第五話『ミクリにゃんとの出逢いにゃん!』のその②
第五話『ミクリにゃんとの出逢いにゃん!』のその②
(しかし……、そんにゃことで負けてはいられにゃいのにゃよぉ)
「本当の美しさとはにゃ。心のうちから込み上げる思いが形とにゃって表われたものにゃん。そしてその代表格のネコが……、にゃにを隠そう、ウチにゃのにゃん!」
いい切ってしまったのにゃん。
(まぁいいにゃん。真実にゃし。少にゃくてもウチはそう思っているのにゃし)
「ふぅぅん。そうなんだぁ」
疑わしそうにゃ目つきではにゃい。
(やっぱりにゃ。ウチの美しさは誰しもが認めるところに違いにゃい。
……ああでもにゃ。それにゃらどうしてミーにゃんは気がつかにゃいのにゃろう?)
ウチは自分の疑問に対する答えを見つけ出そうと、いつしか『推理』という名のゲームにのめり込んでしまったのにゃ。
(うぅぅんと、うぅぅんと……本当にどうしてにゃあ…………はっ!
そうにゃん! そうに違いにゃいのにゃん!)
珍しくもウチの脳裏に閃きらしきものが。
(ミーにゃんはまにゃ幼いのにゃ。
にゃから真の美しさを認めることが出来にゃいのにゃん)
謎が解き明かされた瞬間、ぱぁっ、とウチの心に希望の光が射し込んできたのにゃ。
(にゃら、いずれはミーにゃんも気づいてくれる。よぉし。未来は明るいのにゃん!)
頭の一カ所がすっきりしたところで、……ウチは我に返ったのにゃん。
(ふにゃ?)
「あにょぉ、にゃあんでウチをじろじろと眺めているのにゃん?」
「なぁんか物思いに耽っているみたいだったからね。
邪魔しちゃ悪いから、終わるまで待とうかな、とか思ってさ」
(にゃんと!)
ウチは感銘を覚えずにはいられにゃい。
「初対面の相手にゃというのに……。
その温かい心遣い、痛み入るのにゃん」
前足を立て、後ろ足を屈した状態で、ぺこりと頭を下げたのにゃ。相手はちょっと照れたようにゃ様子。『いいって、いいって』と前足を振ったあとは、『美』の話へと戻したのにゃ。
「じゃあ、地上では君が美ネコなんだね?」
(うんうん。判ってもらえたみたいにゃん)
「そういうこと。ウチこそ正真正銘の美ネコにゃ。判ってくれてにゃにより……うん?」
にゃにか引っかかる物言いにゃ。にゃもんで相手の言葉を自分の中で反芻してみたらにゃ。またしても閃きが。理由が判ってしまったのにゃん。
「今、『地上』っていったにゃ。ひょっとして」
「ふふっ。そう。地中だよ、ここは」
「地中? するとあんたは?」
「ふふっ。ただのアホさ。それでも知りたい?」
いかにも、もったいをつけるようにゃ喋り方にゃ。にゃもんで、『にゃら、いい』とよっぽどいおうとしたのにゃ。でもにゃ。恥ずかしげもにゃく自分のことを『アホ』と呼んにゃ、真実を語ったのであろうその勇気に敬意を表し、こくり、とうなずいたのにゃん。
「問われて名乗るのもおこがましいけどね。ボクは地の妖精ミクリ。地中ネコだよ」
「にゃあんと!」
これが……、ウチが初めて体験した、地上ネコ以外のネコとの出逢いにゃん。
きらぁん、きらきら。きらきら。
案内されてナワバリの奥へと来てみたのにゃ。にゃにかは判らにゃいのにゃけれども、色とりどりのきらきらしたものが空間のあちらこちらに浮かんでいる。いや、動いているものまであるのにゃ。
「ミクリにゃん。これはにゃんにゃのにゃろうか?」
「これらはね。みんな、霊糸を応用して造った霊描筆『ドロウ』で描いた絵画だよ」
「霊糸ってにゃんにゃ?」
「霊力を糸状の形にしたものだよ。地中ネコはね。みんな、指先から霊糸を射出することが出来るんだ。本来は闘うことに使うみたいなんだけどね」
「闘う? 天空の村で? そんにゃの」
「あり得ないだろう? だから、『宝の持ち腐れ』っていう表現が正しいかどうかは別として、このままじゃ使い途がないからね。なんでもいいから役に立つものにしよう、って、『もったいない』精神がフルに発揮されたのさ。まぁ『ケチ』とか『貧乏』な者が良く思いつく発想らしいから、エラそうにはいえないけどね」
「幾らにゃんでも『ケチ』っていうのはにゃ。確かにゆとりある者よりは、『もったいない』精神が旺盛かもしれにゃいけれども、もちっとユルい表現にしたらどうにゃん?」
「ふぅぅん。たとえば?」
「そうにゃにゃあ…………はっ!
