↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/21

12 初めてのお留守番(逸樹side)



今日は古都の会社で会った、親しかったらしい横田果耶さんと、もう一人同僚が来る。·····もう一人というのが気になったが、この前の雰囲気からして、悪い人間が来るとは思えなかったから、あまり深く追求しても良くないし、家にいてくれる安心もあり良しとした。


でも、大丈夫と分かっていても帰りの足は早まる。いつもより焦りも出てくる。何もないはずだ。

でも、もしも·····

落ち着けと自分に言い聞かせながら、やっと着いたという気持ちで戸を開ける。

その瞬間、誰もいない静けさを空気で感じた。


「古都?」


もうとっくにみんな帰って、疲れて寝てたりするのか?

そう願う思いでリビングに入る。

見当たらず·····

部屋をノックしてみる。·····何もない。

普段は決して開けない。

でも寝てるかどうかだけ知りたい。それだけ分かれば安心できる。


寝ていてくれることを祈りながら、ノックをもう一度して、一拍置いて開けた。


いなかった──


でも彼女のものはちゃんとある。

それにはほっとした。だけど本人の姿がない。


「古都·····どこ·····」


ああ、もしかして夕飯、何か足りなくて買いに行ったのかもしれない。

そうであってほしいという願い。

近くのコンビニ、スーパーを見に行こうと部屋を出ようとした時、スマホのLIMEに着信があった。

すぐに開けてみた。


✻お疲れ様です。急にごめんなさい。横田さんの家に泊まりたいと思って

女子会を一晩中しようって盛り上がってしまいました

明日夕方までには帰るので心配しないでください 何かあれば私か横田さんから必ず連絡します

夕食冷蔵庫に入れてます

仕事中だと思うのでLIMEにしました✻



──血の気引くような思いだった。

泊まる?いなくなった?

もしかして何か·····



「考えすぎか?もしかして·····」


バレたのか·····違うことが·····騙していたのが。

前の会社の人間と話してて記憶が戻った?

いや、でもそれならもっと大事になっていても·····ココの声で直接話せていないことが、こんなにも憶測と妄想を生み出し、こんなにも不安にさせる。


ただ本当に女子会を延長するだけなのか?

電話をしようか?·····でもあんまり縛るようなことをして嫌われたくない。

苦渋の決断でLIMEで返信することにした。



✻仕事は終わったよ

横田さんの家に泊まるんだね

了解です 楽しんでください

また帰ったら聞かせて

何かあればいつでも連絡ください

ココ、愛してる✻



愛してるは入れる必要ないかもしれない。

でも入れずにはいられなかった。

だから早く帰ってきてほしい。だから君に嘘をついてしまった。


このメッセージで電話をしてきてくれるかもしれないと、淡い期待をしたが鳴ることはなかった。




彼女のいない部屋。

ただでさえ広いのに、より一層広く感じる。

それに·····冷たい。


以前ならこれが当たり前だった。むしろ静かな空間が理想で、部屋を防音に施工してもらっていたくらいだ。なのに今はこの異様なほどの静けさ、凍てつくような寒さを感じて落ち着かない。

ココと一緒にいたのは幻だったんじゃないかと·····俺は長い夢を見ていたんじゃないかと思ってしまう。


帰ってきてくれるだろうか?

