゃんも変わらじ。

 そして地層を抜け……、ついに!

 黒っぽい岩の中で地中の力を秘めた赤色の煌めきが蠢く空洞へと到達したのにゃ。


 ぴかぁん!

 宝玉から一斉に放たれた五つの光が、ウチとミムカにゃんを包み込む。赤、青、黄、緑、紫と、繰り返し色の変わる霊波の防壁。ウチらを守ってくれる強い味方にゃ。

 ごっごっごっごっごっ!

 眼下にはマグマの流れる灼熱の川が。川全体のほとんどを覆う赤い煌めきを一字で表わすとするにゃら、そうにゃにゃあ、さしずめ、『静』といったところにゃ。でもって、ところどころで波飛沫のように、ばぱっ、と弾けて、『にゃんでも溶かしちゃうにゃよぉ』との意気込みを見せつけている黄色い煌めきは、『動』でいいかもにゃ。全体を見渡せば、『まぁここは抑えて抑えて』とでもいわんばかりに、『静』が『動』をなだめている、といった格好。いわば、ウチとミーにゃんとの関係にゃ。もちろん、ウチが『静』で、ミーにゃんが『動』にゃのはいうまでもにゃい。

(本当、かっか、と来た日にゃ、大変にゃのにゃ……って、

 こんにゃところでウチはにゃにを考えているのにゃろう?)

 霊体にゃもんで熱さは少しも感じにゃい。それよりも問題にゃのは霊力場のほう。天井の岩盤から霊力線が撒き散らされ、マグマの川を貫通するさまは、実体波が造ったウチの身体でさえ、身の毛がよだつほど。にゃんともすさまじい勢いにゃ。こんにゃものを見せつけられては、『びくつくにゃ』というほうが無理というもの。

「ミアン。大丈夫でしょうか?」

 再び不安げにゃ自称『森の妖精』。ウチとて気持ちは一緒にゃ。……それでも。

「大丈夫にゃよ。さぁ行こうにゃん」

「……はい、です」

 ここまで来て今更あとには引けにゃい。ミムカにゃんもおんにゃじ思いのはず。にゃらば悪戯に不安を増長させるよりも、『ここは気張るのが賢明』と判断したのにゃ。

 と、ここでまたまたレミロにゃんからの交信にゃ。

「わたくしも。いえ、わたくしだけじゃありません。

 ミアン殿のそばには、もっと強力なサポーターがついているじゃありませんか」

(強力にゃ? はて?)

 問い返そうとしたその時にゃ。

 ぴゅうぅっん!

「ミムカにゃん。これは……」

「恐らく、……じゃないですか」

 にゃんと、ウチらの周りを覆っている宝玉の光がマグマの一点へと延びていくのにゃ。

(ヴィーナスにゃんへの道案内をしようとしているのにゃ。そうに違いにゃい)

 ウチとミムカにゃんはうなずき合うと、宝玉に導かれるままマグマの中へと突入したのにゃん。


「第十一話もめでたく終了にゃあん!」

 ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。


「やったわ! ついにワタシの出番が!」

「『回想』で、にゃのにゃけれども」

「いいじゃないの、ミアン。あんなに喜んでいるんだし」

「これで一躍大スター! かしら」

「ミーにゃん、今の聴いた?」

「うん。しかとこの耳で」

「にゃあんか、くるべきものがきたようにゃ……。

 とうとうお空のお星様とにゃったのにゃん」

「うん。冥福を祈るわん」

「ねぇ、ミーナちゃん、ミアンちゃん。どうしてそんなに暗いの?」


「んもう。困ったもんだわん。こんな間違った認識をしてもらっては困るわん」

「どうしたのにゃ? ミーにゃん。にゃんかエラいご立腹みたいにゃのにゃけれども」

「お話よ。

『もちろん、ウチが『静』で、ミーにゃんが『動』にゃのはいうまでもにゃい』

 なにこれ? おまけにさ。

『本当、かっか、と来た日にゃ、大変にゃのにゃ……』

 これもなんなの?

 まるでアタシが手に負えない子かなんかにみえるわん」

「…………」

「…………」

「……ふたりのその沈黙はなんなのわん……」


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