第九話『覗き見の世界にゃん!』のその⑤
第九話『覗き見の世界にゃん!』のその⑤
ウチが見守る中、レミロにゃんの目線近くまで達すると、棒らしきものは延びるのをやめたのにゃ。代わりに一番上の部分が、ちょっと大っきめにゃ『ある物』へと形造られたのにゃん。
(にゃあんか人間の書物で見かけたようにゃ気が。ええと、確か……)
思い切っていってみたのにゃ。
「銃?」
「おおっ。良くご存じで。観測銃オリオンです」
「ぴんぽぉん! 大当たりにゃん!」
……でもにゃ。景品はもらえにゃかったのにゃん。とほほ、にゃのにゃん。
先っぽの長いものは『バレル』。本体の左側から突き出ているのは『スライドバー』。一番手前の下側は『グリップとトリガー』。そのちょっと先のは『マガジン』……とまぁ銃についてのちんぷんかんぷんにゃ説明が延々と続いたのにゃ。
(『バレル』ってにゃにがばれるのにゃ? ばれたら怒られるのにゃん?
心配にゃあん)
喋っていることが意味不明にゃのにゃけれども、『ひょっとすると、レミロにゃんはこういうメカものに興味があるのかもしれにゃい』ぐらいは見当をつけてみたのにゃん。
(にしてもにゃ。ネコにこんにゃ話が理解出来ると、本気で思っているのにゃろうか)
「……という仕組みを経て、この中へにゃん丸を装填。観測したい場所へと撃ち込むのです。これもご存じかとは思いますが、天空の村というのは、どこもかしくもガムラが放つ霊力の粒子、『正霊子』に満ちています。これらはみな、『おのれ』という意志を持たない代わりに、強い意志に引き寄せられるという特性を持っています。この特性のあるがゆえに、投入された場所に存在する数多くの霊力が、にゃん丸へと集まって一つの光の結晶に、観測点スバルとなるわけです。
以上、大ざっぱに喋ってしまいましたが、どうでした? 判って下さいましたか?」
(やっと終わったみたいにゃ)
もちろん、ウチは首を横に振ったのにゃ。
「全然にゃ」
レミロにゃんが、がくっ、とにゃった。
「ちょっと長すぎましたか? それとも判りにくかったのでしょうか?」
「両方にゃん」
今度は、がくがくっ、とにゃった。それでもめげずに、みたいにゃ感じの顔をこちらへ。
「ええと、あのぉ」
こりずにまにゃ説明したいようにゃ。
「あのにゃあ、レミロにゃん」
ウチは前足の肉球で座面を、ぽんぽん、と叩いて、
「ネコを相手にする時にはにゃ。『もっと簡単で判りやすく』を是非とも心がけて欲しいものにゃん」と注文をつけたのにゃ。するとにゃ。これがまぁ素直というか、にゃんというか、イヤにゃ顔一つせずに、『判りました』とうなずいたのにゃん。
「まぁ要するにですね。オリオンっていう銃に、にゃん丸をセットするのですよ。でもって移動型スバルがパネルに映し出した目標点に、ずばぁん、と撃ち込めば、それでおしまい。あとはにゃん丸任せでスバルが新たに誕生するってわけです」
(にゃあんにゃ。やれば出来るじゃにゃいの)
「にゃら最初っからそういえばいいのにぃ。これからもその調子で頼むにゃよ」
ウチが指摘したおかげで、にゃんとか理解し得る範囲で収まったのにゃ。『教育は大事にゃ』とつくづく感じ入った次第にゃん。
「はい。肝に銘じておきましょう」
どこまでも低姿勢にゃ。話したい気分が殺がれず、気持ちがいいのにゃん。
と、ここで一つ疑問が。
「……うぅんでもにゃあ……」
「どうしました?」
「撃ち込む前に観測したい場所をここの……『パネル』にゃったっけ? ……に映し出さねばにゃらにゃいのにゃろう? スバルとやらがにゃいのにどうやってにゃん?」
「さすがです。そこにお気づきとは。なかなか鋭いですね」
「いやあ、それほどでもにゃいのにゃけれども」
褒められて嬉しいやら照れくさいやら、とにゃるのは、にゃにもミーにゃんにゃけじゃにゃい。ウチもにゃ。多分、ぽぉっ、とほおが赤くにゃっていると思うのにゃ。