いや、帰ってくる。

ただ違う空気も必要だった。女友達と話したいのは当たり前だ。

元々、社交的な人だったんだ。俺だけが独占できるはずがない。窮屈を感じるだろう。

帰ってこないかもしれないという、恐怖と不安を紛らわすために、彼女が家から出て行った理由と帰ってくるはずだという根拠を探っていた。


夜中……寝れず、長い長い暗闇だった。


以前なら·····ココとこうして一緒にいるまでは、

当たり前の闇だった。

むしろその中にいるのが心地よかったはず·····

だけど今は寂しい。

不安·····怖い·····ココが日常から姿を消してしまったような絶望に近い焦り、何も手につかない。

心が暴れそうだった。


水でも飲もうと冷蔵庫を開けてみれば、ココが作ってくれていた夕食の入ったタッパーがあることに気づいた。


·····忘れてた。


食べないと怒られるな。

ココは食生活が崩れきった、俺の体をとても心配してくれ、ちゃんと栄養面を考えて作ってくれている。

毎食しっかりというわけにはいかない。

彼女の体調もあるし、気分転換やデートもしたいから、外食することはよくあった。


ハンバーグは俺の好きなやつ。

ココの作ったハンバーグは豚肉が多め。

外で食べるのとは全く違う味のするハンバーグだ。それが俺にはすごくおいしい。ソースとかじゃなくマヨネーズだ。初めはびっくりしたが、食べてみるとうまかった。

それ以来マヨネーズで食べるのが好きになった。

時々デミグラスソースやトマトの煮込みなどを作ってくれて、それはそれでやっぱりうまいけど、マヨネーズにハマった。

今回もマヨネーズバージョンだ。

タッパーの中のハンバーグをしばらく見つめた。

その後、蓋を閉めて冷蔵庫になおして扉を閉めた。朝から食欲がわからなかったからじゃない。

あれを食べたら·····食べてなくなってしまったら、ココのいた事実が、なくなってしまうような気がしたから·····元々ここにココはいなかったという·····


ココの服も、ここに来てから揃えたもの全て残されているけれど·····




ようやく日が昇ってきた。

でも夕方まで、まだまだだ。

まるで一年経つのを待たなければならないような思いだった。

春から夏が来てやっと秋·····まだ冬で·····いや、夏が来るのか·····どんどんネガティブな思考になる。

どうしたら·····


横田果耶の家を調べて、迎えに行こうか?

いや、そんなことすれば、気持ち悪がられるかもしれない。

知らないはずの住所を、簡単に分かると知られれば、離れていってしまうかもしれない。

異常に執着されると感じて·····



「ふぅ·····窓·····カーテンを開けるか。空気も入れ替えよう。ココがいつもしてくれてたしな」


日の光、新鮮な空気は心も清めてくれて、心の中の澱んだものを洗い流してくれると、ココが言ってた。

だから毎日そうしてくれてた。



「ココができないから、今日は俺がしないとな」


カーテンのところへ行き、勢いよく開ける。


眩しい·····


いつもよりも眩しく感じた。

そしてゆっくりと窓を開ける。

また冷たさのある空気がゆっくり部屋に入ってくる。他の部屋の窓やベランダの戸も開けた。

部屋中に澄んだ空気が入ってくる。


「ココ、これでいい?掃除もしとこう」


居るはずのないココに話しかけた。そうしないとココが本当にいなくなってしまいそうだから·····



スティック型掃除機、1人の時は見かねた竜が時々掃除機をかけたり、掃除のプロを呼んでやってもらったりして、自分で掃除自体しなかった。

トイレと風呂はなぜかやってたけど·····

俺の家事力のなさに驚いたココに、使い方を指導された。

でもその次の日から、ココの健康のために毎日しようと手にしたら、ココが自分ができる時は任せてほしいと言われた。そうでないと居候のように住まわせてもらって、引け目を感じるらしい。

愛する女性と住めることが俺の幸せで、養えることが生きがいだと言ったら、驚いて頬を染めて微笑みを見せてくれた。

『でも私もいっくんのため、2人のためにできることはしたい』と言われ、家事のほとんどを彼女がしてくれていた。


「褒めてくれるかな·····」


掃除機のスイッチを入れる。大してゴミも落ちてない。

ココが毎日してくれてるから。

リビング、キッチン、トイレ、洗面所、バスルーム、無心でかける。

俺の部屋は·····やる気が起きない。

俺の仕事が終わって、時々ココが床をさっと掃除機だけかけに入ってくれる。テーブル上の書類は動かさない方がいいのをわかってくれてるから。

·····ココの部屋は入れない·····許可なくしては。


「あとは·····玄関入ってすぐの廊下か」


廊下をかけ始めてすぐ、掃除機が止まってしまった。


「あれ?何だ?」


電源ボタンを押しても動かない。

何か変なものを吸ってしまったのか?

