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第六話『芸術に悩むマロンにゃん!』のその③

 第六話『芸術に悩むマロンにゃん!』のその③


「ウチは『ミアン』というものにゃ。ミクリにゃんを知っているにゃろうか?」

「うん。知っているでちゅにゃ。時々、一緒に造ってもらいまちゅにゃん」

「ウチはにゃ。そのミクリにゃんの友にゃちにゃのにゃ」

「そうにゃったのでちゅにゃん!」

 マロンにゃんの警戒心が一掃されたのにゃろう。顔に浮かんでいた不安げにゃ表情が綺麗さっぱりと拭い去られてしまったのにゃん。

(どうやら、この子もミクリにゃんとは友にゃちみたいにゃ。

 友にゃちの友にゃちは友にゃち、ってことで、協力するのにゃん)

 先ほどいいかけてやめた言葉を、ウチはまた口にしたのにゃ。

「マロンにゃんは平面の三角形とか四角形は造れるのにゃろう?」

「えっ」

 唐突にゃ質問にゃったのか、怪訝そうにゃ顔つきにゃ。でも直ぐに、

「出来るでちゅにゃ」と言葉を返してきたのにゃん。

「形は違っても、辺の長さを全部おんにゃじにゃものに揃えることは?」

「朝飯前でちゅにゃん」

 自慢げともとれる様子にゃ。

(朝飯前とはにゃあ……。今はイオラにゃんから霊力をもらっているし、生きる上では、にゃんの不便もにゃいのにゃけれども……)


 生前はウチも人間の家庭で両親とともに暮らしていたのにゃ。もちろん、朝食もちゃんと食べさせてもらえた。にゃからマロンにゃんの一言は、ある種のノスタルジーにウチを陥らせるには十分にゃ力があったのにゃ。

(また自分の大好きにゃ食べ物を口にする日が来るのにゃろうか?)

 イオラにゃんから実体波を扱える力をもらえたので、食べ物を口にすることはもちろん、味わうことも出来る。とはいってもにゃ。それらを造って食べさせてくれる人間のご主人様は居にゃい。今のウチにとっては儚にゃい願いでしかにゃいのにゃん。


 はぁう。

 子ネコの見ている前で不覚にもウチは深いため息を漏らしてしまったのにゃん。

「どうしたのでちゅにゃん?」

 可愛い顔にまたまた心配そうにゃ表情が。自分の返事に対するウチの反応に不可解にゃものを感じているようにゃ。

(ダメにゃん。こんにゃことを考えていたのでは、ちぃっとも話が先に進まにゃい)

「いや、にゃんでもにゃい。それより今の話にゃん。

 正方形や正三角形の一辺が全部同じ長さのものを造れるのにゃろう? にゃったら」

 ウチは前のめりの格好で勢い込む。

「それらを貼りつけたらどうにゃろう? 正方形一つを地面に寝かせてにゃ。各辺に正三角形の一辺を合わせるのにゃ。霊力同士にゃもん。簡単にくっつく」

「はい。そうでちゅ」

「さてと、マロンにゃん。ここで問題にゃ。正三角形は全部で幾つ必要にゃと思う?」

「ええと……、四角の辺に合わせるから、四つでちゅにゃ」

「その通りにゃ。これら四つをずれにゃいようにくっつけたあとはにゃ。くっつけた部分を底辺にして、それぞれの正三角形を折り曲げ、立たせるのにゃ」

「ふむふむ」

「でもって、隣合う辺同士が合わさるまで内側へと倒していくのにゃ。四つの正三角形が全てくっつき合ったところで、『正四角錘』の完成、とにゃるのにゃ」

(まぁ側面の三角形は二等辺三角形でもいいと思うのにゃけれども……、

 説明が楽にゃもんで、つい、にゃ)

