第九話『覗き見の世界にゃん!』のその⑧
第九話『覗き見の世界にゃん!』のその⑧
叫んにゃ瞬間、にゃにかが変わった気がした。今までに味わったことのにゃい穏やかに気持ちにゃ。錯覚にゃろうか。頭や身体にしがみついていた黒雲のようにゃものが、後ずさりでもしているように引いていくのにゃん。
『アタシのモワンをお前なんかに壊させやしないわん!』
「ミーにゃん!」
ウチのお腹の辺りに白く輝く親友の姿が。
『ミアンちゃん。いつでもワタシたちはあなたと一緒よ』
「イオラにゃん!」
ウチの全身から放たれた緑色の光。それはウチを包み込み、一つの形とにゃっていく。
「これは……」
白い一枚霊布を身に纏った緑色に輝く人型。イオラにゃんが定番とする姿の一つが、ウチをすっぽりと覆っていたのにゃん。
『モワン! 行けぇっ!』
『ミアンちゃん! 今よぉ!』
ウチの心に愛しいふたりの声が届くのにゃ。
(うんにゃ。いつも三にん一緒にゃん)
勇気百倍。『にゃんでも来い』にゃん。
「レイアにゃん。あんたにゃんかには負けにゃいのにゃよぉ!」
も一つ、声が。あのおぞましい声が霊覚を通して心に響いてきたのにゃ。
『貴様ぁ……、イオラの使徒だったのかぁ!』
(使徒? はて? にゃんのことにゃ?)
ウチが心の言葉を発する前に、イオラにゃんが答えたのにゃ。
『違うわ、レイア。ミアンちゃんはワタシの家族。大事な家族よ』
『家族だとぉ。ふざけるなぁ! 我を愚弄する気かぁ!』
イオラにゃんとレイアにゃんの会話はウチにも届いていたのにゃ。
(家族……)
嬉しいのにゃん。でもって、にゃんかわけもにゃく力が漲るのにゃん。
「よぉし。スバルにゃん。今、届けるのにゃよぉっ!」
イオラにゃんの身体の中にウチが居て、ウチの身体の中にミーにゃんが居る。イオラにゃんやミーにゃんから送られてきた思いと力が、ウチと一つににゃって生み出された三身一体の身体。青い空を背景にみんにゃがみんにゃ透けて見える。その身体が今や、ウチの身体も同然にウチの意志一つで動くのにゃ。ウチが手足を動かせば、その通りに動いてくれるのにゃ。
(にゃらば、自力で突破にゃあ!)
『アタシも居るわん』
『ワタシもね』
「うんにゃ。みんにゃで行こうにゃん!」
ずぶずぶずぶずぶずぶっ。
動き出した途端、黒雲が再び迫ってきたのにゃん。でも大丈夫。緑色に輝く身体に触れるか触れないかぐらいの近さまでくると、ぱちぱちぱちっ、と弾けて消えていくのにゃ。
(楽勝にゃん)
レイアにゃんが造り出した黒雲をものともせずに突き進むウチ。不安が払拭された今、強気で攻めまくるのみにゃん。
『イオラよ。またしても我の邪魔をするかぁ!』
『何度でも。
レイア。あなたが頼りとする邪霊子が一粒残らず浄化されるその日まで。
あなた自身が真の安らぎを得られるその日まで』
『おのれぇ! なにをほざくかぁ!』
そして……ついに突破したのにゃ。塵のように消えていく黒雲を背にしたウチの目の前に現われたのは、パネルで見た真っ黒とにゃってしまったスバル、レイアの個体にゃ。
(希望が見えてきたのにゃ。にゃらばぁっ!)
