第八話『霧の園。にゃんとも摩訶不思議にゃ世界にゃん!』のその②
第八話『霧の園。にゃんとも摩訶不思議にゃ世界にゃん!』のその②
「霧雨にゃ」
ここにはにゃにもにゃい。淡い青の光を放つ細かい雨が、まるでこの世界を形造ってでもいるかのように降り注いでいるのにゃ。
「ミストにゃんはどこに居るのにゃろう?」
途方に暮れにゃがら、誰も居にゃい空間をひとり歩くウチ。しばらくするとにゃ。不思議にゃことに気がついたのにゃん。霧雨が身体に当たっても感触がにゃいばかりか、すり抜けて地面まで落ちてしまうのにゃ。他にもにゃ。普通にゃら、激しく降れば降るほど、視界は閉ざされていくはず。にゃのに、ここでは、どんどん拡がっていく。
……そしてついにくっきりとした光景が目の前に。『透き通った青』との表現に見合う色の空間が地にも空にも拡がっていたのにゃ。
「地面は幾分、青みが増しているみたいにゃ」
視界が開けたこともあってか、落ち着いた気分に。と、その時にゃ。
「あれは……にゃんにゃ?」
青の空間に、にゃにかが夢幻のように浮かび上がってきたのにゃん。
「ようこそ。夢空間へ」
目の前にも、翅人型と思われるグレーのシルエットが現われたのにゃ。いかにも謎めいた感じ。でもにゃ。聞こえてきたのは、間違いにゃくミストにゃんの声。
(もう、ひとりぽっちはイヤにゃん)
歩きにゃがら、ずうっ、と思っていたのにゃ。心細かったのにゃん。ウチが、ほっ、と胸を撫で下ろしたのはいうまでもにゃい。
「これらは全て霧雨が見る夢。ここにあるもの。ここに棲むもの。わたしを含めて全てが。
ミアン。今、あなたは夢の中に居るのよ」
「ウチが夢の中に……。にゃら、霧雨がやんだり降ったりするのも夢にゃの?」
「違うわ。霧雨がやむことはない。やめば、夢は消え、ここも消えるもの」
「にゃって今、青空にゃん」
「濃密といえるまでに霧雨が細かくたくさん降っている。
ミアン。あなたの目、いえ、霊視でもとらえ切れないくらいに。
ただそれだけのことだわ」
「これで降っているとはにゃあ。にゃんとも不思議にゃ世界にゃ」
そして……友にゃちは姿を見せたのにゃん。
「ここが霧の都。ふふふっ。もうあなたは逃れられない。ふふふっ」
不可解極まる景色を背に、またまたミストにゃんの顔にはお得意の謎めいた表情が。
「ミストにゃん。それって」
「さっきいったはずよ。特に意味はないわ。あったら……怖いじゃない」
表情が一転、翳りが浮かぶ怖がり屋にゃんに。
「にゃったらいわにゃくても」
「ふふっ。わたしはね。期待を裏切らない女の子なの」
「誰も期待してにゃんかいにゃいのにゃけれども」
「ふふっ。隠さなくてもいいわ」
にゃんか頑固にゃ。自分の相手をする以上、『こうあって然るべき』との先入観か。それとも、『こうあって欲しい』との願望か。まっ、いずれにしてもにゃ。思い込みが激しいのは間違いにゃい。にゃもんで、『返事をするにゃけムダにゃ』と黙っていたらにゃ。
「そんなことより」
ウチの顔を見つめたまま、ミストにゃんはまた表情を一転。今度は、にんまり、と笑ったのにゃん。
「おめでとう。入れたじゃない」
「そういえば……確かににゃ」
実際には霧雨が、びっしり、と降っているらしいのにゃけれども、『本当にゃの?』って疑いのまなざしを向けたくにゃるくらい、それらしき感じは一切にゃい。視界も極めて良好で、遠くのほうまで見渡せるのにゃ。……にゃんとも変てこりんにゃ風景までもが。
「良かったわぁ。もしそうじゃなかったら」
「そうじゃにゃかったら?」
「丸投げは無理だったもの。それじゃあ、あとはよろしくぅ」
(ミーにゃんとおんにゃじにゃ)
知らず知らずのうちに、自分の両目が薄焼きせんべいよりも薄く。
「あんたもやるのにゃん」
「じょ、冗談よ。軽い冗談。本気なんてこれっぽっちも」
じっと睨みつけるウチ。相手のほおに一筋の冷や汗が流れたのを見逃さにゃかった。
「あったのにゃん」
「……さぁ時間が惜しいわ。始めましょう」
時間ではにゃい。ウチの追求を逃れようとして、のことにゃろう。
視線を逸らしたまま、ミストにゃんは翅を羽ばたかせたのにゃん。
(これがミストにゃん……)
友にゃちのもう一つの顔を見る思いがしたのにゃ。
荒ぶる神の如き進撃を展開するミストにゃんの姿が、ウチの目に映し出されたのにゃ。
びしゃあん! ずぼっ! ばしゃああん!