「にゃるほどでちゅ。やってみるでちゅにゃ」

 そういうと、箱座りをやめて四肢を伸ばしたのにゃ。どうやら、ネコ人型モードで宙に浮いたまま作業をするつもりのよう。マロンにゃんの目には定規でも見えているのにゃろうか。右手の指を使うことで正方形や正三角形と思しき図形をそれぞれ一つずつ、いとも簡単に造ってしまうのにゃ。

(そうにゃ。一枚絵にするわけじゃにゃいから、キャンパスは要らにゃいのにゃん)

「お次は、でちゅにゃ」

 造ったばかりの正三角形に右手を当てたのにゃ。『にゃにをするつもりにゃん?』と思っていたら、今度はその右手を横へとずらしたのにゃ。すると……あぁら不思議にゃ。空いた宙にもう一つ、同型と思しき正三角形が現われたのにゃ。これを繰り返すことで、あっという間に四つの正三角形を作成。全てのパーツが揃ったのにゃん。

(この子は天才かもにゃ。手伝うところにゃんか全然にゃい)

 とはいえ、がっかりする必要はにゃかったのにゃ。ちょっと大き目にゃこともあってか、辺と辺をくっつけるとこにゃんかに手こずっていた。にゃもんで、『ここは出番にゃ』とウチも手伝ったのにゃん。ふたりで宙を泳ぎにゃがらの作業。手間取るかと思いきや、どうしてどうして。地上で作業するよりも軽快にことが運び、『ちょっと休もうにゃん』とか、『飽きたにゃあ』にゃんて思う前には完成してしまったのにゃん。

 ばんにゃあい! ばんにゃあい!

 歓喜の声とともに両腕を上げて、手のひらを、ぱっ。

 これを二、三回ぐらい、ふたり揃って繰り返したのにゃ。

 ウチはマロンにゃんを振り向く。マロンにゃんもウチを。

「やったにゃあ!」

「嬉しいでちゅにゃん!」

 にっこりと微笑み合い、お互いの手と手を取り合う格好とにゃったのは、ごく自然の成り行きにゃ。友にゃち関係みたいに打ち解けた姿がそこにはあったのにゃん。


 立体の作品を造れたことで、マロンにゃんの創作意欲が更に刺激されたみたいにゃん。

「ねぇ、ミアンちゅわん。教えて欲しいことがありまちゅのにゃ」

「にゃんにゃ? マロンにゃん」

「あたちゅ、もっともっと大きにゃものを造ってみたいのでちゅにゃ」

「今の要領でやれば簡単に出来るにゃろう?」

「ところがそうはいかにゃいのでちゅにゃ。これ以上の大きさににゃると、図形一つだけでも歪んだ格好とにゃってしまって」

「そういえば、最初にもそんにゃことをいっていたにゃあ」

「困っていまちゅ。にゃにかいい方法はありまちぇんでちゅにゃ?」

「と急にいわれてもにゃあ。……ふぅむ」

(ウチはネコにゃもん。考えるのはにゃあ)

 そう訴えたかったのにゃけれども、口を噤み、腕を組むしかにゃい。マロンにゃんの可愛い顔に浮かぶ哀願するようにゃまなざし。これが『にゃんとかしてあげたいにゃあ』との気持ちを強めてしまったのにゃ。まさにウチの泣きどころ。こういうのに弱いのにゃん。

 妖精はわがままで悪戯好きという。ウチの親友であるミーにゃんも決して例外じゃにゃい。にゃのに何百年も一緒に暮らしていられるのは、ウチがこうした性格の持ち主にゃから、というのもあるようにゃ気がするのにゃん。

(まぁそれはそれとして。にゃにかいい考えは……)

 力ににゃりたいと思う心に加えて年上ネコとしてのちょいとばかりのプライドが、『頭を使いにゃさい』との無理難題をウチに突きつけてくる。『にゃら、頭突きでも』と冗談でかわそうにも、自分自身が相手では通じるはずもにゃい。とまぁそんにゃこんにゃでウチが思案に明け暮れる一方、マロンにゃんは待っているのが退屈とみえて、正立方体と思われる小さめにゃ箱をこしらえていたのにゃん。

