第七話『お姫様は大変にゃのにゃん!』のその④
第七話『お姫様は大変にゃのにゃん!』のその④
ミーにゃんがおとにゃしくにゃったのを見計らって、ウチは本来、もっと早くにしにゃければにゃらにゃかった質問に取りかかったのにゃ。
「ネモンにゃん。ウチらはにゃ。天空の村を身体とするヴィーナスにゃんに逢いたいのにゃん。にゃにか知ってたら教えて欲しいのにゃけれども」
「ふん」
ミーにゃんが鼻で笑う。
「モワン。ダメダメ。こんな妖精に判るはずが」
「知っているにゅ」
「あるわん」
(あのにゃあ……。前言をあっさりと翻しすぎにゃ)
「ミーにゃん。あんた、ちょっと黙ってにゃさい」
「……うん」
(おっ、素直でよろしいのにゃん)
うるさいのが静かににゃったことで、がぜん、話のやり取りがしやすくにゃったのにゃ。
「それで、どこに居るのにゃ?」
「ラモアが知っている。聞いてくるから待っててにゅ」
「にゃら、ウチらも一緒に」
「無理。ラモアは引っ込み思案にゅから。あと寡黙なのにゅ」
「そうにゃの? にゃらネモンにゃん。よろしくお願いするのにゃ」
「うん。任せてにゅ」
ネモンにゃんはそういってラモアの木が多数群生する奥へと消えていったのにゃ。
ミーにゃんが、いらいら、みたいにゃ感じで枝の上を行ったり来たり。
「ミーにゃん。もちっと落ち着きにゃさい」
「ちょっとかかりすぎだわん。ねぇ、ひょっとして逃げちゃったんじゃ」
「お待たせにゅ」
「ないとは思っていたわん」
(ミーにゃん、あんた……)
ウチは賢明にゃ判断をとることに。親友を無視して、ネモンにゃんの話に専念しようと考えたのにゃん。
「ネモンにゃん。それで結果は? どうにゃった?」
「ヴィーナスに逢うには『ゼノン』とかいう首飾りのペンダント部分に五つの宝玉を収めなければならないらしいのにゅ」
「うんにゃ。これのことにゃろ?」
ウチは頭を下に向けることで、自分の首にかかっているものを指し示したのにゃ。
「それにゅ! なら……これを」
ネモンにゃんが差し出した右の前足、肉球の上には、きらりと光る赤い宝玉が。
「これを預けるのにゅ」
ネモンにゃんの念動霊波にゃのにゃろう。宝玉が、ふわり、と浮かび上がったと思ったら、ウチの首へと近づいてくるのにゃ。
かちゃ。
ペンダントの空いたくぼみの一つに小気味の良い音を立てて填め込まれたのにゃん。
「ふぅ。やっと二つめにゃん」
「あと三つ。イオラの森のどこかにあるはずにゅ」
「まにゃまにゃヴィーナスにゃんへの道のりは長くて険しそうにゃん。
それじゃあ、ネモンにゃん。ウチらは一先ずこれで失礼するのにゃよぉ」
「また遊びにきて欲しいにゅ」
「もちろん、にゃよ。にゃあ、ミーにゃん」
「えっ」
突然、話を振られたからにゃろう。戸惑った様子にゃ。
「ま、まぁどうせ、イオラの森の中だし。ちょくちょくやってくるわん」
「有難うにゅ」
「にゃら、ミーにゃんもネモンにゃんの友にゃちにゃ」
ウチはそういって、ふたりを握手させたのにゃ。小っちゃい前足と小っちゃい手にゃもんでちょうどいい。ネモンにゃんが、にこっ、と笑みを投げると、ミーにゃんは一瞬、ぽっ、と顔を赤らめ、照れたようにゃ表情に。でもにゃ。直ぐに、にこっ、と相手に負けにゃいくらいの可愛らしい笑みをお返ししたのにゃ。
「にゃら、ネモンにゃん。また逢おうにゃあ」
新しい友にゃちが出来た喜びを心に抱いて、ウチらは『薬園』をあとにしたのにゃん。
イオラの森の中は幾つもの森と広場に分かれていてにゃ。これらの間を行き来するには、『森路』と呼ばれる道を通る。今、ウチが歩いているのもこの森路にゃ。
道の両側には木々が連にゃっていて、風が吹けば、いずこからか飛んできた木の葉が、ひらひらと舞い落ちる。赤や黄、それに緑といった色とりどりの葉を眺めつつ、ウチは落ち葉も彩る白っぽい土の地面を踏み締めているのにゃ。
快い風と木の葉が競演するこの空間。にゃんとも風情のある通り道にゃ。『散らばっている石ころを避けにゃがら』にゃのが、とぉっても残念至極にゃん。
(今度はどこへ行こうにゃん? ……ふにゃ?)