本体とパイプを外して色々いじってみるが、何も詰まってないし変わらない。

またはめ直す。もう一度電源を入れてみるもやっぱりダメだ。


「壊れたのか?」


掃除機が壊れた·····俺たちも·····そうなのか?

もうどこまでも闇だった。



「·····何してるの?」



俺の寂しさと不安が生み出した幻聴だと思った。



「いっくん?」


違う!

振り返ってココを見た。ココは不思議そうに床に座って掃除機をいじっている俺を見下ろしてる。


「ココ!」


掃除機を放り出し、立ち上がってココを抱きしめた。

もう·····会えないのかと思った。声を聞けないかと思った。


「わあっ·····いっくん?いっくん·····」


抱きしめた。

ココは柔らかくて甘い香りがした。

この感触、香りだ。

たった一日この感じがなかっただけで、もうずっと長い間無くしてしまったように思えた。

確かめるように彼女を抱きしめながら背を撫で、髪の香りを嗅ぐ。するとココの手が、ゆっくり俺の背中を包んでくれた。



「ココ·····」


手を回してくれたことが嬉しくて、安心していっそう抱きしめた。


「·····ただいま」

「おかえり·····大丈夫だった?」

「えっ?」

「いや·····色々·····横田さんって人のこと思い出してないから、親しい感覚ないだろうから」

「あ·····うん、大丈夫だったよ。ここで話した時からすごく気が合うと思ったから·····なんか女子会お泊まりしてみたくなったから。ごめん、心配かけたよね」

「いや、心配はしたけど·····いいんだ。ココが無事なら·····帰って来てくれたなら·····」

「いっくん·····ありがとう」


ああ、よかった。

いつものココだ。帰ってきてくれた。俺のところに·····ちゃんと·····


ゆっくりココの抱擁をといて顔合わせた。ココの表情も優しい顔だ。

まっすぐに俺を見る目。


「·····それで何があったの?」

「えっ?」

「だって私がただいまって言っても、気づかずに一生懸命、掃除機触ってるし·····壊れた?」

「あっ何度も声掛けてくれて?ごめんごめん。そうなんだ。さっきまで動いてたのに急に動かなくなって」「本当に?どうしたんだろう」



そう言って俺から離れて、掃除機を触り始めた。急に俺の手や体にふわっと空間ができて、軽くなったのが寂しく感じた。

分解されていたパーツを組み立て、電源を入れる。やっぱり動かない。でも俺にはそんなことどうでもよかった。ココが帰ってきてくれた。俺のところに帰ってきてくれた·····

俺を見る目に蔑んだような色は見られない。

·····今は大丈夫だ。まだその安堵感が全身に行き渡ってる。

もう一度抱きしめたくて近づいたら、ココはすっと背を向けたまま立ち上がった。

気配を感じて避けられたのかと一瞬不安になる。

でも次の言葉で雰囲気はガラリと変わる。


「充電切れじゃない?」


そう呟いて俺に振り返った。


「えっ、充電?ああ·····そう言えばずっと掃除機かけてたけど·····でもそんな早く無くなるのか?」

「どれぐらいの間使った?この掃除機は大体満タンでなら30分持つかどうかよ」

「30分·····あー、それ以上は、使ってたと、思う」


·····間違いなく30分以上使ってた。考え事しながら無心でかけてたから。

ココのこと考えすぎて、同じ所をずっとやってた。


「ふふふ。大丈夫?あなたの方が、機器関係すごく強いはずなのに」


ココはそう言いながら充電器に置いて、俺に笑いかけてくれた。

いつもの柔らかな笑顔だ。よかった·····本当に良かった。

でも·····もう潮時なんだろう。いつ記憶が戻って真実が分かった時、彼女が俺をどう恨んで、どういう態度になるか、怯えながら過ごすのも限界だ。

今話すべきじゃないか。

でも出て行ってしまったら·····

もう二度と会えなくなってしまったら·····いつの間にかこんなにも欲深くなっていた。


「いっくん?どうしたの?もしかして私の言ったことショックだった?バカにしたつもりじゃないのよ」

「え、あ、いや、そんなんじゃないよ。バカにされたとも思ってない。でも確かにそんな簡単なこと気付けないほどだったんだな·····」

「気付けないほど?」

「うん、ココがいなくて寂しすぎたんだ」


重すぎるこの気持ちを、隠せず口に出してしまった。引くだろうか?