「♪ 破壊は続くのよ。どぉこまでもぉ。野を越え、山を越え、谷越えて ♪」
びしゃあん! ずばああん! どばああん!
ぐしゃ! べちっ! ずぶっ!
(ミストにゃん、あんた……)
緑深き山々が連なる壮大な自然を背景に、『氷の彫刻』みたいにゃ透明にゃ建物が、そりゃあもう、ぎっしり、と並んでいるのにゃ。学校や住居、公園や神社にゃど、造り自体は天空の村にある実空間のそれとたいして変わらにゃい。路地もちゃんと造られているから、普通にゃらば、そこを通るのが当たり前にゃと思う。にゃのにミストにゃんったら。
びしゃあん! ずばああん! どばああん!
ぐしゃ! べちっ! ずぶっ!
「♪ ついでにわたしぃも、建物もぉ ♪」
わけの判らにゃい歌を口ずさみにゃがら飛び続け、避けることにゃく怯むことにゃく、前方に立ち塞がる建物へと激突。霧状の姿へと変わってしまうのにゃん。見た目には、自分ごと潰れた、といった感じ。でもにゃ。ミストにゃん自身は直ぐに元の翅人型の姿へと戻るのにゃ。それも一度や二度じゃにゃい。路地を一切通らず、ありとあらゆる透明にゃ建物の壁にわざわざ自分からぶつかっていくのにゃ。潰れては元の姿に、弾けては元の姿に、の繰り返しにゃん。それも嬉しそうににゃ。
ばしゃあああん! ばしゃあああん! ばしゃあああん!
(無謀を通り越して、むしろ豪快にゃん!)
にゃんかこちらまでハイテンションにゃ気分に。『やれやれぇ! やるのにゃあん!』と声援までしたくにゃる。
がしゃしゃしゃああん!
柱がぶっ壊れ、大きにゃ建物がまた一つ崩れ落ちたのにゃ。とはいってもにゃ。地面も建物も触ってみれば、ぷよぷよにゃものばかり。飛び散った破片が顔に当たっても、ぷにゃ、という感じで、痛くもかゆくもにゃい。壊れたものは全て地面に吸収されてしまうらしく、跡を汚さず、綺麗さっぱりと消えてしまったのにゃん。
荒神のようにゃミストにゃんの爆進に、ある種の快感に浸っていたウチにゃのにゃけれども、その姿が遠のいたことでか、はっ、と我に返ったのにゃ。
「はぐれたら大変にゃ」
迷子ににゃらにゃいともかぎらにゃい。誰かに、『これらの破壊はあんたの仕業にゃろう』にゃどと疑われにゃいともかぎらにゃい。胸に込み上げる不安にあと押しされるが如く、大急ぎで追っ駆けたのにゃん。
むぐっむぐっむぐっむぐっむぐっ! むぐっむぐっむぐっむぐっむぐっ!
