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第九話『覗き見の世界にゃん!』のその④

 第九話『覗き見の世界にゃん!』のその④


「わたくしは神霊ガムラ殿の目なのですよ。天空の村が惑星ウォーレスの大地へと戻るまで見守るのが、わたくしの務めです」

「にゃんと! ガムラにゃんの」

「霊山『亜矢華』の奥深くに潜むガムラ殿の核が霊力の源であることはご存じの通りです。しかしながら、『天空の村』と呼ばれるこの孤島を維持するには、それを成す『手足』、全てを見通す『目』の存在が必要となります。ヴィーナス殿は天空の村そのものに宿る精霊。つまり、『手足』です。孤島全体が彼女の身体なのですよ。そして……今もいったようにわたくしは『目』です。懸念される事態を発見すれば速やかに、神霊ガムラ殿、守護神イオラ殿、『天空の村』のヴィーナス殿、これら三大精霊へ報告する。それがわたくしの使命なのです」

(大変にゃことを聴いてしまったのにゃん……)

「にゃあ、レミロにゃん。そんにゃ大事にゃことをウチみたいにゃもんに、ぺらぺらと喋って大丈夫にゃの? ガムラにゃんに怒られにゃいのにゃん?」

「おやおや。知りたがっていたのは、ミアン殿、あなた自身じゃありませんか。自分でいってどうするのです?」

「それはそうにゃのにゃけれども」

「ふふっ。大丈夫ですよ。今、いいましたでしょ? 守護神イオラ殿にも、って」

「にゃけれどもウチは」

「そこにおられるじゃありませんか」

 レミロにゃんは蹲っているウチのお腹辺りを視線にて指し示したのにゃ。

「イオラ殿の命の欠片を授かっている以上、守護神自身、もしくは守護神が遣わした使者とみなして構わない。それが精霊界の不文律です」

(気がついていたのにゃん)

 ウチが化けネコとして復活出来たのは、イオラにゃんが自身の命の欠片を分け与えてくれたからに他にゃらにゃい。それをレミロにゃんはいともあっさりと見破ったのにゃ。さすがは六大精霊のひとり、と感心すること頻りにゃん。

「ってことはミーにゃんにこのことを教えても」

「お姫殿のことですか? もちろん、構いません」

「ミーにゃんのことを『お姫殿』っていうにゃんて……。

 ウチは初めて聞いたにゃ。ミロネにゃんにゃっていわにゃかったのに」

「彼とは友だち同士なのですよね?

 だったら、『お姫殿』なんて仰々しい呼び方はしませんよ」

「それもそうにゃん」

「もっとも……、わたくしをお友だちに加えて頂けたとしてもです。年柄年中、ここでのお務めですから、立場上、『お姫殿』としかお呼び出来ません。ちょっとつらいところではありますが」

「レミロにゃん……」

 さみしげにゃ相手の顔。にゃんとかにゃらにゃいものか、と思案するも所詮はネコ。どうにも答えは見つからにゃい。


「さてと。それじゃあ、パネルを見て下さい」

 ウチの目の前にはまた四角形の映像が。先ほどよりは小さいのにゃけれども、数はたくさん。目の前に所狭しと並んでいるのにゃ。良く良く覗いてみれば、見知った場所も幾つかあるみたいにゃん。

「こうやって監視しているってわけにゃん。でもこの映像はどうやって?」

「この子たちです」

 ぷゆぷゆぷゆ。ぷゆぷゆぷゆ。ぷゆぷゆぷゆ。ぷゆぷゆぷゆ。…………。

 いきにゃり、真ん丸にゃものが幾つか現われたのにゃ。盛んに鳴き声を立ててはいるものの、それほどうるさくはにゃい。淡い黄色の光を放っているさまはにゃんとも神秘的。レミロにゃんの身体中に引っついているもんで、レミロにゃん自身が黄色くにゃったようにゃ錯覚を起こしてしまうのにゃん。

「にゃんにゃのにゃ? この丸っこくて小っちゃくって黄色いのは?」

 ウチが『ぷゆぷゆ』についてそう尋ねるも、返事が来る前に、レミロにゃんの肩に飛びついている『ぷゆぷゆ』もまた、

「ぷゆぷゆ。ネェ、オネエチャン。コノ『モワンモワン』ノオオキイノハ、ダレ?」とウチについて尋ね出し、続いてレミロにゃんも、

「ですって」と言葉を添えたのにゃん。

「にゃ、にゃんと!」

 がく……ぜん!

 ウチが驚きを隠せにゃかったのはいうまでもにゃい。

「ミーにゃんの他にもウチを、『もわんもわん』と呼ぶ者が現われるにゃんて」

 思わずよろめいてしまったウチの身体へ、どさどさどさっ、と小っこい者らが一斉に飛びついてしまったのにゃん。

「や、やめて欲しいのにゃけれ……うわぁんにゃ!」

 ばたぁん!