「え、そんなに·····ごめんなさい」

「いや、謝らないでほしい。全然ココは悪くない。女子同士で話したいと思うのも当たり前だと分かってる。君は本来社交的な人だったはずだから、ただLIMEだけだったのがかなり不安だったんだ」

「ごめんなさい·····本当のこと、言うわ」

「本当のこと?」

「あの文は私が打ったんじゃないの」

「え?」

「あれは果耶さんがしてくれて、私、その·····お酒飲んでいつの間にか眠ってしまったみたいで。果耶さんの家に着いてすぐLIMEするつもりだったんだけど、充電切れてしまってて。そのままお酒飲んでたら眠くなって、打つ前に眠ってしまったみたいで·····それで果耶さんが気を利かせて打ってくれたの。今朝謝ってくれたんだけど、してくれてて良かったと思ったから·····もし何もしなかったらもっと心配させてしまってたもの。逆ならすごく心配だった。それでも心配させてしまったのよね·····ごめんなさい」


「そうだったのか·····いや·····いいんだ、いいんだ。俺が過敏になりすぎて、不安に陥っただけだから。それにこうしてちゃんと無事帰ってきてくれた。それで十分だ。ありがとう」


ココをもう一度抱きしめた。

もうずっとこうしていたい。よかった。

ココもまた俺の背に手を回してくれた。

それを許可を得たと捉え、ココの唇にキスをした·····軽く。

顔を離してココの表情を見てみると、ほんのり頬を赤らめていて、恥ずかしそうだった。

ならもう少し·····今度は深く口付けた·····離したくないという思いで。愛しすぎて。


少しの間、この理性が飛んでしまうような、飛ばしたくなるほどの触れ合いを味わった。


そして·····覚悟する。これ以上は騙せない。騙したくない。

知ってしまったら一層傷つける。憎まれる、恨まれる。

でも彼女がくれる「好き」というベースが、俺と婚約しているという嘘からだ。その嘘の地盤に「好き」が成り立っても、地盤が崩れれば·····なかったらその上のものは崩れるか、もしくは存在し得ない。


彼女を守ってくれる人が、ちゃんといると分かっているから·····


「ココ·····俺はココに、あや·····」

覚悟して、ココの肩に両手を置き話し始める。

が·····


「あっ!そういえば言い忘れてたの。あの·····昨日女子会って言ってたんだけど、果耶さんと一緒に来たのは女子じゃなかったの」

「えっ?あ·····女子じゃない?じゃ·····誰?」


話そうと思ってた内容を遮られ、次に女子じゃなかったと告白され頭が混乱したが、ゆっくり理解していった。


「佐々木部長だったの。ごめんね、本当に女子が来ると思ってて。そしたら部長で·····わざわざ言う必要ないのかもと思ったんだけど、またいっくん余計に心配したりしてもよくないかなと思って·····いらなかった?」


心配そうに俺の顔を覗き込む。


「いや·····大丈夫·····佐々木部長。何か·····何の話を?」


俺のことは分かっていなかったようだったけど、やっぱり警戒せずにはいられない人物だ。


「会社での私の様子とか·····うーんと、何だったかな。特に、あ·····でも、あなたのこと·····いっくんが前見た写真の人と、違うんじゃないかって言ってたかな·····」

「え·····」



血の気が引いた。

写真と違う。

やっぱり見たことがあった?


