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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第23章 ラテニア侵攻 後編

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第831話 死滅式・壱払


 ピクリとも動かないシャウラを見た影治に、かつての惨劇の記憶が蘇る。

 見た目的にはあの時受けていたような残酷さはなかったものの、影治は同じ狼人族であるシャウラに、ドナの面影を浮かべる事が何度かあった。

 そんな彼女が地に倒れ伏す光景は、影治にとって激情を引き起こすのに十分だった。


「はぁ、厄介な奴はひとり仕留めたぜ。使徒達は大分苦戦してるようだけど、相手が天使って事忘れてんじゃないだろうなあ。天使相手には俺の暗黒魔術が一番効くってのに」


 目で見て分かるような外傷もなくシャウラの命を奪ったのは、四将軍のひとりサイラスであった。

 暗黒将軍の二つ名を持つサイラスは、クラスⅩ暗黒魔術の【暗黒の眠り】を用いてシャウラを即死させた。


 暗黒の眠りの眠りとは、永遠の眠りを意味する。

 影治は四将軍のひとりに暗黒将軍と呼ばれるものがいる事は知っていたが、詳しい情報は得られなかった。

 それは帝国内でもろくに情報が広まっていなかったからで、帝城の奥深くで皇帝を守護しているという情報程度しか得られていない。


 ただその名前からして暗黒魔術を使う可能性と、サイラスがこの戦場にいる可能性は十分考えられる。

 だが直前に光の使徒の強力な魔法を見た影治は、暗黒魔術にも即死魔術がある事や、他の即死系の呪具などが使われる事に考えが回らず、即死防御系の魔術を掛け損ねてしまった。

 他の支援魔術を優先していたので、後回しにしていた即死防御などの魔術を掛ける余裕がなかったことも原因だろう。


 影治の心の底から湧き上がる激情と、冷静に現況を考える思考との間にズレが生じ始める。

 この間にも周囲から攻撃を受けているのだが、影治はそれらをほぼ無意識で防ぎ続けていた。

 そこへ更にシャウラを討って手の空いたサイラスが、影治に向けて攻撃魔術を放とうと魔術の発動態勢に入る。


「天使なら、種族特性的にこれは防げねえだろ。【虚砲(きょほう)】」


 ここでサイラスが使用したのは、なんと暗黒属性の災厄級魔術である【虚砲】であった。


 何だかんだで、数が少ないとされるクラスⅩ魔術の使い手であっても、影治達自身の実力が高い事もあって、自然とそういった相手と接触する機会もあった。

 しかし災厄級魔術の使い手ともなると、身の回りにいるセルマやウルザミィ以外に出会っていない。

 四魔君主のレイミーやエリーであっても、クラスⅩまでしか使えなかった。


「……おいおい、マジかよ」


 だからこそ、サイラスは自身の魔術に絶大な自信があった。

 しかも相手は暗黒属性を弱点として抱える種族だ。

 そもそも弱点など関係なく、この魔術を食らえば大抵の奴が死ぬ。

 これはそういった魔術である筈なのだ。


「…………」


 しかし影治は何もなかったかのように佇んでいる。

 元々体を焼き尽くすだの切り刻むだのといった魔術ではないので、見た目に効果が表れる訳ではないのだが、平然と佇む様子からはダメージが全く見られない。


 サイラスには知る由もなかったが、彼が放った【虚砲】は発動最低限のレベルの魔力しか使っておらず、威力も効果範囲も邪竜や試しにセルマから使ってもらったものと比較しても、最低レベルの威力しかなかった。

