裏話 我が一族で当たり前の裏側
某日、車内にて。
「はい、会長。全ては処理済みです。はい、ええ·····大丈夫です。うちに損害は全くありません」
会長·····父には全て突き抜けだ。
もし古都が、我がグループを揺るがすような人物なら動けと言われていたので、古都の婚約者だった男の事を対処した旨を話すと、
『まあ、それで良しとする、今のところは』
と言われた。
古都をよく思っていないかもしれない。
そうなれば危険だと本能が働いた。
だから、付け加えた。
古都がそばにいるようになり、逸樹は会社に対しても他人に対しても、人並みに付き合えるようになったと話した。
もし彼女がいなくなれば、今までよりも心を閉ざし、ましてや誰かのせいでいなくなったなら、狂うだろうと話した。
──意図を汲み取ったようだった。
そうだ、古都が逸樹の側にずっといてくれたら、あいつは古都をもっと幸せにするため、褒めてもらうため、愛され続けるために、全てのことにおいて努力するだろう。
現にあいつは、求められる以上のシステムを開発し、売上を2倍にしている。
·····できるならもっと早くからやってほしかったが。
『ならば早く身を固めさせるんだ』
「承知しました。早急に進めます」
早急にと言っても、我々のようなステータスの人間はすぐできるわけじゃない。あらゆるスケジュールの調整、マスコミ対策、懇意にしている人物への根回し·····早くて1年ほどかかる。
·····逸樹は怒るだろうな。
「ふっ·····まぁ面白そうだ。昔の俺のようだ。客観的に見れるな」
あの男、松野章也は研修と称してドイツへ送った。
たまに取り引きをしているところだ。
今は美味い汁を吸わせてもらっている状態だ。
欲を出さず、地道に生き直す事にすれば、道は開ける。だが··········無理だろう。
どんなにいい人間が側にいて諭しても、挫折を味わい己の傲慢さを知る機会を得ても、変わる事の無い人間はいる。
目障りな動きをすれば───
命が削られずとも、それ同等の·····それ以上の苦痛を味わうこともある·····
父には念の為、古都の人柄を記した報告書を渡すことにした。
カフェの店長やチーフ、佐々木部長、他彼女の監視についていた者達からの報告だ。
それらについての感想などはなかったが、ウェディングドレスが送られたという事は気に入ったという事だろう。
その後、逸樹と古都はイリスで挙式し、父は来なかったが、ウエディングドレスを古都に贈った事を、
逸樹は自分がプレゼントすると憤慨していた。
せっかく認めてもらえたのを無駄にしないよう、日本で披露宴を行う時に、古都を思う存分着飾るようになだめた。
マスコミが大勢来るから、日本中にお前の選んだ、ウエディングドレス姿を見てもらえた方がいいだろうと言えば、なんとか納得した。
事実、2人の披露宴での姿が、ビジネス誌をはじめあらゆる雑誌に載ることとなった。あまり知られていなかった逸樹が顔を晒しただけでも、秘宝の御曹司がもう一人、などと書かれたりして騒がれるものが、古都が加わり、その男を射止めたシンデレラガールとして、一層騒がれることとなった。
逸樹はここぞとばかりに、古都は自分の女だから手を出すなという威嚇をするつもりで、 抱き寄せキスをしているところを撮らせた。
あいつもやるようになった。
古都は恥ずかしくて憤慨していたが、その怒った顔もチャーミングだと、またのろけてやがった。
思い出したら、また芹香とイチャつきたくなった。
予定変更して芹香のカフェ行こう。
俺を優しい、妻を溺愛する夫に戻してもらおう。




