第十一話『温泉で寛ぐのにゃん!』のその④
第十一話『温泉で寛ぐのにゃん!』のその④
「ちょっと待って下さいませです」
ミムカにゃん今、ウチとおんにゃじネコ人型モード。手ぬぐいを両手で持って顔を拭き始めたのにゃ。
(濡れたままじゃあ、喋るどころじゃにゃいものにゃあ)
「ふぅ。さっぱりしましたですぅ」
そういってウチと向き合ったのにゃ。どちらも、『肩までをお湯に浸からせ、手ぬぐいは頭の上に』の格好。身体のくっきり感が一緒にゃので、ウチとおんにゃじくらいに温泉の温もりを満喫していると思うのにゃ。
湯煙が立ち上るゆったりとした雰囲気の中、ミムカにゃんがあらためてウチの『脅かしっこにゃし』への返事を口に。
「脅かす気なんてこれっぽっちもありませんです。
ミムカは森の妖精。イオラの森の全てが、我が家なのでありますですよぉ」
(やれやれ、にゃん)
「『自称』にゃろ? それって」
「ミもフタもないことをいってはダメでありまぁす。
ミアン。信じる者は救われる。この精神でいこうですよぉ」
ウチはふと誰かさんを想い出す。
「ミムカにゃん。あんたまでミリアにゃんぽいことを……」
「そんなぁ」
今までの勢いはどこへやら。がっくり、とうなだれるミムカにゃん。一回、湯船に頭ごと沈んにゃものの、直ぐに、ぷわっ、と息を吐きつつ、浮き上がってきたのにゃ。
「アレと一緒にされた日には、もうどうやっても生きていく気が」
(当の妖精が居にゃいと思って、いいたい放題にゃ)
「まぁウチにはどうでもいいことにゃ。……にしても、ミムカにゃん。あんたの身体から、やたらと熱気が、むんむん、と伝わってくるのにゃけれども」
「これは湯煙のせいでありまぁす。ミムカって周りの状況に感化されやすい妖精なのですよぉ。なので、今日からは『湯煙の美少女』と呼ぶこと、よろしくお願いしまぁす」
にこりっ、と微笑んで、ぺこりっ、と頭を下げる。素直で純にゃ美少女を演出しているのにゃろうけれども、ウチは気に食わにゃい。
(にゃんと生意気にゃ)
「イヤにゃん」
ぷいっ、とそっぽを向いたのにゃん。
「おや。どうしてでありますですかぁ?」
(理由にゃんかどうでもいい。それよりもにゃ)
と、ここで一つの条件を提示したのにゃ。
「にゃら、ウチのことも『湯煙の美少女ネコ』って呼んでくれるのにゃん?」
(まぁ返事は察しがつくのにゃけれども)
「ふははは……。いや、努力するってことでいかが? でありますかぁ?」
(にゃと思った)
「今の笑いと『努力』の言葉が、否定を意味しているのにゃん」
「今はまだだ、ってことでありますよ。いつか将来、きっと」
「にゃら、ウチもその時まではお預けにゃん」
「ううっ。まさかの逆襲でえぇす。残念でありまぁすっ」
ぽたっ。ぽたっ。
涙、にあらずにゃ。ミムカにゃんのほおを伝っているのは、湯煙が顔に当たって出来た雫で、多分ウチも似たような顔のはず。にゃもんで、『湯煙の美少女』問題を先送りして、いつもにゃがらの他愛もにゃいお喋りへと移行したそのあとでも、ふたりで談笑しては顔を拭き、顔を拭いては談笑を、の繰り返しにゃ。
「にゃあ、ミムカにゃん。ウチらは霊体にゃんよ。にゃのに、こうやって温泉のお湯が楽しめるのにゃ。良ぉく考えてみれば、不思議にゃ話かもしれにゃいにゃあ」
ミムカにゃんが濡れた顔で、にこっ、と微笑む。
「別世界だから。それで十分じゃありませんですかぁ。浮世を離れたこんなところまで来ておいて、ああだこうだと考えるのは野暮ってものでありまぁす」
(うんにゃ)
我が意を得たりの返事にゃ。『浮世を離れたこんにゃところ、って、ここにゃってイオラの森の中にゃよぉ』とのツッコミを考えにゃいでもにゃいのにゃけれども、それこそ、野暮というもの。にゃもんで、ここは素直にミムカにゃんの気持ちに同感にゃ。
「そうにゃそうにゃ。ここは別世界にゃもんにゃあ」
お湯といえども『存在する』もの。霊力があるのにゃ。ウチらとお湯のそれぞれが常に霊波を自然放出しているのにゃ。これら霊波同士の干渉する度合いが強いからこそ、温泉の温もりを堪能出来る、とは判っているのにゃけれども……。
