第六話『芸術に悩むマロンにゃん!』のその④
第六話『芸術に悩むマロンにゃん!』のその④
ウチらの作業はまにゃまにゃ続く。
「どうにゃん? 一回り大きくにゃったろう?
これ全体を一つの箱としてみにゃしてにゃ。おんにゃじように周りに箱を置けば、更に大きくにゃる。並べる箱を造り出せるかぎりは、いい換えれば、おのれが持つ霊力の限界ぎりぎりまでは大きくすることが出来る、ってわけにゃん」
意気揚々と説明するウチに対し、マロンにゃんはいささか不満げにゃ様子にゃ。
「でもミアンちゅわん。これでは四角のままでちゅ。
幅は大っきくなりまちゅけど、高さは変わりまちぇんでちゅにゃ」
「心配は要らにゃいのにゃよ」
ウチは右手の肉球で幼子の頭を撫でる。
「取り敢えずはもっと大きくしようにゃん」
不満げにゃ顔は変わらじ。それでも、マロンにゃんはおとなしくいう通りにしてくれたのにゃ。にゃもんで、かにゃり見栄えのする大きさにまで造れたのにゃん。
(何分、空間に置く作業にゃ。傾かにゃいようにしにゃいと)
そんにゃ気配りの甲斐もあってか、見た目にも水平に置かれていたのにゃ。
「マロンにゃん。ここまでにゃ」
ウチらは並べた箱の上に立ってみたのにゃ。
「ほら、今は一辺が十個の箱から成る四角が出来ているにゃろう?」
「はい、でちゅにゃ」
「この四角を一段目として、お次は二段目を造るのにゃ。一段目とおんにゃじ大きさの箱をにゃ。今度は一辺が九個とにゃるように並べるのにゃん」
「はいでちゅ」
やり方が一段目とおんにゃじこともあってか、特にこれといった質問も出にゃい。にゃもんで、ウチもマロンにゃんも、もくもくと作業を続けたのにゃ。
そして、二段目も半分ぐらい並べられた頃にゃ。
(しっかしぃ……、にゃんとも地味にゃにゃあ。こうにゃにか、ぱぁっ、と)
そろそろ飽きてきたウチの目に映るは、『ハマった』ように、ひたすら作業に励むマロンにゃんの姿が。『お姉さん役の自分がこれではいけにゃい』と自分を戒め、ウチはまた作業に没頭したのにゃん。『老いては子に従え』てしまったのにゃん。
そして……こうして出来上がった二段目を真上の空から見るとにゃ。
一段目と二段目の中心はおんにゃじ。でもにゃ。一段目の中心が箱一つにゃのに、二段目は四つの箱が中心にゃ。並べ方としては一段目の二つの箱の間に、二段目の箱を一つ乗っけっているのにゃ。大きさをいえば、二段目は一段目よりも一回り……詳しくいうにゃら上下左右のいずれもが半個分……小っちゃくにゃっているのにゃ。
以降、中心はおんにゃじでも、一辺に用いる箱の数を一個ずつ減らしにゃがら、三段、四段と積み上げていったのにゃん。『地味にゃにゃあ』とぼやきにゃがらも、こつこつと。『これもマロンにゃんの為にゃん』と思って、ひたすら、こつこつと、にゃ。
作業の過程では感動らしきものもあったのにゃ。にゃにしろ造る速さが半端じゃにゃいもんで、マロンにゃんのそばには常に箱が山積みされた状態。まるで『運ぶのが遅いでちゅにゃ』と急かされてでもいるようにゃ。
(早くしにゃいとにゃ)
半ば焦り気味とにゃったウチへ、にゃんと、マロンにゃんから、
「あたちゅも手伝いまちゅね」と、涙が出るようにゃお言葉が。
(マロンにゃん!)
心に、じぃぃん、ときたのはいうまでもにゃい。この子と巡り逢えた幸運をたにゃたにゃ感謝したのにゃん。
(ああ、ウチの心にあるミーにゃんの優しさが霞んでいくうっ)
そして……ついに最後の一個を乗せて、念願の立体図形が完成したのにゃん。
ばんにゃあい! ばんにゃあい!