(地面もぷよぷよにゃん)
「ふぅ。だいぶ、見通しが良くなったわ」
右手を水平にして目の少し上辺りにくっつけ、遠くに目をやる素振りのミストにゃん。
目の前、とはいえども、だいぶ離れているのにゃ。左側を眺めている横向きの姿勢で、空に浮かんでいる高さはウチの視線とほぼおんにゃじ。にゃもんで、にゃんとかそばまで辿り着くと、直ぐに胸に抱えていた質問をぶつけてみたのにゃ。
「それって楽しいのにゃん?」
「なにが?」
「いや。そうやって自分で自分を壊すのがにゃ」
「ねぇ、ミアン」
声とともに、くるっ、とこちらを振り返るミストにゃん。
「わたしは新しいのが好き。だからいつも新鮮でいたいの。判るでしょ? この気持ち」
「ええと……」
(急に、『判るでしょ』っていわれてもにゃあ)
返す言葉が見つからにゃい。
「砕け散ってわたしはわたしでなくなる。でも直ぐわたしになる。輪廻転生こそがわたしの望み。でも実際には無理よね。だからこうやって擬似的なもので自分を満足しているってわけ。ねっ。判るでしょ?」
「いんにゃ。さっぱり」
この言葉を返すのがやっとにゃん。
「ふふっ。焦らないでもいいわよ。誰もがいずれは判ることだもの」
いかにも達観した物言いにゃ。『どう思うかは貴方次第』とでもいいたげにゃ顔をしたあとは……、興味を失ったといわんばかりに再び前を向き、翅を動かし始めたのにゃ。
(移り気にゃ性格にゃのかも)
しぃぃん。
破壊活動はようやく終焉の時を迎えたらしい。危にゃいのでいっとき離れていたのにゃけれども、再びミストにゃんのそばへと戻ったのにゃん。
「にゃあ、ミストにゃん。どうしてこんにゃ荒っぽい真似を?」
当然ともいえるウチの問いに対し、ウチの友にゃちも、これまた当然といった風に言葉を返してきたのにゃ。
「形あるものっていつかは壊れるのよ。目の前に立っている誰が造ったか判らない建物も、そして……わたしも。でしょ?」
「誰が造ったか判らにゃい?
……ってことはミストにゃんが造ったわけじゃにゃいの?」
「これら全部を? んなわけないでしょ?」
「自分のものじゃにゃいのに壊すにゃんて本当にいいのにゃ?
あんたもここに棲んでいるのにゃろう?」
「ここは創作広場。住居区は、ずうぅっ、と向こうよ。
それにね。ミアンも目にした通り、わたしは自らの身体を体当りさせて壊したの。
いうなれば、自分の命を賭けてよ。誰にも文句なんかいわせないわ」
「そんにゃ無茶にゃあ」
「破壊は元来、無茶なものよ。そぉれっ!」
どっがぁん! べっっちゃあ!
半壊した建物にトドメの体当りにゃん。
「情け容赦にゃく壊すにゃあ」
のほほん、とした生活が信条のウチとしてはにゃ。にゃんにゃん、つき合い切れにゃくにゃってきたのにゃん。
「霧の都は夢の世界にゃん!」
「あのね、ミアン。このお話そのものが、ファンタジーで、夢みたいなものわん。
今更、感動する理由なんてこれっぽっちもないわん」
「はぁう」
「なによ。大っきなため息なんかついて」
「夢の希望もにゃい幼児はこれにゃもん」
「本当、困ったものねぇ」
むかっ!
「ミアンもイオラも失礼だわん。アタシにだって夢はあるわん」
「へぇ、どんにゃ?」
「興味深いわ。聴かせてぇ」
「えっ。ええと…………世界征服だわん!」
「ぶふっ。まるで幼児みたいにゃ寝言にゃん」
「いいじゃないの、ミアンちゃん。幼児の夢なのよ。大切にしてあげないと」
「こらぁっ! 夢があるのとないのと、どっちがいいわぁん!」