(『別世界』という言葉で括ったほうがにゃんとにゃく心地いいのにゃん)
イオラの森の中とはとても思えにゃい風情がここにはある。ウチは、いや、恐らく、森に棲むみんにゃが、『いつまでも大事にしたい空間』と考えているのに違いにゃい。
「ところでミムカにゃん」
「はい? なんでありますですかぁ?」
「お湯の中から、ずぼっ、と現われた最初は、にゃんか、とがめるようにゃ口調にゃったじゃにゃいの。あれって一体?」
「はて?」
ミムカにゃんは腕を組んで考える仕草を。しばらくすると、ぽん、と手を打ったのにゃ。
「ふははは。そうでありましたですねぇ。ふははは」
「にゃははは」
(笑いも伝染するのにゃん)
相手の笑いに引き込まれ、ついついウチも笑いを。
温泉という別世界の中でふたりの笑い声が木霊している。そう気づいた矢先にゃ。
「ふははは……って、笑いごとじゃありませんですぅ!」
いきにゃりミムカにゃんが豹変。戸惑うウチを、びしっ、と指差し、勢いある言葉を続けたのにゃん。
「ここへ来たのはヴィーナス様の捜索が目的じゃありませんですかぁ!」
「にゃんと!」
ウチはびっくり仰天。
「にゃんでミムカにゃんがそのことを?」
「なんで、っていわれましてもですねぇ」
目の前の相手は、やれやれ、といった感じにゃ。
「あのですねぇ。保守空間の中に居るレミロさんの霊覚交信は天空の村全域に届くのでありますよぉ。今回の件に関してはヴィーナス様のことも含めて、
『片がつくまでは、「閉じた交信」にてミーにゃん同盟のみなさんへ、情報が届くように手配致します』
ともいっていましたですねぇ」
本来、霊覚交信の会話は霊体であれば誰でも参加出来るのにゃ。話すことも聴くことも出来る。でもにゃ。交信の内容次第では特定の相手とにゃけしたい場合もあるのにゃ。そこで使われるのが『閉じた交信』。誰と誰と誰の間でのみ、といった風に、あらかじめ決めておいた者らにゃけしか交信出来にゃい仕組みにゃん。
「おや? ミムカにゃんもレミロにゃんに会ったことがあるのにゃん?」
「直接、面識はありませんですが、ミストから聴いたことがあるのでありまぁす」
「にゃるほど。ミストにゃんかぁ」
納得にゃ。ウチがレミロにゃんのところへ行けたのも、ミストにゃんのおかげにゃもん。
(まっ、レミロにゃんのことはさておきにゃ)
ミムカにゃんが受け取ったメッセージとやらをウチも思い巡らしてみたのにゃん。
そうにゃにゃあ。いわれてみればぁ……、
そうそう、果物園で食べるのに夢中ににゃっていた時とかぁ、
あと、『ひょっとして温泉がゴールかも』にゃんてわくわくしていた時にゃんかとかぁ、
にゃんというか、他のことに気をとられていた時にゃんかに、心の中でにゃにかが、ざわめいていたようにゃ覚えがあるのにゃあ。
「もしかすると、あれがそうにゃったのかもしれにゃいのにゃあ」
「『もしか』でも、『かも』でもなくて事実でありまぁす」
「ミムカにゃん。そうはいってもにゃ。内容をちゃんと理解出来るまでには至らにゃかったのにゃよ。こちらにもいろいろとあったからにゃ」
「宝玉集めですねぇ。なら、無理もありませんですよ」
「まぁ霊覚交信があったのにゃら、事情を知っていても不思議じゃにゃい……か。
すると、ミムカにゃんがウチの目の前に現われたのは」
「もちろん、一緒にヴィーナス様のところへ行こう、ってわけでありまぁすっ」
「それは助かるのにゃ」
捜索仲間が増えたのにゃもん。『ウチひとりでどうやって?』と思っていたにゃけに有り難いかぎりにゃ。
「で、ヴィーナスにゃんとはどうすれば逢えるのにゃん?」
「ミムカにゃんが『湯煙の美少女』にゃら、ウチにゃって『湯煙の美少女』にゃん!」
「アタシだって『湯煙の美少女』わん!」
「ワタシだって『湯煙の美少女』……あら、なにかしら。
ふたりとも、こっちを向いたままで首と手を左右に振っているけど」