「で、どうするのにゃん?」
「スバルには二種類あります。一つは固定型。撃ち込まれた場所に、ずぅっ、と居続けます。もう一つは移動型。パネルにはこちらを使って映し出します。ここからわたくしが指示すれば天空の村のどこへでも飛んでいってくれますから…………といいたいところではありますが」
「どうしたのにゃん?」
「残念ながら現時点では、精霊に匹敵するほどの力のある霊体が張っている強固な結界には、とてもじゃないが入り込めません。情けない話ですが正直、無理といわざるを得ないのが現状なのです」
レミロにゃんの肩を落とした姿にウチは同情を覚えたのにゃ。
「ふぅぅん。いろいろとあるもんにゃにゃあぁ」
「ふぅ。まぁ嘆いていても仕方がありませんね。
そうそう。折角ここまで来て下さったのです。実際にやってみせましょう。
ほら、誰かおいで」
声をかけると、固まって、ぷゆぷゆぷゆぷゆ、と話をしていたにゃん丸のひとりが、ぴょおん、と飛んできて、レミロにゃんの手のひらへと乗ったのにゃ。
「ずいぶんと素直にゃ」
「お話しましたよね? みんなわたくしの分身だって。もちろん、個々の意志というものは、ちゃんとありますが、基本的にはわたくしの性格を受け継いでいます。仲間と戯れるのも好きですが、スバルとしてのお務めはそれ以上。自分はその為に生きている。宿命とさえ思っています。だから呼ばれれば、機会が訪れれば、なにをおいても素直に従うのですよ」
「宿命とはにゃ。こんにゃ小っちゃいのに」
『悪戯者』との認識を見直したのにゃはいうまでもにゃい。
「発射までのプロセスをいえばこうなります。
あっ、ただのお喋りですから。聞き流して下さっても結構です。
一、にゃん丸の実体波を解除。完全霊体化させたあと、カートリッジへと挿入します。
二、カートリッジをマガジンへ。必要な分だけ装填したあと、マガジンをオリオンに装着します。トリガーの前にあるスロットに差し込めば、それで完了です。
三、移動型スバルを使って村の景色をパネルに表示します。新たな観測位置に相応しい場所を探し出すまで動かし続けるのです。
四、観測位置が決まったら、そこを表示させるスバルの配置場所も別のパネルへと映し出します。ここが標的となるわけです。
五、オリオンの上部に据えつけられているスコープを覗いて標的に合わせます。
六、オリオンの左サイドに突き出ているスライドバーを、がちゃ、と引いて戻します。
これでにゃん丸の入ったカートリッジの一つがオリオン本体に装填されます。最後にトリガーを引けば、にゃん丸は発射となるわけです」
……もちろん、ウチがあくびをしにゃがら聞き流したのはいうまでもにゃい。
でもって作業が始まったのにゃ。ずうぅっ、とやっているのにゃから、当たり前といえば当たり前にゃのにゃけれども、あっという間に、『マガジンを銃に装着した』までが終わってしまうのにゃ。
(にゃんという手際の良さにゃん)
「これでオリオンのほうは準備完了。……ということでお次は観測位置を決めます」
右手を、あたかも宙を拭くかの如く左から右へと動かすのに伴い、キーボードが姿を現わしたのにゃ。ずらりと並んにゃ白黒キーの外枠が、きらきらと青く光るさまの綺麗にゃことっていったら。
(おっ、とと。見惚れている場合じゃにゃい)
指が動くたんびに、音色が響くたんびに、次々と、村の景色を映し出しているパネルが現われては消え、消えては現われ、を繰り返しているのにゃ。
そして……パネルには霊山『亜矢華』が表示。スバルが周りをぐるぐると回っているらしく、あらゆるアングルからの様相が順を追って映し出されているのにゃ。
「こちら側には観測点が一つも……ありませんね。よぉし。ここに置くとしましょうか」
音色を続けざまに奏で、そして……ぽん!
