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ドラゴンアヴェンジャー  作者: PIAS
第23章 ラテニア侵攻 後編

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第829話 不死者召喚アゲイン


◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「見ての通りだ。俺がこっちに来る時に既存のアンデッド軍団を連れてこなかったのは、こうなる事を予想していたからだ」


 光の使徒による魔法によって、次々とアンデッドが倒されていく。

 その光景をクゥに乗って上空から見ていた影治が、現地で即席のアンデッドを生産した理由を語る。


 ニューホープに抱えているアンデッドの中には、脅威度Ⅹのアンデッドも含まれているので、もしこの場で戦いに参加していれば、更に戦果は稼げただろう。

 だがそれでも神聖属性や光属性の魔法は、そんな彼らにとっても致命的だ。


「……今まで帝国はうちら(対ハベイシア同盟)との戦いに、光の使徒を出す事はなかった。まさかこれほどの力を持っているとはね。術者も3人のようだし、まるで影治達が敵に回ったかのようだわ」


 テイムしているドラゴンのクゥに乗りながら、エリーが地上の様子を食い入るように眺める。

 戦場の上空を飛ぶクゥは、影治の【光学迷彩】によって騎乗者ごと姿が見えなくなっていた。

 地上からの距離も200メートル以上は離れているため、誰も空を飛ぶドラゴンに気づかない。


「あれだけでも十分厄介だが、奴らはあそこから更にマルティネの一部を降臨させやがる。頭から真っ二つに両断して完全に殺したと思った奴が、何事もなかったかのように復活した挙句、それまで以上の魔法を使ってきやがるからな」


「……よくそんな相手に勝てたわね。一部とはいえ、仮にも神って呼ばれてる相手でしょ?」


「まあ……何とか倒せはしたが、それでも力不足を感じずにはいられなかった。だからそっからは一旦帝国から離れて、鍛える事にしたんだよ」


 2人が話している間にも、どんどんアンデッドが撃ち減らされていく。

 魔力とはまた違う、神力を主とした光の使徒が放つ魔法は、エリーの魔力感知能力では上手く感知することができない。


 影治が以前使っていた不完全版の滅神剣は、不足している神力を補うために大量の魔力を代用していたので、魔術師以外の前衛にもやばさが伝わる魔法だった。

 それに比べ、光の使徒は神力を贅沢に使っているので、魔力の消費は少ない。

 エリーからすると、なんでその程度の魔力消費でこれだけの威力が出せるのか、全く理解出来ない現象として映る。


「正直もっと力を付けてから再戦するつもりだったんだが、こうなっちまったら仕方ねえ。あいつら(光の使徒)は俺が仕留めるから、お前や他の精鋭部隊には使徒を取り囲んでる護衛っぽい奴らの処理を頼む」