『ども』をいう前に、ウチは顔に集まった『ぷゆぷゆ』らに視界を閉ざされ、倒れざるを得にゃかったのにゃ。

「ふふふっ。ミアン殿、済みません。

 ほら、みんな。お姉ちゃんはまだ少し、このネコさんと話があるの。終わるまでどこかで遊んでてはくれません?」

「ぷゆぷゆ。ワカッタ、オネエチャン。ユックリト、オシャベリシテテネ」

「いい子ね、いい子」

 ぷゆぷゆぷゆ。ぷゆぷゆぷゆ。

(おや。ミーにゃんと違ってずいぶんと素直にゃ)

 ウチやレミロにゃんから離れた『ぷゆぷゆ』らは空間に浮かんにゃ幾つものパネルに興味を持ったみたいにゃ。次から次へと集団で移動しにゃがら眺めているのにゃん。

「ふぅ」

 解放されたのでひと息つくウチ。それを見て微笑むレミロにゃんの楽しそうにゃ顔つきっていったら。

(笑顔の素敵にゃ女の子にゃん)

「ふふっ。来て早々、難儀な目に遭いましたね」

「一体、あの丸っこいのは何者にゃん?」

「にゃん丸です。わたくしが造りました。身体を伸ばしているところを見れば一目瞭然ですが、あれでも子ネコで、あなたと同じく実体波を纏っています。まぁわたくしの小さい影か分身とでも思って下さい。ここから外に出なくても、『天空の村』の隅々まで見渡せるのはあの子たちのおかげなのです。世話のかかることもありますが、少なくともわたくしにとってはなくてはならない相棒なのです。だから許してやって下さい」

(色はともかく、実体波を纏った子ネコというし、良ぉく見れば、ウチの小っちゃい頃の顔にも似ている気がするのにゃ。道理で可愛いはずにゃん)

「まぁ、そういうことにゃら」

 ウチは口をとがらすのはやめたのにゃ。

(あれっ、そういえば……)

「数が必要にゃらミロネにゃんを増やせばいいじゃにゃい。

 どうしてにゃん丸が必要にゃの?」

「彼とわたくしとは同格。マザーの影霊『ミロネ』であることに変わりはありません。だからこそ、それぞれが独自の方法で観測・監視を行なっているわけでして。

 まっ、それはともかく。ミアン殿。影霊一体を使うのにマザーにかかる負荷は、にゃん丸の何体分と思われますか?」

「知らにゃい。まぁ十体ぐらいじゃにゃい?」

「百体です。およそ、ではありますが、にゃん丸百体分に匹敵します」

「にゃ、にゃんと!」

「影霊を増やすにはマザーから許可をもらう必要があります。ですが、今お話した負荷の大きさから、よほどの事態でも起きないかぎり、おいそれと要求することは出来ません。また仮に許可をもらえたとしてもです。それ相応の時間がかかりますから、今直ぐに、とはいかないのですよ」

「難儀にゃ話にゃん」

「影霊を動かすのもまた難儀な話なのです。『これはどうしても』という件であれば、マザーから直接指示を出してもらえますが、『取り敢えず』とか『念の為』いった類では、わたくしから要請しなければなりません。ですが……、『やってもらうわけにはいきませんか?』というお願いの形でしか出来ませんので断わられるケースもままあるのです」

「ダメにゃん。もうお手上げにゃん」

「ええ。その通りです。わたくし自身が気軽に頼めるのはあの子たちだけ。村の広範囲に渡って迅速に観測・監視体制が敷けるのも、あの子たちが居るからこそ出来るのです」

「にゃあるほど。それにゃら」

「どうやら、判ってくれたようですね」

「でもにゃ、レミロにゃん。頼めるとはいっても、あんにゃ小さにゃ子にどうやって?」

「これを使うのですよ」

 レミロにゃんはまた手元のボタン……いや、確か『キーボード』とかいってたにゃ……を押し始めたのにゃん。

 ♪ ぱらりらぱらりら…………。

「これでよし、と」

 ぷわあああっ。

 いきにゃり底面に丸い台のようにゃものが現われたと思ったら、今度はその真ん中辺りから、にゅう、と棒状のようにゃものが延びてきたのにゃ。椅子とおんにゃじでどれも透明。枠部分にゃけが白く光っているのもにゃ。

(にゃんにゃのにゃろう? 興味深々にゃん)


「へぇ。アタシが『お姫殿』ねぇ。どっちかといえば……」

「やっぱり、『お姫様』かしら?」

「うん。白馬にまたがった王子様がやってくるのわん」

「そして白馬とキスして目覚めて結婚にゃあ。いやあ、めでたいにゃん」

「本当。良かったわねぇ、ミーナちゃん」

「あのね……。なんでそうなるわん? 王子様はどこに行ったわん?」

「ウチと結婚にゃん」

「ワタシとじゃない?」

「アタシと、って選択肢が、どうして頭に浮かばないわん?」


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