 訓練の結果、天使ながら暗黒魔術を修得している今の影治は、咄嗟に使用した神聖魔術でほぼ無力化出来た事もあり、殆どダメージを食らわずに済んだ。


「――神威」


 武器を構え、相手に近づき、斬りつける。

 そうした段階を全てすっとばすように、影治の体が一瞬にして消えたかと思うと、次の瞬間には剣を振り終えた後だった。

 その場にいた誰もが目に追えぬ速さで振り下ろされた剣は、たった一撃でサイラスの命を奪う。


 この世界では後衛職であろうと、魔物相手に戦い続ければそう簡単には死なない体になっていく。

 実際サイラスは精鋭と呼ばれる前衛の攻撃にだって、何度かは耐えられる程度の頑健さはあった。

 しかし四宮流古武術の真骨頂。

 神伝奥義の神威の前には、一切抵抗する事が出来ず命を散らしていった。


「!? なんだアレはッ!」


「そんな……ありえない! 神敵である水色の悪魔が、あのように神聖な力を放っていいはずがない!!」


 光の使徒達が影治を見て騒ぎ始める。

 それはサイラスの【虚砲】を防ぐために、神聖魔術を使って見せたから……という訳ではない。

 白い剣閃を残しながらサイラスを切り伏せた、影治に起こった変化を目の当たりにした結果の騒乱である。


 先ほどの高速で移動して一瞬で切りつけた動き。

 それは四宮流の瞬歩だとか縮地だとかいった技術を使ったものではなかった。

 一時的に闘装術を発動させたとかいうものでもない。

 純粋に強化(・・)された身体能力を、無意識に使いこなした結果だった。


 その闘気術でも魔術でもない強化の源は、天使や悪魔の上位種族に見られる「解放」によるものだった。

 それは単純に能力が強化されるだけでなく、影治の見た目にもよく表れている。


 頭上に浮かぶ光輝く天輪(てんりん)に、背から生える4対8翼の翼。

 翼の数を除けば天族と共通の見た目をしているが、そもそも天族というのがダンジョンで極稀に発見される程度なので、ほとんど存在を知られていない。


 また解放についてもそれが可能な者が皆無なので、今の影治の見た目はこの世界の人からすると余り馴染みがない姿だ。

 影治のこの姿を見てピンときたのは、クゥに跨って空を飛ぶエリーとヨイチくらいだろう。


「もういい。こいつら相手に加減などするべきではなかった。クソ女神の奴は降臨し次第全て八つ裂きにしてやる」


 その身から放たれるは、強い神聖属性と光属性の力。

 だがその口から放たれた言葉は、神聖さとは裏腹の殺意に満ちたものだった。


 光の使徒達はその殺意に……というよりも、自分達よりよっぽど聖光神マルティネに近い属性を持つ今の影治に、自分達の信仰やアイデンティティが揺らぎつつある。

 彼女達だけでなく他の帝国の兵士達も、余りに神々しい影治の姿につい祈りを捧げたくなる気持ちに駆られた。

 しかしそんな彼らに影治は、慈悲ではなく無慈悲で持って答える。


「シャウラと同じ死を与えてやる。死滅式(しめつしき)壱払(いちのはらい)――」


 この場で咄嗟に編み出した死滅式・壱払。

 それは壱払を基に、死霊属性の魔力をふんだんに組み込んだ上に、攻撃対象を個人ではなく複数人に拡張した、影治オリジナルの四宮流の新たな真伝奥義。


「――肆薙、伍払、陸突………………」


 レイスブラッドを手にした影治が、払い、突き、薙ぎとそれぞれ別の相手に1回ずつ攻撃を加えていく。

 これは予め心眼で捉えていた範囲内にいる敵全員が対象であり、たった一撃ずつではあったが、後衛職であればそれだけで命を奪われるような、殺意の籠った攻撃が次々加えられる。


 それは剣撃を飛ばすといったものではなく、超高速で周辺を駆けずり回り、ひとりずつ接近して攻撃するというものだった。

 だがその移動速度は常軌を逸しており、まるで短距離の転移を何度も繰り返しているかのような速さで、帝国兵に近寄っては致命の一撃を繰り出す。


 タフさが売りの前衛の戦士の中には、この一撃に耐える者もいた。

 しかし発動の際に死霊属性の魔力を組み込んでいるので、ただダメージを与えるだけではなく、尽きや払いの攻撃1つ1つが即死効果を持つ。

 つい先日に影治の死霊魔術が破滅級にまで成長した事もあってか、即死効果の発動率もかなり高く、帝国中から集められた精鋭達ですら次々と命を刈られていった。


 これによって、心眼の範囲内にいた83名の敵の内、実に80名もの命を刈り取られた。

 生き残ったのはアメリア、カタリナの光の使徒2名と、ルドヴィークのみ。

 光の使徒の2人は、装備していた金属鎧によって純粋なダメージによる死を免れ、即死効果についても抵抗に成功していた。


 ルドヴィークに関してはかなり重傷を負っていて、もうまともに動けそうにない。

 元々ガンテツが戦っていたようで、死滅式・壱払を使用するより前にそれなりにダメージを受けていたようだ。


「しぶといな。さっさと死ね」


 かろうじて生き延びた3人だったが、もうこうなってはどうしようもない。

 光の使徒の2人は影治が。

 そしてルドヴィークはそれまで相手していたガンテツがトドメを刺して、この周辺の敵は全滅した。


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