「ざかざかの四角錘にゃのにゃけれども」
「いやいや。立派にゃものでちゅにゃ」
うんうん、とうなずくマロンにゃん。『喜んでもらえてにゃにより』とこちらも嬉しい気分に浸っていたのにゃけれども……、
二度あることは三度あるとのたとえの通り、これで終わりではにゃかったのにゃ。
「ミアンちゅわん。もっともっと大きにゃものが造りたいでちゅにゃあ!」
子ネコの欲望を更にかき立てる結果とにゃってしまったのにゃん。
「でもにゃ、マロンにゃん」
ウチは諌めることにしたのにゃ。
「あんたはまにゃ幼子にゃ。むやみやたらに霊力を使うことは妖体としての寿命すら短くしてしまうのにゃよ。ここら辺りがしおどきにゃん」
「そんにゃあ、でちゅにゃ」
いかにも悔しそうにゃ。ぷぅ、と脹れっ面ににゃったと思ったら、箱座りに戻ってしまったのにゃもん。
(まぁ気持ちは判るのにゃけれども)
しばし沈黙の時が流れたのにゃ。マロンにゃんは目を瞑ったままで、ぴくり、とも動かにゃい。
(眠っているのにゃろうか。それともにゃにか考えごとでもしているのにゃろうか)
そして……ゆっくりと目を開いたその時、子ネコの顔に浮かび上がったのは、『諦め』の表情にあらずにゃ。
「なら、みんなでやればいいでちゅにゃ」
「みんにゃで?」
「この箱は元々、他の地中ネコが造っていたものなんでちゅにゃ」
「にゃら、教えてもらったのにゃん?」
「違いまちゅにゃ。見よう見まねでなんとか覚えたのでちゅにゃ」
「ふぅぅん。たいしたものにゃ」
「にゃから、みんなもこれが造れまちゅにゃ。力を合わせてやれば、もっともっと大きなものが必ず出来まちゅにゃん!」
そういってマロンにゃんは自分の仲間らが集うところへと駆け出したのにゃ。にゃんとも、すっごい子ネコパワー。その後ろ姿を見守るこっちは勢いに圧されて、唖然とした気持ちで突っ立っていることしか出来にゃいのにゃもん。
「幼子とはとても思えにゃい行動力にゃ」
ひとりごとのように呟いたのは、しばらくしてからにゃ。夢から覚めたようにゃ心持ちでいるウチの肩を、ぽん、と叩く者が。『誰にゃの?』と思って振り返ってみれば、そこには。
「たいしたもんだねぇ」
感心したようにゃセリフを吐きつつ、子ネコの走る後ろ姿を見つめている年上ネコ。いつの間にやら、ミクリにゃんが戻っていたのにゃ。
「マロンにゃんにゃろう? 全くにゃ」
うなずくウチを目にしつつも、頭を横に振る友にゃち。
「違うよ。すごいのは、ミアン君、君だよ」
「ウチ?」
(はて?)
言葉の意味が判らず、首を傾げにゃがら聴き返したのにゃ。
「どういうことにゃん?」
「あの子はね。あんまり仲間と交りたがらないんだよ。創作に没頭しやすい性格の上に引っ込み思案。ネコ見知りっていうのも拍車をかけているかもしれない。ひとりで、うんうん、と唸りながら絵画の思索に耽っている、みたいな毎日をいつも送っているのさ」
ウチは想い返してみるのにゃ。
(いわれてみれば、初対面の時もそうにゃった)
「でもにゃ。ほら、今にゃって」
ウチはあごでマロンにゃんを示す。幼子は仲間らと交渉をしているみたいにゃ。
(ネコ見知りとはとても思えにゃい行動にゃん)
「だからすごいのさ。君は」
「ウチが?」
「創作意欲をかき立たせることで、性格を一変させるような奮起を促したじゃにゃいか。あの子は今、自らの意志で行動し、仲間との接触を試みている。
この空間の誰もが望んでいたにもかかわらず出来なかったことを、君はあっさりとやってのけたんだよ。これをすごいといわずして、なにがすごいのさ」
ウチはミクリにゃんの言葉の一部が引っかかったのにゃ。
「誰もが望んでいたとは?」
「ここの長はね。自分の命の欠片をあの子に授けたんだよ。後継者にしたくってね。ナワバリ内の誰もが知っている。いずれは自分たちの未来を委ねるネコだってさ。でも、なかなかみんなと打ち解けてくれなくってね。困っていたんだ。
ミアン君。君はね。マロン君の進むべき道を開いただけじゃない。ボクたちの未来をも開いてくれたんだよ」
「そんにゃあ。大げさにゃよぉ」
ウチの返事のあと、ちょっとの間をおいて、目の前の友にゃちが、にやっ、と顔を歪ませたのにゃ。
「ふふっ。かもね」
(やっぱりにゃ。冗談……おや?)
