第八話『霧の園。にゃんとも摩訶不思議にゃ世界にゃん!』のその①
第八話『霧の園。にゃんとも摩訶不思議にゃ世界にゃん!』のその①
ウチは今、『霧の園』の手前に佇んでいるのにゃ。
(ここ、ちょっと不気味にゃのにゃん)
ほかの森では外側に居ても、立ち並んだ樹木の間から、ちらっ、と覗き見が可能にゃん。にゃのに、ここは深い藪といっていいくらい、こんもりと木々が群がっているのにゃ。葉の数や大きさも相まって『ここから先は見せにゃいのにゃよぉ』とでもいわんばかりに中を伺うことを拒絶している……みたいにしか思えてにゃらにゃいのにゃん。
『イオラの森』と一口にいってもにゃ。実は、幾つもの森や広場を一括りにしてそう呼ばれているのにゃん。中には異界へと通じる禁断の森もあってにゃ。天空の村にある他のどの森よりも奥が深いとされている森にゃ。でもって、その禁断の森の一つが、ここ『霧の園』……とはイオラにゃんから聴いた話にゃん。
(にゃらば、うかつに入っては取り返しのつかにゃいことににゃるのでは?)
そう危惧したものの、怖いもの見たさでこれまでにも幾度とにゃく入ってみたのにゃ。でもにゃ。いずれの場合も無事に出てこられた。とはいえ……、お世辞でも、あまり居心地のいい場所とはいえにゃいのにゃ。
落ち葉で覆い隠された地面と、樹木がやたらめったらと群生しているにゃけの殺風景にゃ眺め。加えて美味しい木の実も生えていにゃければ、水飲み場もたまり水程度の小さにゃものしかにゃい。おまけににゃ。年柄年中、霧に覆われているものにゃから、どこもかしくもが、暗く、じめじめしているのにゃ。棲む者もかぎられていて、命の気配がほとんどにゃい。とまぁそんにゃこんにゃで遊び場に相応しくにゃいどころか、入っても直ぐに出たくにゃる。そんにゃ森にゃん。
(いつまで立っていても仕方がにゃい。『行くにゃよ』っていっておいたから、入れば顔ぐらいは見せてくれるにゃろう)
ウチは見上げた。太陽の位置から察するに、時刻はおやつタイムの昼半……お昼と夜のちょうど真ん中にゃ……を越えてしまったみたいにゃ。
ここからはどんどん陽が陰っていく。暮れてしまうまでは、あっという間にゃ。
(さぁぐずぐずしてはいられにゃい。こんにゃ薄気味悪いところで夜を迎えるにゃんてまっぴらにゃん)
ウチは意を決して飛び込んにゃのにゃ。さにゃがら、ワナと知りつつも突き進む戦士のようにゃ心持ちでにゃ。
そして……現われてしまったのにゃん。
「来たのね。ふふっ。もうこれであなたも命運が尽きたようね。ふふっ」
不吉にゃ言葉を吐きつつ、出迎えてくれたのはミストにゃん。腰に手を当て反り返るさまはミーにゃんの姿とダブって目に映るのにゃ。『似た者同士とは良くいったものにゃ』と妙に納得してしまったのにゃん。
まっ、それはさておきにゃ。
「ミストにゃん。ちょっと聴きたいことがあるのにゃけれども」
「あら、なにかしら?」
「ミストにゃんって意味ありげにゃ言葉をちょくちょく口にするのにゃけれども」
「ふふっ。そうね」
「その言葉ってにゃにか意味でもあるのにゃん?」
「ないわ。っていうより、あったら怖いじゃない」
ぶるぶるぶる。きょろきょろきょろ。
身体を小刻みに震わせにゃがら、用心深そうに辺りを見回しているのにゃ。とてもここを棲み家としている妖精とは思えにゃい。
「じゃあ、にゃんで?」
目の前には、はぁ、と、ため息とほおづえを同時に突く姿が。『こんなことも説明しなくちゃいけないのかしら』といわんばかりの顔にゃ。
「雰囲気。大切よ、雰囲気は。特にこういうところはね。それとも……」
と、ここで態度と口調が、がらり、と変わるのにゃ。
「さぁさぁ、いらっしゃいいらっしゃい。
なんにもなくて霧ばっかり浴びせられるけど、それでも良かったら、いらっしゃい。お題は見てのお楽しみ、っていうお題も一切なしの、どこでも無料の大サービス。おまけに、今を逃したら、あとがないとの保証つきっ。さぁいらっしゃい。いらっしゃい」
身振り手振りも交えての、にゃんとも異常にゃ燥ぎっぷりにゃ。にゃもんで半ば固まっていたらにゃ。
「……とでもいって欲しいの? でもね。こんなのって、わたしには似つかわしくないでしょ?」
と、またまた態度と口調ががらりと変わって、元通りの暗さにゃん。
(にゃあんか面白いにゃあ)
まるでひとり芝居をやっているかのよう。ウチはミストにゃんがとぉっても好きにゃん。
(友にゃちににゃって良かったにゃあ)
「ところでにゃあ。面白さ満載のミストにゃん」
「誰が『面白さ満載』なのよ? 誰が?」
「あんたにゃ、あんた。
そんにゃことより、ヴィーナスにゃんを見つける為の宝玉は見つかったのにゃん?」
「まだよ。でも多分、こっちだと思うわ。ついてきて」
ミストにゃんはウチから離れて、はるか上の空に舞う。
翅が霧に濡れて光を帯びるものの、飛ぶのに支障はにゃさそうにゃん。
「現われなさい。我が都への門よ」
命令とも哀願ともとれる妖精の言葉に応じるかの如く、霧が一点に集中。ウチらを簡単に飲み込むぐらいの大っきにゃ水の渦とにゃる。
ごぉごぉごぉっ! ぐるぐるぐるぅっ!