「行くにゃよぉ! にゃん丸ぅっ!」
「ぷゆぷゆぅっ!」
ウチは死ぬ間際にイオラにゃんと出逢えた。この出逢いがウチに化け猫としての生をもたらしたのにゃ。可愛いミーにゃんとも出逢えたし、ミーにゃん同盟のみんにゃともと友にゃちににゃれた。今回のようにゃ事件にも関わったのにゃん。
出逢いが一つ増えるたんびに、視界が拡がっていくようにゃ気がするのにゃ。今まで気にもとめにゃかったものに興味を持つようににゃる。周りにある一つ一つの存在と自分との係わり合いを意識し出してくる。知らにゃかったこと、知ろうともしにゃかったことを知りたくにゃる。知るようににゃる。
そうして少しずつ開かれていく視界の中で、自ずと自分の進む方向が、生きる道が見えてくる。ウチにはそんにゃ風に思えてにゃらにゃいのにゃん。
全ては命あればこそにゃ。
命あればこそ、出逢いがある。出逢いがあればこそ、未来もまた開けていくのにゃ。
にゃもんで、
「ウチは」
『未来』を、
未来に繋げる出逢いをもたらす『命』を、
命を育む『天空の村』を、
天空の村に尽くしてくれる『にゃん丸』を、
可愛い可愛いにゃん丸を、
「守るのにゃああぁぁん!」
思いが言葉とにゃって口から弾けたのにゃん。
「これをお見舞するのにゃああ!」
緑色に輝く両手が持っているのは、ワクチン注入済みのにゃん丸。それをレイアにゃんの中心、一つ目の赤い目ん玉に圧し当てたのにゃん。
ばりばりばりばりばりばりばりばりぃっ!
ごっごっごおぉっ! ごっごっごおぉっ!
最後のあがきとばかり、黒光りする光を放って抵抗に抵抗を重ねるレイアにゃん。ぶつけた目ん玉から、まるで圧し返そうとでもするかの如く、光線波を撒き散らしているのにゃ。じぐざくに曲がり、枝分かれするさまが、威力とすさまじさを物語っている。とはいえにゃ。今更そんにゃにものに怯むウチではにゃい。
(強い意志が生む覚悟。それはにゃによりも強いはずにゃん!)
信じる力が奇跡を生む。にゃどとと良くいわれる。でもにゃ。そうじゃにゃい。
「信じる力が自分の力をあと押しするのにゃん!」
思いの通り、あらんかぎりの力をもって圧して圧して圧しまくったのにゃん。
そして……道は開かれたのにゃ。
ずぶっ!
「やっ、やったにゃああ!」
ウチはにゃん丸をレイアにゃんの中へと突っ込むことに成功。レイアにゃんの黒い色がみるみる間に消失していく。続いて、文字通り、網の目のように拡がっていたネットのラインも、ライン同士を繋げていたスバルの黒さも。
『しくじったかぁ。だが、マザーミロネ。それにイオラよ。
諦めはしない。いつかまた必ずや……』
レイアにゃんの言葉が途切れたのにゃ。でもって、……あとはそれっきりにゃ。
目に映るは、いつも通りの透き通るようにゃ青い空にゃ。スバルもネットも見えにゃい。普段通りの空にゃ。
「どうやらワクチンは利いたみたいにゃあ」
ほっ、とウチは、安堵の胸を撫で下ろしたのにゃん。
『やったね、モワン』
『良くやったわ、ミアンちゃん』
消え入るようにゃふたりの声とともに、ウチは本来あるべき、霊体特有の透き通った姿へと戻ったのにゃん。
「ミーにゃん、イオラにゃん。有難うにゃん」
「ミアン殿、有難うございます。こちらも全て正常に戻りました」
心に届いたのはレミロにゃんからの霊覚交信。『感無量』という表現がぴったりとあてはまるくらい、声が上ずっているのにゃ。
「いんにゃ。ウチにゃけの力じゃにゃい」
「はい。スバルを通して一部始終を見させて頂きました。
ミアン殿の身体を中心に、ミーナ殿とイオラ殿が重なって映っていました。おふたりのみこころと霊力を引き寄せたのは紛れもなく、天空の村を守りたいというミアン殿の思い。それなくして到底、レイアの駆除は為し得ませんでした。
全てはあなたのおかげです。心から感謝いたします」
心打たれた。ほっ、とした。そんにゃ思いが入り混じったようにゃ口調にゃ。
「困った時はお互い様にゃよ」
ウチも嬉しかったのはいうまでもにゃい。
「どうしますか? こっちへ戻っておいでになりますか?」
「スバルを使って戻れるのにゃら、直ぐにでも」
「それはダメです。一方通行ですので、いらっしゃるのであれば、また霧の森に入るしか仕方がありません」
「まぁそれしかにゃいのにゃらば」
「そうですか。それではお待ちして……おやっ?」