「よぉし、これでいいでちゅにゃ」

 先ほどと同様、箱に肉球を当てたまま手をずらすことで、同じ箱がお隣に出来たのにゃ。それを繰り返すことで、二個から三個へ、三個から四個へと数を増していく。

「すごいものにゃん……はっ!」

 二度目の珍事。またもや、頭に、ぴん、ときたのにゃ。

「そうにゃん!」


 いい考えが浮かんにゃ時の生き物が起こす反応って、どんにゃものがあるのにゃろう。きっと種を問わず、さまざまにゃものがあるのに違いにゃい。

 思いついたこと自体に満足して、ぶふふっ、とほくそ笑んでいるにゃけの者も居るにゃろうし、にゃにか手柄でも立てたかの如く、誰かに吹聴し回る者も居るにゃろう。もちろん、閃いた思いつきを元に、すぐさま行動に打って出る者も居るのに違いにゃい。

 ウチも、『自分の考えを直ぐに知らせたいにゃあ』との衝動に駆られてしまったのにゃろう。幼子相手ということも忘れ、大声を張り上げてしまったのにゃん。

「マロンにゃん、これにゃ! これにゃら出来るのにゃよぉ!」

 びくっ、と怯えるかと思いきや、どうしてどうして。にゃかにゃか腹の据わった子ネコにゃ。『教えて』とばかりに、きらきらとした目をこちらへと向けてきたのにゃん。

「マロンにゃん。どうせ造るにゃら、うぅん、と大きにゃものを造ろうにゃん!」

 嬉しそうにうなずく顔が直ぐ目の前にあった……のはいうまでもにゃい。相手のテンションが上がれば、こちらも同調するのは自然の理というもの。勢い込んで喋り続けることとにゃる。

「どうしたらいいのでちゅにゃ?」

「今マロンにゃんが造った箱を利用するのにゃ」

「でもこれは四角でちゅにゃよ?」

「構わにゃいのにゃ。これらの箱をいっぱい造るのにゃん」

「箱を?」

「そうにゃん。先ずは箱の一つをにゃ」

 ウチはマロンにゃんから箱をもらうと、空間の一カ所に置いたのにゃん。

「そんでもって、箱の周りをおんにゃじ箱で埋め尽くすのにゃ」

「同じ大きさでちゅね。判りまちたでちゅにゃ」

 マロンにゃんが造った箱をウチが受け取り、最初に置いた箱を囲む形で並べていく。これを繰り返すことで、いとも簡単に八方向全てが埋まったのにゃん。


「ミアンは小っちゃい子には優しいわん」

「うんにゃ。ミーにゃんも大好きにゃよ」

「ねぇ、ミアンちゃん。ワタシはワタシは?」

「イオラ……。無理にアタシより小さくならなくたって」

「無理じゃないわ! やろうとと思えば、心だって身体以上に」

「やめにゃさい。あんたは村の守護神にゃんよ」

「そうよ。手に負えなくなるだけだわん」

「ねぇ……。ミーナちゃん。最近、セリフがひどくない?」


「大丈夫にゃ、イオラにゃん。

 ミーにゃんはにゃ。自分のことをいっているのにゃん」

「あっ。なぁるほどね」

「ミアンったら、なんてことを。アタシのどこが手に負え」

「ミーナちゃん、エラいわ。幼児なのに、もう自分を判っちゃうなんて。

 きっと将来は立派な妖精になるのに違いないわ。誰にも出来ることじゃないもの。

 さすがはワタシの造り子。イオラの森のお姫様ね」

「……ないかは自分でも判っているわん」

「ぶふっ。これで八方めでたしめでたし、にゃん。

 ……にしてもにゃ。面白いにゃあ。ミーにゃんって」

「んもう! イオラもミアンもぉ!

 喋っているさなかに、あれこれと頭を悩ませるようなことをいうのはご法度だわん!」


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