威嚇せんとばかりに上空からこちらへと伸びた格好にゃ。
「すっごいにゃあ。ああでも、あの渦がこちらに向かってきたら」
「大丈夫。良ぉく見ていて」
ミストにゃんのいう通り、目をこらしてみたのにゃ。するとにゃ。中心部に穴が出来た、と思ったのも束の間、まるで掘られているが如く、みるみる間に奥へ奥へと空洞が造られていくのにゃ。
「ミストにゃん、これは?」
「精霊の回廊よ。天空の村の至るところに出入り口があってね。ここを通れば、容易に好きな場所へと辿り着けるの」
「それってイオラにゃんから聴いたことがあるのにゃあ。
ウチはまにゃ入ったことがにゃいのにゃけれども」
「これはあくまでも精霊が行き来する為のものだから。
天空の村には霊体が多い。とはいってもね。精霊のレベルにまで達している者なんて、そうざらにはいないわ。
わたしにしたって行けるのは、せいぜい自分の棲み家まで。霊体によって違うのよ」
「さっき、『我が都』っていっていたにゃ」
「ええ。『霧の都』こそ、わたしの本当の棲み家。ここはそこへと通じる仮の空間にすぎないの」
「ウチにも行けるのにゃろうか?」
「さぁ? 試してみればいいわ。もう入り口は開いているのだし」
「入れにゃかったらどうにゃるのにゃろう?」
「弾き飛ばされておしまい。命に別条はないわ。……多分」
いかにも意味ありげにミストにゃんは視線を逸らしたのにゃ。まるで『それ以上は聴かないで』とでもいわんばかりに。でもにゃ。命に別条があるかにゃいかは、ウチにとって、いや、ウチにかぎらず、どんにゃ生き物にとっても重要事項にゃ。にゃもんで聴かずにはいられにゃいのにゃん。
「にゃあ。『多分』って、どういう」
『意味にゃん?』と続けようとしたところがにゃ。
「ほらほら。ここでお喋りをしていても埒があかないわ。早く行きましょう」
ミストにゃんの言葉に遮られ、急かされてしまうのにゃん。
(どうしたらいいのにゃん?)
迷いや懸念はあるもののにゃ。ウチとしてもあとには引けにゃい。
「しょうがにゃい。ダメ元で行ってみるのにゃ」
「その意気その意気。ふふっ」
飛びにゃがら、こちらを微笑むミストにゃん。『幸運を』とのセリフを吐いたのち、再び視線は前方に。数回羽ばたいたにゃけで、もう空洞の中にゃ。
「さぁこっちよ」
「にゃらば」
手招きに吸い寄せられるかのように、ウチもジャンプ。湿った枯葉で覆われた地面を、思いっ切り良く四つ足で蹴って、回廊へと飛び込んにゃのにゃ。
「ここは……」
水で造られた穴にゃのに、足元が一切濡れていにゃい。代わりに、ふんわりと地に着いている感があるのにゃ。試しに、四つ足で、ばたばたばた、と蹴ってみたのにゃ。するとにゃ。今度は、ぷよんぷよん、とはね返ってくるようにゃ弾力感を足先に覚えたのにゃん。
「にゃはっ。にゃかにゃか楽しいところにゃん」
ぷよん、ぷよん、と遊んでいたらにゃ。『なにしに来たのよ』との声が。見れば、ミストにゃんは奥のほうまで進んでいる。いささかおかんむりのようにゃ顔つきにゃ。
「早くこっちへ来なさい。回廊の中では翅や足を使わずとも移動が出来るわ」
「にゃんと」
「実際にやってみせてあげる」
ミストにゃんは身体を捻らせると、こっちへ戻ってきたのにゃ。でもって、ウチの周りをぐるぐると回っている。不思議にゃことに、翅を一切使わずに飛んでいるのにゃ。
「ほら、ミアンも」
促され、ウチも前方に向かってジャンプしたのにゃ。そしたら……あぁら不思議にゃ。身体がひとりでに、『飛んでいる』との表現がぴったりの動きをしているのにゃん。
身体をわずかに捻るにゃけで、行きたい方向に向きを変えられる。足先にちょっと力を込めれば、早く動ける。逆に力を弱めれば、遅くにゃる。力を抜けば、とまるのにゃ。
いろいろと試してみてにゃ。回廊を行き来するには、『そうしたい』との意志とわずかにゃ身体の動き。この二つさえあれば十分、と知ったのにゃ。
(にゃんとも楽にゃ移動にゃん)
