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転生先は婚約破棄の真っ最中!?〜悪役令嬢は本当に悪役で、王子は彼女を心から愛してるらしい〜  作者: おやまみかげ


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第四話 私は手鏡になりました!


「あ〜疲れた〜!!」


 勢いよくベッドに倒れ込むと、反動で少し身体が弾む。


「明日、大丈夫かな……」


 あのあとすぐ、シルからリーンに手紙を出してもらった。

 婚約破棄の件はまだ正式に受理されてないらしく、リーンは未だ婚約者という立場らしい。


「それにしても、好きなのに結婚しないなんて選択肢があるんだなー」


 親が反対してて駆け落ち〜とか、どっちかに不満があった〜とかならわかるけどさ。

 時代? とかにもよるんかな……。


「やめやめ! こんなのあーしには似合わん! ニアだけに!」

「あの、私の名前で遊ばれるのはちょっと……」

「え!? 誰!?」


 あたりを見渡しても誰もいない。

 それにしても豪華な部屋だなと、改めて思った。


「なんだ、あーしの聞き違いか!」

「いえ、ここにおります」

「え!? どこ!?」

「ここです、ここ」

「どこ!?」


 声はすんのに、姿が見えない。

 普通ならビビる事象かもしらんが、ここはおそらく異世界だろうし? だって聖女いるし。

 だからもはや何が喋っててもおかしくはない。


「こちらです」

「どちらです? ちゃんとおせーて」

「机の上に手鏡がございませんか?」

「手鏡?」


 ベッドから身体を起こし、なんか高そうな机に目をやる。


「あー! これか!!」


 鏡面が机に伏せられた、凝った装飾の手鏡が置いてある。

 そこそこの重さがあり、いいやつなんだろうなと思った。


「ありがとうございます!」

「いいえ! どっから喋ってんの!?」

「手鏡からお話させていただいております」

「うん、それはわかってるー」

「おぉ! やはりあなた様を呼んで正解でした!」


 呼んだ? ってことはこれがもしかして……


「あんたがニア?」

「はい! 私が元のニアでございます!」

「まじか! そんで、そんなとこで何してんの?」

「私は手鏡になりました!」


 ——また意味わかんないの増えたな。




 *


「それで、ニアはなんで手鏡になったの?」

「あなた様をお呼びするためです!」


 あーしを呼んだのと、手鏡になった理由が同じなの?

 全く意味わからん。


「んーと、じゃあなんであーしを呼んだの?」

「シルヴェスター様とリーン様の間を取り持っていただきたかったのです」

「はい? あんた、シルが好きなんでないの?」


 リーンが言うには、ニアはシルのことが好きだったんよな?

 それなのに、なんで間を取り持ってほしいの?

 せめて自分の身体に誰か入れて、それを外から楽しむ二次創作的なやつじゃないの?


「シルヴェスター様のことはお慕いしておりますよ?」

「それなのにリーンとの間取り持ってほしいの?」

「はい! 私、リーン様のこともお慕いしております!」

「どゆこと?」

「いわゆる、推しカプと言うやつですね! 私、シルリン推しなのです!」


 あー、なるほど。こいつオタクなのか。

 てことは——


「2人が拗れてんの知ってたの?」

「はい……、シルヴェスター様がリーン様をとても大切にされていることは存じておりました。そして、リーン様がシルヴェスター様をお慕いしていることも……」

「じゃあさ、なんでリーンはあんたがシルのこと好きって勘違いしてんの?」

「それは、友人とたまたま推しカプの話をしていた際に——」


 ニアがその時のことを詳しく話し始めた。




 *


「私はやはりシルリンが、王道且つ最高のカプだと思います!」


 これだけは譲れない。あの二人のことは誰よりも応援してきた。

 お優しく聡明なシルヴェスター様と、控えめながらも御自身の足で立つリーン様——。

 王太子と聖女だからという運命(さだめ)を超え、互いに想い支え合う二人こそ至高なのだ。


「いや、私はタイリン推しー」

「えぇ!? リーン様の護衛騎士、タイガ様!?」

「うん、あの二人よくない? 幼なじみで主従とか熱いんだけど!」


 いやいや。そんなのありえない。

 タイガ様は確かにリーン様を幼い頃から知っているし、過ごしてきた時間もシルヴェスター様より長いだろう。

 でも、彼は護衛! そこに邪な気持ちなどあってはならない!!


「いいえ、彼はリーン様に相応しくありません!! 私はシルヴェスター様がいいのです!!」




 *


「——という話の、最後のところでちょうどリーン様が通りがかりまして……」

「そら誤解されるわ!」

「そうなのです! だから釈明しようとしたのですが、リーン様は聖女。私のような凡人が話しかけることもできず……」


 こんな金持ってそうなのに、ここでは凡人レベルなんだ。


「そんでー? そっからどうなったん?」

「翌日、教材が行方不明になりました。その翌日はお気に入りのドレスが汚れていて……」

「それをやったのがリーンだったと」

「はい……。翌々日、ついに馬車に火を付けられました」

「かわいい顔して放火犯だからな、あの聖女」


 にしても、行動はえーな!

 どんな勢いで進めたんだよあの子はさ……。


「でもそれでもよかったのです」

「馬車に火付けられたのに!?」

「推しに構ってもらえるなんて、日陰者にはありがたいことです!」


 なんかすごいやつ相手にしたな、リーン……。


「それで、シルヴェスター様から説明してもらおうと声をかけたのです」

「シルには全部伝えたの?」

「推しカプだとは言えないので、されたことだけ掻い摘んでお話ししました。シルヴェスター様なら、リーン様がそんなことをする理由を必ず本人から聞くと思いまして……」

「そしたらなんかおかしな方向に行ったと」

「はい……。急に夜会に招待されたので、これはもしやと……」


 それでか。

 ん? でもなんであのタイミングであーしが召喚されたの?


「でもさ、なんであのタイミングだったん?」

「あの晩、術はいつでも発動できるように準備しておりました。シルヴェスター様に呼ばれ、抱き寄せられ、間違いないと思ったタイミングで術を唱えました」

「へぇ、でもなんで手鏡?」

「入れ替わっていただく方は、私とは正反対のズケズケとなんの遠慮もなしに二人にぶつかってくださるような方がよかったのです」


 あーし、なんかディスられてね。


「反対だと手鏡なの?」

「鏡は右手を挙げても、映るのは左手でしょう? ですので、身近な物で対といえば鏡かなと……」


 もっとなんかなかったんか……。

 てかいいの? あんた一生手鏡で生活するの?


「とりあえず、あなた様にはシルリンをどうにかしていただきたいのです! お願いいたします!」

「勝手に呼んでおいてさ〜」

「たぶん、役目が終わりましたら前の世界に戻れます! 私、術をそう設定しましたので! きっと戻れます!」

「たぶん、きっとねぇ……、まぁ戻れなくてもここで過ごすだけだしね」

「私も精一杯お手伝いしますので、頑張りましょうね!」

 

 いや、そのノリで二人と話せばよかったんじゃねーの……。




 鏡よ鏡ってか?



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