ミクリにゃん、どうにゃろう? 『節約志向』といういい方は」
「おおっ。いいねぇ。さすがだよ。いいセンスをしているじゃないか。
『節約志向』か。うん。それで決まりだ」
「ところでにゃ。どんにゃいきさつでドロウにゃんかを思いついたのにゃん?」
「『荷物を運ぶのに使っては?』とか、『これで霊布を造るというのは?』とか、そりゃまぁあれこれと考えたらしいよ。実際にやっている者も居るには居る。でもねぇ。荷物運びにしたって、お務めじゃないから毎日やるわけじゃない。かといって、霊布を造ろうとしてもねぇ。エラく細かい作業だから、やりたいと思うネコはかぎられてくる」
「にゃろうにゃあ」
「出来れば、毎日使って技を高めていけるものを、と思っていたんだって。
で、大昔の長老たちが、『ならば、趣味はどうかな?』ってことで、あれこれ考えて考えて考えた末に辿り着いたのが」
「絵を描くことにゃん?」
「そうさ。霊糸にちょっとした呪の細工を施すだけで、指先を筆にして色がついた直線や曲線を描ける、っていう簡便さもあと押ししたみたいだよ」
「具体的には?」
「先ずは、こうやってね」
そういってミクリにゃんはネコ人型モードの姿勢に。ネコ差し指をおっ立てた右手を前へ、自分の目線よりも少し上へと差し出したのにゃ。
「指先をドロウにして、霊糸を放つんだよ」
にゅうぅ。
「そしてね。ほら、こんな風に動かすだけで」
ふるふるふる。ふるふるふる。
白い光線の一筆書きが描かれていくのにゃ。
「どう? お魚さんの格好が出来たろう?」
(にゃんとも、ふにゃふにゃにゃあ……。まぁでもにゃ)
「格好はにゃ」
「ぐふっ。そこを追求されると弱いなぁ。絵心ってぇものがあんまりなくってね」
「ウチもにゃのにゃけれども……。それで、動くっていうのは?」
「絵が出来上がったらね。こうやって、と」
そういいにゃがらミクリにゃんは、お魚にゃんらしきものの絵に右手を当てたのにゃん。触れている手が緑色に輝く、と同時に、光が伝わったかの如く、お魚にゃんの絵もまた緑色に。でもにゃ。瞬く間に双方の光は消えたのにゃ。
(これで終わりにゃろうか?)
ミクリにゃんの顔を、ちらり、と覗いてみる。『あれを見てごらん』といわんばかりにあごを突き出したので、お魚にゃんの絵を振り向いたのにゃん。すると、どうしたことにゃろう。ふっ、と尾っぽが振るわれた、と思う間もにゃく、お魚にゃんが泳ぎ出してしまったのにゃん。
「にゃんと! まるで本物みたいにゃ」
素っ頓狂にゃ声を上げてしまったウチを覗き込むミクリにゃんの顔は、いささか自慢げとも見てとれる。いや、顔ばかりじゃにゃい。話しかけてきた声にも、同じ感情の響きが込められていたのにゃん。
「どうだい? ボクたちの力は。絵を描けるだけじゃなくって、描いたものを動かすことだって出来るんだ。……とまぁそういうわけでさ。『すごい』って褒めてくれるなら今だと思うよ」
ミクリにゃんの目が、『ほらほら、早く早く』と期待に染まっているのにゃ。もちろん、ウチはミーにゃんとは違って空気の読めるネコ。にゃもんで、当然。
「すごいにゃあ。すごいにゃあ。すごいにゃあ」
アホみたいに『すごいにゃあ』の三連発をお見舞いしたのにゃん。『これくらいやれば相手もさぞかし気分がいいのに違いにゃい』と思っていたところ、想像以上の反応にゃ。打ち解けたようにゃ親しげにゃ言葉をかけてきたのにゃん。
「うんうん。君は芸術の判るネコだね。……そうだ!
ミアン君。こうして出逢えたのもなにかの縁だよ。ボクと友だちにならないか?」
「お話の中で、ミクリんが舞い上がっていたわん。
ミアンって、相手を乗せるのが本当、お上手だわん。
ああそれとも、おべっかを使い慣れているっていうべきか……よぉし」
ぱたぱたぱた。
「ミアン。ねぇ、ミアンってばぁ」
「どうしたのにゃ? ミーにゃん」
「えへん。こう見えてもアタシは動じない女の子だわん」
「ふぅぅん。そうにゃの?」
「でね。なんでもいいからアタシをおだてて欲しいわん。
きっと、いや、絶対に、びくともしないわん」
「まぁミーにゃんがそういうのにゃら……」
「ミーにゃんは天才にゃあ!」
「えっ!」
「ミーにゃんは、すっごく可愛いのにゃん!」
「そんなぁ!」
ぽっ。
「ミーにゃんは、すっごく綺麗にゃん」
「んもう! 当然だわぁん!」
ぽっ。ぽっ。
「世界は、美しいミーにゃんを中心に回っているのにゃ。
ミーにゃん、ばんにゃああい!」
「きゃきゃきゃ! 嬉しい嬉しい嬉しいわん!」
「我が『造り子』ながら、あんなにも乗せられやすかったなんて……よぉし」
ぱんぱん。
「ミアンちゃん、ミアンちゃん」
「はて? 誰かが手を叩いて呼んでいるようにゃ……」
くるっ。
「にゃあんにゃ。イオラにゃんにゃ」
「ミアンちゃん。ちょっとこっちへ来てくれる?」
「にゃに?」
とことことこ。
「ふにゃ。腕を組んでのしかめっ面にゃよ」
「まぁいろいろとあってね」
「ふぅぅん。で? にゃんにゃの? イオラにゃん」
「次はワタシの番ですからね。
心の準備は出来ているから、しっかりとおだててね」
「にゃんと!」