突如、ミーにゃんの翅の動きがとまってしまう。あれよあれよという間にウチの肩に下りてきて、がくっ、と膝を突いてしまったのにゃん。
「ミーにゃん。どうしたのにゃ?」
「ううん。判らないわん。いきなり身体が動かなくなったの」
「身体が動かにゃい……」
ウチはイオラにゃんからの注意を想い出したのにゃ。
「それは多分、霊力切れにゃん」
「霊力切れ? そんなことってあるはずないわん。他の場所ならいざ知らず、ここはイオラの森よ。周囲くまなくイオラの霊力が漂っているわん」
「イオラにゃんの話に依ればにゃ。こと周りの霊力を吸収する力に関しては、幼児クラスでは個体差が大きいのにゃと。低レベルから高レベルまで相当にゃばらつきがあるそうにゃ。でもってミーにゃんにかぎっていえば、児童期とにゃるまでは低めのレベルが続くらしいのにゃん」
「そんなぁ。じゃあ、どうすればいいわん?」
「取り敢えずは、ウチがミーにゃんを湖の広場まで送ってあげるのにゃん。イオラにゃんから霊力をもらったあとで、また探索に加わればいいじゃにゃいの」
「モワンはどうするの? アタシと一緒にもらうんじゃないの?」
「ウチは一日ぐらいじゃ霊力切れにゃんか起きにゃいのにゃ。にゃから、このまま探索を続けてみるつもりにゃよ」
おんにゃじ妖体でも、ミーにゃんとウチは違う。ミーにゃんは生まれにゃがらの妖精、妖体であることから、幼児期も三百年と長いのにゃ。それに引き換え、ウチは元々、普通のネコ。幼くして命を失い、化けネコとして生まれ変わった身にゃ。そんにゃいきさつもあってか、妖体としての年数を考えるのにゃら、ウチも幼児期にゃのにゃけれども、霊力を吸収する力はミーにゃんをはるかに凌ぐのにゃ。
「じゃあ、しばしの間、別行動なのわん?」
「そういうことにゃん」
「ちょっとさみしいわん」
「ミーにゃん。ミーにゃんが今しにゃければにゃらにゃいことは、身体を回復させて元気に飛び回れるようににゃることにゃ。そしてそうにゃるにはイオラにゃんのそばでゆっくりと休んでいるのが一番にゃのにゃ。
ウチはミーにゃんを頼りにしているのにゃよ。早く元気ににゃって、また一緒に宝玉を探そうにゃん」
「モワン……。判ったわん。それじゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわん」
いつににゃく弱々しい返事にゃ。
(寝てもらったほうがいいかもにゃ)
言葉をかける必要はにゃかった。ウチが空飛ぶ絨毯と化すと、自分から乗って身体を横たえたのにゃ。
「ミーにゃん。にゃら、湖の広場へ向かうにゃよ」
「うん。頼むわん」
ひらりひらひら。ひらりひらひら。
おんにゃじイオラの森の中にゃもん。空へと上がったにゃけで目的地が視界に入る。到着するのもあっという間にゃ。もちろん、にゃんのトラブルもにゃい。
(っていうより、あったらそっちのほうが奇跡にゃん)
上空を飛んでいる間にイオラにゃんは見つけていたのにゃ。湖近くの大岩で腰を下ろしているその姿は、『ミーにゃんの顔に良く似た、ちょっと背の高めにゃ人間の少女』といった感じにゃ。
どうして判るのかといえば、答えは簡単。ウチの命は、イオラにゃんが分け与えてくれたイオラにゃん自身の命の欠片と強く結びついているのにゃ。にゃもんでイオラにゃんがいかに変幻自在であろうと、直ぐに、ぴん、とくるのにゃん。また化けるモノについても、定番が幾つかあってにゃ。大霊蛇もそうにゃし、今のお姿もにゃん。
「イオラにゃあん!」
駆け寄ってこれまでの事情を説明したのにゃ。
「そうだったの。連れてきてくれて有難う、ミアンちゃん。
ミーナちゃん。しばらくは精霊の間で休みましょうね」
「うん」
ミーにゃんは見かけよりもずっと疲れていたに違いにゃい。短い返事をするや否や、ぐったり、とした様子で創造主へとしがみついたのにゃもん。
イオラにゃんの放つ光。淡い緑色の輝きが霊体二つを包み込む。
(これでもう安心にゃ)
「イオラにゃん。ウチはまた宝玉探しに戻るのにゃ」
「ミアンちゃんも気をつけてね。身体に異常を感じたら、直ぐに帰ってくるのよ」
「イオラにゃん……」
ミーにゃんの笑顔とイオラにゃんの優しさ。この二つが、ウチの脳裏に、『家族』という言葉を思い浮かばせてくれるのにゃ。『ここはウチの棲み家にゃ。ウチには帰るところがあるのにゃん』と信じさせてくれるのにゃ。
「有難うにゃん。にゃら、行ってくるのにゃ」
ミーにゃんは、抱き締めているイオラにゃんの胸に顔を埋めたまま。もう眠っているみたいにゃ。イオラにゃんが手を振る姿を背に、宝玉を求めてウチはさっそうと飛んでいったのにゃん。
「第七話もこれにて終了にゃん!」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「今回は宝玉が一つ手に入ったわけにゃから、お話としても前進したわけにゃ。
とぉっても、おめでたいのにゃん」
「アタシのしおらしさや弱さも、ばっちし、出ていたわん。
これでアタシの負のイメージも一気に払拭。おめでたいわん」
「ワタシの優しさもね。
ねぇ、ミーナちゃん、ミアンちゃん。
おめでたいことだらけなんだし、これをもって最終回にしてもいいんじゃない?」
「でもにゃ。まにゃお話は続くのにゃけれども」
「ミアンのいう通りだわん。残りをどうするつもりなの?」
「それは……、こんな風にしちゃダメかしら?」
「どれどれ……ふにゃん!」
「なになに……きゃふん!」
『次回からは「付録」です』