ミクリにゃんは直ぐにマジメにゃ表情へ。話相手の気持ちを量りかねたウチが言葉を控えていたらにゃ。
「でもね。少なくともきっかけを造ったのは間違いないんだ。誰もが造ろうとして造れなかったもの。造りたくても造れなかったもの。それを君は造ったんだ。素晴らしい。頭が下がるよ」
次いで喋った口調もマジメそのものにゃ。冗談とは微塵も感じられにゃい。
「ウチが……にゃあ」
仲間と話しかけるマロンにゃんの姿を、どうしてか誇らしく思うウチがそこには居たのにゃん。
と、ここでいきにゃり。
『モワンモワン! 助けてぇ!』
「これは……」
「ミーにゃんからの霊覚交信にゃ!」
ウチを『モワン』とか『モワンモワン』とか呼ぶのはミーにゃんにゃけにゃ。
「こうしてはいられにゃい。ミクリにゃん、あとの探索は」
「判っている。こちらでやっておくよ」
マロンにゃんは、と目を向けたら、話し合いの真っ最中にゃ。それでも時折、ちらちらっ、とこちらを振り返ってはいる。上手くいっている風に思えるのにゃけれども、ちょっと気ににゃるところにゃ。
(とはいってもにゃ。ミーにゃんの一大事にゃ)
ウチに妖体……『化けネコ』にゃん……としての完全な命を授けてくれたのは、他にゃらにゅイオラにゃん。イオラの木に宿る精霊にゃ。でもって、そのイオラにゃんが造りしお姫様がミーにゃん。イオラの木に咲く花の化身、妖精にゃ。ウチとは生まれにゃがらのつき合いで、親友同士でもあるのにゃん。
(にゃにを置いても守らねば!)
「ミクリにゃん」
「うん。あとはボクたちに任せて。ミアン君、今直ぐに空路を開いてあげるよ」
じっとしていられにゃいウチの思いを察してくれたのにゃろう。ミクリにゃんはネコ人型モードとにゃって、右手の肉球を地中の空へとかざす。たちまち、地層の一角に、ぽっかり、と黒い穴が開いたのにゃ。
「本当はやたらと開けちゃいけないんだけどね。君へのお礼さ」
「誰かに責められはしにゃいにゃろうか?」
「大丈夫だよ。長も話せば判ってくれると思うし。さぁ早く行って」
「……じゃあ、あとは頼むにゃん」
心残りはあるものの、ウチにはやるべきことが、やらにゃければにゃらにゃいことがあるのにゃ。
(ミーにゃん、待っていにゃさぁい。直ぐに駆けつけるのにゃよぉ)
こうした地中からの脱出は初めてにゃ。それでもウチはためらうことにゃく、穴の中へと飛び込んにゃのにゃん。
「第六話及び地中編が、やっと終わったのにゃあん!」
ぱちぱちぱち。ぱちぱちぱち。
「そして、いよいよ、アタシの一大事勃発だわん!」
「どうしてそんにゃに嬉しそうにゃの?」
「アタシの出ない話が終わったからに決まっているわん!」
「最後の最後に出たじゃにゃい」
「ふん! 声だけじゃない。
あれっぽっちで満足するオメデタさんが居たら、顔を見たいわん!
是非とも、お目にかかりたいわん!」
「ミーにゃんミーにゃん。そんにゃに大声を出してはいけにゃいのにゃよぉ」
「なんで?」
「ほら、あそこの隅っこを見にゃさい」
「うわぁっ! 暗く淀んだ空気の中で、ずぅぅん、と沈んだ顔があるわん」
「ミーナちゃん、お願い。
出番が全然ない者の気持ちを察してあげるぐらいの優しさは持ってね」
「ええと……。ねぇ、ミアン。本当に全然ないの?」
「出番とはにゃあ。次は無理でも確かどこかで……」
「本当なの? ミアンちゃん」
「ううん。『回想』みたいにゃ形では、ちらっ、とあったようにゃあ……」
「だって。イオラ。良かったわぁん」
「まっ。ミーナちゃんったら、上から目線ね」