自分の口からじゃなく、彼女に真実がバレるのが恐ろしかった。

同じ騙しているという根底は同じくせに·····


「部長もはっきり顔を覚えていた訳じゃないから、結局実物と写真とじゃ、違う感じがするのはよくあるってなったんだけど、私の頭痛が少しきつくなってしまって·····それ以上、記憶のない時の話はやめようってことになったから。いっくん?」

「·····」



·····やっぱりあの人は何か思ってるのかもしれない。


わかってるか·····もうすぐ気づくか·····


考え込んでいて、ココの声が聞こえていなかった。


「ねぇ!いっくん!」

「うわっ!あ、ココ·····ごめん!何?」

「·····大丈夫?さっきから呼んでるのに、返事ないから·····何かあった?仕事で疲れた?」


俺の様子がおかしいのを、仕事の疲れと受け取ってくれてるようだ。

でも正直に話すなら今だろう。

誰かの口から真実を告げられるより、自分の口で言いたいと思った。


「ココ·····あのさ·····」

「何?う·····ん、ごめん·····いっくん、また頭痛·····」

「えっ!大丈夫か!?横になろう!こっちに·····疲れたのはココの方だろう。今までと違ったことしてたから·····さぁ、ゆっくり横になって休むんだ」


ココをソファへ連れ、横たわらせた。

今は話すべき時じゃないようだ。ココの体は疲れてるんだろう。


「ありがとう、ごめんなさい。話の途中で·····帰ってきてすぐこんなで·····」

「何言ってるんだ、そんなことどうでもいいよ。帰ってきてくれただけで十分だとも言っただろう?何も謝ることしてないから休んで。紅茶でも入れようか」


「うん·····ありがとう。いっくんのミルクティー飲みたい」

「オーケー、ちょっと待ってて」


キッチンへ行くのに立ち上がろうとした時、ココが俺の袖を引っ張った。


「どうした?」

「もう少し、やっぱりここにいてほしい」

「·····うん……そうする。俺もココのそばにいたい」



また床に座り、ココの手を握りしめ、ココを横たわらせようとしたら、そのままココに抱きしめられた。


「ココ·····」

「抱きしめて·····ずっと、いて·····」


もちろん抱きしめた。ココの髪の香りを吸い込みながら、柔らかい体を抱きしめ、摩った。

そのままでいられず、口づけをした。

ココも受け入れ·····いや、今日はココの方が積極的だった。深い口づけを求めて、一段と俺を抱きしめる力を強めた。


好きだ。

どうしようもなく好きだ。

口づけ以上、彼女を求めたくなる。

求めようか·····止められない。

どんどん俺の力が強まってしまう。


とっさに口づけを終わらせて、抱きしめる力を強め、首筋に顔を埋める。


「いっくん·····いいよ、もう我慢しなくて·····大丈夫」


その言葉にびっくりして顔を上げ、体を離し、ココの顔を見た。

ココは迷いのない、ただまっすぐに俺を見て、頷いている。

いい·····のか、許されたのか。俺は――


「私の心はいっくんを好きになったから。ちゃんとまた·····」


彼女の方に手を伸ばそうとしたが、その【また】という言葉が俺を止めた。

やっぱりベースは婚約者だったから。


「お願い·····やめないで?ちゃんと私はあなたに恋をした。何もない気持ちから始まって、ちゃんとあなたを知っていって、好きになったから。だから·····私を、ちゃんと、愛してくれてるなら·····」


彼女の目は不安に揺れている感じだった。

でも同時に、ちゃんと俺を求めてくれている事も伝わって来た。

何かあったのか?

本当はここで彼女に、不安があるのかを確かめてあげるべきなのだろうか?


そう考えていると、不意に彼女がキスをしてくれて·····

告げてくれた後の口づけで、彼女への愛に引き戻された。

もう止めることはできなかった。


「愛してる。これからも····· これまでも·····何があっても」

「うん、私もよ·····そばにいて、離さないで」



大きなソファは背もたれを倒すとベッドになった。 初めての使い方になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。