「前回戦った使徒はひとりだけだったんでしょ? あの数相手にやれるの?」


「やれるやれないって話じゃあねえ、やるんだよ! つっても、破滅願望を持ってる訳でもねえから、やばくなったらずらかるけどな」


「そうね、私も無理は止めとくわ」


 話をしているあいだに、地上ではアンデッドが一掃されていた。

 まだ極僅かに残っているアンデッドもいるが、このままではすぐに全滅する事だろう。


「敵の残りは4万前後ってところか。一か所に固まってるし、これならやりやすい。エリー、まずは俺等が仕掛けるから、後は上空から援護を頼むぜ」


「分かったわ」


「じゃあウルザ、セルマ。ぶちかましていくぞ!」


「御主人様の望むがままに」


「ハベイシアの連中には私も思う所ありますから、容赦致しません」


 クゥに乗っていたのは影治とエリーだけでなく、他にウルザミィとセルマも同乗していた。

 その目的は勿論、3人による凶悪な魔術を帝国軍にぶちまける為である。


 こうしてアンデッドを一掃出来たと喜ぶ帝国兵たちに水を差すように、凶悪な魔術が4回に分けて放たれた。

 騎兵部隊相手にも使用した、【常闇】【大津波】【星堕とし】のセットを4回分だ。

 突然の大規模で強力な魔術に、地上は阿鼻叫喚に包まれる。


「行くぞ」


 地上の混乱に乗じ、この混乱を生み出した元凶の3人が地上に降り立つ。

 降り立ったのは、光の使徒が集まっていた地点。

 この辺りはセルマの【常闇】の効果範囲内だったが、地上に降り立った影治が見たところ、光の使徒やその周りの集団に倒れている者は少ない。


「まずは数を減らす! 【炎の嵐】」


「分かりました。【闇の大柱】」


「では妾は水刃でも放つとしよう」


 今回は前回と違って、地上に降りてからの戦闘も予定されていた。

 そこで魔力に余裕がなくなるといけないので、2人には影治特製の融合魔石を触媒として、最初の災厄級魔術を発動してもらっている。

 そのおかげで、2人はあれだけの魔術を放ったばかりだというのに、まだまだ魔力には余裕があった。


「――ッ、奴だッ! 水色の悪魔だッ!!」


「ぐっ……防御魔術を張れ! ただちに負傷者に治癒魔術を!!」


 強力な災厄級魔術を受けた直後の、不意の襲撃。

 だが精鋭が集められただけあって、各人の対応は迅速で急速に態勢を立て直していく。


「【上位不死者生成】! ……チッ、1体も成功しねえ。あの地表に描かれた光の模様のせいか」


 これまで上空でアンデッド軍団と帝国軍の戦いを観察していた影治だったが、途中でアンデッド生成の魔術は使っていなかった。

 地上まで距離が離れていたのもあるし、迂闊に手出しして空に潜んでいる事が発覚するのを恐れたからだ。


 だからこそこの場面で初めて使用したのだが、マジックエコーの力も借りて9つも同時に発動させたのに、1体もアンデッドは生成されなかった。

 その様子を見て、影治が何をしようとしていたのかを察し、巨漢の戦士が動揺を誘おうと態々手の内を明かす。


「無駄だ! アンデッドを生み出そうとしたのだろうが、このセラフィック・グレイブの効果範囲内では、いかなる方法でも死者を冒涜する事は出来ん!」


「そうかい。【不死者召喚】」


 巨漢の戦士――ルドヴィークの言葉に逆らうように、影治が魔術を発動させる。

 すると影治の近くにアンデッドが9体出現した。

 それを見てルドヴィークは驚愕に目を見開く。


「な、馬鹿な! この状況でアンデッドの生成は不可能の筈! それにそれは何だっ。アンデッドなのか!?」


 エリーであったら初見の魔術であろうと聞き取れたであろうが、他の者からすれば影治が死霊魔術でアンデッドを生成したようにしか見えない。

 実際には死体が起き上がったのではなく、突然目の前に現れたのだから不自然な点はあるのだが、そもそもルドヴィーク達は実際に死霊魔術が使われる場面を見た事がなかったので、その辺の判別はつかなかった。


 また魔術名から今のが死者の生成ではなく、死者の召喚だった事にも当然気づいていない。 

 しかも召喚されたのは、いつか帝国と闘う時の為にこっそり準備しておいた、光属性と神聖属性のアンデッド達だった。


 それが次々と呼び出され、慌てた帝国側も術者の影治やアンデッドを狙って攻撃してくるが、次々に数を増やしていくアンデッドに手が回らなくなってくる。


 これら光属性と神聖属性のアンデッドは、魔石反魂術によって生み出された天然由来のアンデッドの魔石を使用して生み出されている。

 この魔法を開発した当初は、アンデッドの出現するダンジョンを知らなかったので、当時まだアンデッドで溢れていたシャーゲンの街で自然に生まれたアンデッドの魔石を使用していた。


 だがその後ダンジョン内に出現するアンデッドの魔石を試した所、魔石反魂術では復活出来ない事が判明する。

 そこで影治は各地の墓場や戦場跡などに出現する、自然発生したアンデッドの魔石を集めさせた。


 それらの魔石を用いても、相反する光属性や神聖属性を持つアンデッドの生成は失敗率も高めで、数はまだそんなに用意出来ていない。

 今回呼び出した数十体は、そうして生成した中でも一定以上の強さを持ったアンデッド達だった。


「な、何なんだ! 私の光魔術がちっとも効かないぞ!?」


 四将軍のひとり、アスドルバルが渾身の【光の柱】を放つも、影治が召喚したアンデッドに全くダメージは見られない。

 丁度運よく、範囲内にいたのが光属性のアンデッドだけだったのが、幸いした。


 神聖属性のアンデッドであれば、もう少しまともにダメージは入っていたであろうし、光魔術ではなくもう1つの別の二つ名の由来である、血まみれのメイスを振るえば普通に戦う事は出来る。

 だが初めて見る光属性や神聖属性のアンデッドを前に、アスドルバルは冷静ではいられなかった。


「エイジ様、お待たせしました!」


「今回はあたしも一緒に戦うんだからっ!」


 不可思議なアンデッドに翻弄されている間に、幾つか小集団に分かれて戦場に向かっていた一団のひとつ、ドラゴンアヴェンジャーの面々が影治達と合流を果たす。


「お前達、光の使徒は俺が引き受けるから絶対に手を出すなよ!」


 仲間と合流した影治が、張り裂けんばかりの大声で注意を促す。

 そして戦いは最終局面へと向かって動き始めた。


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