どうやら打ち終わったようにゃ。キーボードから手を放すと直ぐに、パネルの映像が固定。映し出されている一点が大きく表示された。と同時にかたわらにあったオリオンがレミロにゃんの目の前へと移動。とまったと思ったら、今度は上下に動き出したのにゃ。きっと、パネルの標的に合わせているのにゃろう。
やがてオリオンは全ての動きをとめたのにゃ。
「立体座標X、Y、Zを決定。これで準備は全て終了です」
最終確認、にゃろうか。まるで見較べてでもいるように、宙に並んだ二枚のパネルをかわるがわる覗いているのにゃ。もちろん、片っ方は観測位置が表示されているパネル。もう片っ方はスバルを配置する場所が表示されているパネルにゃ。
「そうですね、ここにしますか」
レミロにゃんは右手の指をトリガーにかけ、左手でスライドバーを握ったのにゃ。スコープに目を当てたままで若干、本体の向きを変えるにゃど、微調整と思しき作業をしていたのにゃけれども、やがてその動きもとまったのにゃん。
(いよいよ発射にゃ)
がしゃん!
スライドバーが引かれたのにゃ。物音……多分、装填された音にゃと思う……を立てたあとは自動的に元の位置に戻ったかのように見えたのにゃん。
時が来た。トリガーにかけたレミロにゃんの指に力が入ったみたいにゃ。
「にゃん丸! 行ってきなさぁい!」
がちっ!
どぅぴゅぅぅん!
発射音と弾丸の素早さを表わす音が続けて聞こえ、一つの光がパネルへと吸い込まれるように消えたのにゃ。それから……ちょっとの間を置いて、狙った位置座標が一瞬、ぴかっ、と光ったのにゃん。
「見えましたよね、ミアン殿。新しいスバルがたった今、生ま……」
レミロにゃんの口の動きがとまったのにゃ。でもって視線は前方へと釘づけ状態。何事にゃと思って、ウチもパネルへと目を向けてみたら……。
「にゃんにゃ? あれって」
ばきゅうぅん!
「や、やられたのにゃああん!」
ばたん!
「きゃはは。早撃ちガンマンのアタシ、ミーナ・ホワイトに勝てる者は居ないわん」
ダダダダダダダダダダっ!
「うぐぐっ! そ、そんなぁ。アタシが負けるなんて……」
ばたん!
「ふふっ。『マシンガンのイオラ』との異名を持つワタシ、イオラ・グリーンに勝つなんて数万年早いわ」
むっくり。
ぐさっ!
「ああっ! ま、まさか、こんな方法でワタシが……」
ばたっ!
「にゃはは。背中を見せた時点であんたの負けにゃあ。
ウチはナイフ投げのミアン・ブルーにゃん。やられたフリをしたにゃけにゃん。
大体にゃあ。霊体があんにゃ飛び道具で仕留められるはずがにゃいのにゃん」
むっくり。
「きゃはは。ミアン。それはアタシも同じだわん。さぁ今度こそ決着をつけるわん」
むっくり。
「ふふっ。それはワタシも同じよ。ミーナちゃん、ミアンちゃん。今度こそ、いざ覚悟」
「……ということでにゃ。 続きは一番頭から読み直して欲しいのにゃん」
「うわっ、出た。究極の手抜き話だわん」
「てっきり、もっと続くとばかり……。これじゃあ張り切り損だわ。
ただでさえ出番が少ないっていうのに、それすらも奪うなんてあんまりよ。
ミアンちゃん、なんとかしてぇ」
「うわっ、出た。イオラお得意の、究極の愚痴話だわん」
「ミーにゃん。ウチ、遊びに行ってくるのにゃん」
たったったったったっ!
「あっ、待ってよぉ。アタシもぉ」
ぱたぱ。
がしっ!
「うっ!
……な、なぁんだ、イオラじゃない。誰かと思ったわん。
アタシも出かけるから、肩をつかんだ手をどけて欲し」
「ミーナちゃん。しょうがないからふたりだけでやり直しましょうね」
「ええっ! そんなぁ!」