「面白いでしょ? 回廊を通るのって。それじゃあ、そろそろ行くわね」
ミストにゃんが奥のほうへと飛んでいく。『遅れてはにゃるまじ』と、ウチもあとに続いたのにゃん。まるで目に見えにゃいにゃにかに乗っかって飛んでいるかのよう。にゃんとも楽しく、不思議にゃ気分にゃ。
「これぞ、ファンタジーにゃん!」
「わたしたちの存在もね」
前方から、白けムードの言葉が聞こえたのにゃん。
ぷよぷよ回廊のど真ん中をひたすら飛び続けるウチら。薄い青色で彩られた回廊の両脇には、大きにゃパネルが幾つも並んで浮かんでいるのにゃ。『にゃんにゃろう?』と覗いてみれば、どれもこれもが見慣れた風景。
「これは……天空の村の景色にゃあ!」
「その通りよ。
これらの中に身を投じるだけで、映し出されている景色にまで辿り着けるの」
「たったそれにゃけで……」
パネルを見にゃがらしばらく飛んでいると、前方から、ばりばりばりっ! と耳をつんざくようにゃ響きが伝わってきたのにゃ。『にゃにごとにゃ?』と真正面に目を合わせてみたら、はるか向こう側に不気味にゃ黒い穴が、ぽっかり、と開いていたのにゃん。
「ミストにゃん、あれは?」
「天外魔境への入り口よ」
「あれが……」
回廊の話のついでに、天外魔境のこともイオラにゃんから聴かされていたのにゃ。にゃんでも自分の願う場所へと行ける分岐点があるとか。いささか面白そうではあるもののにゃ。そこまで行くには霊力の光線波が豪雨のように降り注ぐ真っ只中を通らにゃければにゃらず、並の霊体では辿り着けにゃいとのこと。ウチとしては、そんにゃ思いまでして行きたい場所もにゃかったもんで、知識にゃけに留めていたのにゃ。ミーにゃんのほうは少にゃからず食指が動いた、つまり、興味が湧いたみたいにゃのにゃけれども、『にゃら、ひとりで行ってみるといいにゃん』って促してみたら、『ミアンが行かないならアタシも行かないわん』でおしまいに。『危険を冒してまで行くほどの興味はにゃい』との意見に、ウチとミーにゃんの双方が奇しくも……は大げさかもにゃ……一致したのにゃん。
天外魔境とやらの穴を覗いてみたらにゃ。白光りする光線が上から下へと撒き散らされているのにゃん。話に聴いた霊力波の豪雨にゃのに違いにゃい。さっきからの耳うるさい音もこれが原因にゃろう。
「にゃあんかすさまじい力みたいにゃのにゃけれども」
「大丈夫よ。わたしたちはあそこまでは行かないから」
「ということは」
「ここよ。この中がわたしたちの棲み家。じゃあ、行くわね」
ずぼっ。
ミストにゃんは目の前にぶら下がっているパネル、景色の中へと消えたのにゃ。
「待ってにゃあん!」
ずぼっ。
ウチもためらうことにゃく、おんにゃじ景色の中に飛び込んにゃのにゃん。
「待望の第八話にゃあああん!」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「でもって今回のお話はファンタジーにゃあああん!」
「なにいってんだか。
あのね、ミアン。『天空の村』と『にゃあまん』。どちらも元々ファンタジーだわん」
「ファンタジーねぇ。それはいいのだけれど……、ちょっと残念だわ」
「にゃんで? イオラにゃん」
「精霊の回廊を通って、天外魔境の入り口近くにまで辿り着いたのでしょう?
だったら、分岐点まで行けばいいのに」
「ふふっ。イオラったら、フィーネを登場させたいんだわん」
「にゃったら、イオラにゃんが、ここでフィーネにゃんのフリをすればいいのにゃん」
「ミアンちゃん! それ、ナイスな考えだわっ! じゃあ早速」
『えっへん! 大変良いご返事です!』
どがっ!
「痛たぁ……。
どうして精霊の間の天井から、こんな巨大ハンマ-が落ちてきたのかしら。
しかも狙い澄ましたかのようにワタシの頭を直撃なんて」
「にゃあ、ミーにゃん。ウチら見られているのにゃ」
「うん。見られていると思うわん」
『親しき仲にも礼儀あり、とか。失礼ですよ、お姉様』