不意に言葉が途切れたのにゃ。
「どうしたのにゃん?」
「いえ。復活したばかりのパネルの一枚なんですが……、スバルから送られてきた最新の映像にミーナ殿が映し出されていたものですから。そちらにもお出しします」
「ミーにゃんが?」
レミロにゃんのいった通り、ウチが浮かんでいる空にも一枚のパネルが現われたのにゃ。
覗き込むと、確かに親友の姿が。にゃにかを一生懸命食べているみたいにゃ。お腹が一杯にゃのか、どことにゃく苦しそう。それでも食べているのにゃ。もう一心不乱といった様子で。
「それでミーにゃんの居る場所は……も、もしや?」
「ご想像通り。果物園です」
「にゃんとまぁ」
ずるぅっ。
「それはいけにゃい。今の恩返しも兼ねて早速ミーにゃんを助けにゃければ」
「ふふっ。とかなんとかおっしゃっていますが、自分も食べたい、っていうのが本音じゃありません? 口から、だらり、と垂れているものが全てを物語っていますよ」
ずるぅっ。
「こ、これは汗にゃん」
「へぇ。ずいぶんと変わった汗でいらっしゃいますことで」
にゃんとも皮肉めいた口調にゃ。実は自分でも、『変にゃことを口走ったにゃあ』と後悔しているのにゃん。
(でももう、あとには引けにゃい)
「化けネコにゃもん。おぉっと、と。お喋りをしている場合じゃにゃい。
レミロにゃん。にゃらウチはこれで」
「ふふっ。はいはい。判りました。
ミアン殿。こちらでは引き続き、ヴィーナス殿の行方を追ってみます。
ですが……やっぱり無理でしょうね」
急いで向かおうとしたウチの足が自分の理解より先にとまったのにゃ。
「どうしてにゃん?」
「ミアン殿。ミーナ殿の件が済みましたら、大至急、最後の宝玉を手に入れて下さい。それがないと多分、見つけ出せないと思うのです」
(そうかもしれにゃい)
「了解にゃん!」
勢いよく返事すると、ウチはすぐさま実体波を纏ったのにゃ。当然、空に浮かんにゃままではいられにゃい。真っ逆さまに墜ちていく……途中で、ぱっ、と空飛ぶ絨毯へと変化したのにゃん。
ううん。どうしてにゃろう。当たり前に考えれば、空飛ぶ絨毯とにゃったあとに実体波を纏ったほうが、落下しにゃくて済む分、安心にゃはずじゃにゃいの。にゃのに、いっつもこの方法をとってしまうにゃんて……ふぅ。にゃんにゃのにゃろうにゃあ。やっぱり、あれかにゃあ。落下に対する怖れにゃんかよりも、生前に近い姿に戻ることへの願望のほうが強いのかもしれにゃいにゃあ。良ぉく考えてみれば、確かに霊体の身で居る時って、にゃんとにゃく心が落ち着かにゃいもの。自分であって自分ではにゃい気がするのにゃ。にゃもんで、にゃにはともあれ、と無意識のうちに実体化してしまうのにゃろうにゃあ。
……おっ、とと。物思いに耽るのはこれくらいにしておこうにゃん。
「ミーにゃん。今、行くからにゃあ」
パネルは消えたものの、『木の実と悪戦苦闘しているシーン』は今も脳裏に残っているのにゃ。にゃもんで、もう夢中でウチは親友の居る果物園へと向かったのにゃん。
「いやあ、ミーにゃん、イオラにゃん。お騒がせして申しわけにゃかったのにゃん。
ウチの為に送ってくれたおふたりの思いと力のおかげで、ウチもにゃん丸も助かったのにゃん。心からお礼をいわせてもらうのにゃ。有難うにゃん」
ぺこり。
「いいわんいいわん。ミアンはアタシの親友。ううん、切っても切れない家族だわん。
お礼なんて水くさいわん」
「そうよ、ミアンちゃん。困っている家族を助けるのは当然のことよ」
「にゃんともまぁあったかい気持ち。痛み入るのにゃん。
おかげでウチもここに戻れたのにゃ」
「うんうん。ハッピーエンドで良かったわぁん」
「さぁてと。話変わって、今回のお話にて第九話は終わりにゃん」
「うん。……そして、お次のお話は、満を持してアタシの登場だわん」
「ミーにゃんとお喋りが出来るのにゃ。楽しみにゃん」
「アタシもアタシも。ミアンとのお喋り。わくわくするわん」
「……ねぇ、ミーナちゃん、ミアンちゃん。
盛り上がっているところ悪いんだけど、誰か忘れちゃってはいない?」
「ふ…………」
「う…………」
「黙り込んだところをみると、……ワタシの出番がないということかしら?」
「ごめんにゃさい」
「ごめん」
「いいのよ、いいの。今回のお話では結構あったもの。
でも……しくしく」




